てぶくろワンコ

私の母親は5年間で、黒のスリムな手袋を5組無くしている。
一年に一度は無くしているのだと思う。 毎度、「てぶくろなくした〜っ」と情けない表情を見るたびに、「私の親だなあ」とつくづく思う。

その変な周期を、卒検の技能試験を目前に思い出した。  私も今日手袋を無くすんだろうかなと思ったけど、もう手袋は付けていないし、私がよく無くすものはスタイラスペンである。


あ!!

でも、1度だけ、片方の手袋を無くしたことがある。

小学一年生、さっむい冬の、帰り道。

忘れもしない肌寒さ。  当時真っ赤っかな私の頬を、マイナスにまで下回る冬の体温がビンタして青ざめさせた。

さらに、仲の良い友人二人に両手の手袋を奪われて、私の脳みそはブルーな気持ちでいっぱいだった。

徒歩11分でたどり着く私の家を、その日だけは30分ぐらいかかったと思う。

とぼとぼサミシク帰り道を歩いている時、目の前に片方の手袋が落ちていた。 


こ、これは!!!

あ🇹🇭のオキニの!!!!

鼻水と涙がぶっしゃりと出た。それぐらいの感動だった。

数分して、もう片方の手袋の行方が分からないことに不安を感じてまた泣き始めた。


小学一年生の私は当然だが運転免許を持っていない。

なら歩いて探すしかない!!


でもどこを……???



絶望に入り浸ったまま家へ到着した。



そうしたらいつものようにおばあちゃんは「おかえり」と言ってくれて、 私の分のスリッパを、靴を脱いだ先に置いてくれた。

そしたらおばあちゃんがまた口を開いた。
「そいえば、これ落としたべ〜」と言って、もう片方の、あの、手袋を私の目の前に見せびらかしてきた。


あ!!!!!!!!!!!

こ、こここ!!!!!!!!!!

このやろ!!!!!!!😭


涙はあんまり出なかったけど、 気持ちがハッピーでいっぱいになった。


「(近所のおばさまの名前)のワンコがね〜お家に届けてくれたんよ!!」


当時、小学一年生の私はワンコが大嫌いだった。
落雷したかのように吠えるし、それなりに早いし。

でも、このエピソードをきっかけにワンコを大好きになったのだ。

この日の晩に、両親に頭を下げて犬を飼いたいとせがんだが、母親が犬アレルギーだったので無理だった。



近所のおばさまのワンコ!!

おまえには、文章を読む力は多分無いだろう。

私はおまえの姿をまったく見たことがない。

いや、もしかしたら忘れたのかもしれない。


秋田犬?柴犬?それとも、プードルか?


今何歳であるか?  健康に生きているか?


なんにも分からない。


でも、おまえがド健康で、長生きしているのだと信じてるぞ!!!!!!!!



ありがとうな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!


!!


!!!

!!!!!!!!!!!!!



卒検が終わったので、とっとこ文章を綴った。
路上から車校の中に戻った時、鼻水が出た。
そしてトイレの個室の鍵をかけ忘れて、見知らぬ人に醜態を晒してしまった。


イエイ!

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