「『愛と美について』論」安藤宏(2008)


「K」と「私」

「K」と「私」→「罪の思い出だけに生きている」「おちぶれたブルジョア」
没落の予感が「血」への郷愁を増幅させていく。

「K」の人物像

モデルは存在せず。姉たちや従姉が重なった、いわば彼岸に旅立つ肉親たちの統合的な表象。

「秋風記」のテーマとは

”事件”は何も起こらず、二人は日常へと回帰する。だが、あえて言えば事件が起こらないという”事実”のみを示すことにこそ、改良の意図が秘められていたのではないか。かつての「自己」を肉親の思い出と共に”埋葬”し、過去との決別を描いてみせる。それによってかつての”滅び”のカタルシスへの回路を打ち切って見せるということ。

出典論文

  1. 安藤宏「太宰治『愛と美について』論」/出版者:東京大学文学部国文学研究室/雑誌名:東京大学国文学論集/東京大学文学部国文学研究室編(3)/2008.5

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