見出し画像

[EDH・Lv7〜8]《運命の大嵐、ドラゴンホーク》でより高く飛ぶ為のデッキ紹介


1.序幕(という名の掌編小説)

 翼を持つ者には、二つの掟が課されている。一つは、「嵐の時には飛ぶな」。二つ目は、「空の戦いでは背後を取られるな」だ。どちらも理由は簡単だ。それを破った代償は、翼を折られ地に墜ちる事で支払うほど危険だからだ。しかし、翼を持つ者は時として、そのような空を飛ばなければならない。

 空が裂けた。正確には上空に立ち込める暗雲から、俺に向かって稲妻が迸った。咄嗟に翼をはためかせて、間一髪のところで避ける。二発目も同様に、三発目は横一回転を繰り広げてやり過ごす。

 これではただの的だ。俺はそう考え、意を決して翼の下に広がる森へ急降下する。生い茂る葉の切れ目を狙って、ほぼ垂直に。そして、地面に激突する前に上半身を引き上げ、力の限り羽ばたく。

 なんとか木々の枝の下に潜り込む事ができた。木の幹に翼や体を打ちつけてしまうおそれがあるが、これで大樹の列が奴の稲妻の身代わりになってくれる。クチバシから一息つくと、背後から轟音が聞こえた。不都合な事実から目を背けたかったが、この先の事を考えるとそれはできなかった。

 視線を向けると、ある一本の幹に奴の姿があった。突進で枝をへし折りながら強引に急降下し、鋭い爪を幹の表面に突き立てて強引に制動をかけたようだ。やはり、紫色の稲妻を纏ったあの猛禽は、なにもかも掟破りだ。

 奴の甲高い雄叫びを聞きながら、首の向きを戻す。奴は幹から飛び立って、またもや俺を追いかけ始めているだろう。迫り来る巨木を何度も躱しながら、できる限りの力を振り絞って羽ばたく。

 絶望そのものが、風切羽の代わりに生えた翼膜で宙を切り裂く音が徐々に迫ってきているが、最後まで諦めたくはない。

2.自己紹介&前置き

 はじめまして。ボクは、普段はウェブ小説投稿サイトに一次創作小説を投稿している、「ナルコスカル」と言います。

 今回はボクが組んだ、《運命の大嵐、ドラゴンホーク》を統率者(ジェネラル)に据えた統率者(EDH)デッキを紹介していきたいと思います。デッキの強さの想定としては、俗に言う「パワーレベル7〜8帯」「競技的なジェネラルではないが、デッキ自体は極めて最適化されている」というものです。

 それゆえにこのデッキリストでは、数千円〜一万円台の高額カード、数万円クラスの再録禁止カードが豊富に採用されています。とはいえ、これはあくまでカジュアルフォーマットのデッキであり、これらのカードがなくても楽しいデッキを組む事はできます。元々、このデッキは「手持ちのあまりカードでとりあえず組んでみよう」からスタートし、ジェネラルのポテンシャルを感じたので高パワーレベル向けに組み直した経緯があります。なので、一つの参考、一つの叩き台として最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

 それでは、始めていきます。

3.《運命の大嵐、ドラゴンホーク》について

 ブルームバロウで初登場した、同セット内のストーリーでも描かれていたキャラクターです。ブルームバロウ特有の動物化現象により、ドラゴンから猛禽へ変身した姿であり、その正体はこの記事の執筆時点(2024年10月下旬)では判明していません。マジックプレイヤー・ファンからは、「おそらくタルキール次元出身のドラゴンだろう」という予測がされています。公式情報でタルキール再訪はアナウンスされているので、その憶測はほぼ間違いなく正解だと思われます。

 カードとしては、5マナ5/5の飛行能力持ち(フライヤー)であり、戦場に出た時と攻撃した時にデッキトップを衝動的ドローし、ターン終了時にそれによって追放されたままのカード1枚につき2点のダメージを各対戦相手に与える誘発型能力があります。つまり、「アドバンテージを得る」か「相手のライフを削る」の、ドローエンジンかダメージソースのどちらかを遂行し続けるカードです。

 また、衝動ドロー能力誘発の条件が「パワー4以上のクリーチャー」であり、この手のカードにありがちな同族系能力でないのが嬉しいです。衝動ドローしてプレイしなかったカードも、ただ追放されるだけではなく、「相手のライフを詰める」というカードゲームの基本戦術に一役買ってくれます。昨今では「クリーチャーの質が上がってきた」とプレイヤー・ファンから言われていますが、ドラゴンホークもまさに「令和のマジック」を象徴する一枚だと思います。

4.デッキについて

 ここからはジェネラル以外の構成、つまりデッキについて触れていきたいと思います。

 まず最初に、ボクが考えるドラゴンホークデッキは、大別して3つのタイプが存在すると思っています。それぞれ、

  • とにかくパワー4以上のクリーチャーを横並びさせる「アグロ(寄り)型」

  • 《ウルザの保育器》や《龍の大嵐》などの同族シナジーを重視した「ドラゴン同族型」

  • 対戦相手のライフを1ターンでも早く削りきる「バーン型」

です。ボクのデッキは2つ目の、「ドラゴン同族型」として組んでいます。具体的には、「質のいい5〜6マナ域のドラゴンを可能な限り採用し、ドラゴンホークでアドバンテージを得ながら相手のライフを削っていくミッドレンジ型」です。

 戦法としては、「最序盤はマナ加速に徹し、遅くても4ターン以内にドラゴンホークを着地させる。そこからドラゴンの盤面制圧力を使って相手の戦場を焼け野原にし、ダメージによってライフを詰めていく」が基本です。相手を後手に回らせるアグロ的展開力や、一枚で盤面をひっくり返せるパワーカードは皆無ですが、ミッドレンジにする事で赤単にありがちな「派手に展開したら全除去で咎められてゲームから脱落」を防止しています。ゲーム中で1〜2回程度はドラゴンホークに除去を撃たれるのは前提であり、仮にジェネラルがいなくても個々のカードパワーで勝負できるデッキ構築です。

 また、アーキタイプとしてはミッドレンジですが、《追い討ち》をキーパーツにしたいわゆる「追い討ち系無限コンバットコンボ」や、《無情の碑出告》と《擾乱のドミヌス、ソルフィム》の組み合わせで相手のライフが無限点でもゼロにできるコンボを採用しています。また、5マナジェネラルは7〜8帯のゲームではマナコストが重い寄りなので、《血染めの月》や《月の大魔術師》、あるいは《隠れしウラブラスク》などのいわゆる「スタックス系カード」も仕込んでいます。前述の通りドラゴンホークの能力誘発条件には同族系要素がないので、完全な同族デッキにしなくてもジェネラルを活用できるのが嬉しいポイントです。

 デッキリストは以下の通りです。

 7〜8帯のゲームを想定しているので、ほぼ全てのカードはEDHでよく見かけるもので構成されています。しかし、実際にプレイしてみると、「ドラゴンホークのおかげで赤単なのにアドバンテージを得られ続ける快感を味わえるデッキ」になっています。

  あ、ちなみに、このデッキの一番の敵はもちろん《ドラニスの判事》です。「(エルフと)鳥は見たら焼け」はマジックにおける金言ですが、このデッキではジェネラルが焼き鳥なので、代わりにヘイトベアのお人間さんを処しましょう。

5.おもしろカード紹介

 前述の通り、このデッキのほぼ全てのカードはEDHの定番カードで構成されていますが、一部はこのレベル帯であまり見かけないカードも存在します。その中の何枚かを紹介していきます。ドラゴンホークデッキに限らず、ある程度の汎用性があるカードなので、きっと参考になるはずです。

《酒場流喧嘩殺法》

 名前オチ感が凄まじいですが、ネタ要素ではなく、本気で勝つ為に入れたものです。カードとしては「ジェネラルに、『アップキープ開始時に衝動ドローをする。ジェネラルはそれによって追放されたカードのマナ総量に等しい+X/+0の修整を受ける』という能力を付与するエンチャント」です。

 元ネタは、コラボ元である「ダンジョンズ&ドラゴンズ」における、キャラクターの特技の一つです。

 このデッキにおいては、(ドラゴンホークを維持し続ければ衝動ドローを)継続的に行なえるドローエンジンであり、ジェネラルのパワーを上げてダメージレースにおいて優位に立つという役割があります。この手のカードにありがちなオーラではないので、ドラゴンホークに単体除去を撃たれてもこれは戦場に残り続けるというのが偉いです。

 ちょっと想像してみてください、「酔いが入って普段よりも更に凶暴になったドラゴンホークさん」を。可愛いですよね。その状態のドラゴンホークさんに絶対近づきたくないですけど。

《ワイルドウェイストランド》

 かつて発売された、「Falloutシリーズ」とのコラボセットに収録された一枚です。「ウェイストランド」とは、かつてのアメリカ合衆国だった地の呼び名であり、核戦争により全てが失われた事から「瓦礫の山」や「荒地」の意味でそう呼ばれています。イラストの状況に関しては……なんだかもうよく分かりません。

 真面目に解説すると、「ワイルドウェイストランド」は原作ゲーム内特殊イベント群の総称です。イラストは、本来は個々に発生するそれらをひとまとめに描いたものです。これではワイルドというよりカオスです。

 カードとしては、「ドローフェイズを飛ばす代わりに、アップキープ時に2枚衝動ドローする」というものです。つまり、実質的にライフを失わない《ファイレクシアの闘技場》です。アドバンテージを得られるかはその時の状況や運に左右されますが、衝動ドローなので《黙示録、シェオルドレッド》や《聖別されたスフィンクス》の能力を誘発させない強みがあります。

EDH常連カード

 コラボセットのカードであり、カード名的に考えても再録される可能性はかなり怪しいはずです。今ならシングル価格数百円なので、1〜2枚持っていても損はないと思います。

《精霊の噴火》

 比較的新しいカードですし、レガシーで使われていたので、知ってる方は多いかもしれません。マジック史上最強最悪のやらかしメカニズムとして名高い「ストーム」を搭載した、ドラゴン・エレメンタルトークンを生成するソーサリーです。

 このデッキは赤単らしく、《ジェスカの意志》や《煮えたぎる歌》などの唱えながらマナを伸ばせるカードがあるので、その終着点としてこのカードは打ってつけです。ストームにより、一般的な打ち消しでは完全な対処が難しい事が魅力の一つです。単純に1枚の6マナ4/4の飛行・果敢持ちドラゴンとして考えても、同族デッキならギリギリ及第点と言えるはずです。

 また、このデッキはドラゴン同族デッキとして、《龍の大嵐》や《ヴァルカスの災い魔》、あるいは《峰の恐怖》といったドラゴンやクリーチャーが出る事による誘発能力を持つカードを多く採用しています。それらのカードが盤面にあってこれをストームつきで唱えたら、間違いなくゲームが決まります。

6.おわりに

 ここまでお読みくださって本当にありがとうございます。

 これはあくまで「ドラゴンホークさんのフルパワーを知りたい」と考えて組んだデッキであり、これより下のパワーレベルでも十分にドラゴンホークデッキの面白さを味わえます。それはボク自身が経験した事なので、自信を持って伝えられます。

 むしろ、よりカジュアルなゲームなら少々使い勝手が悪かったり、マナコストが重めのカードが採用できるので選択の幅が広がると考えます。ボクがデッキリストを公開し、この記事を書いた真意は「ボクのデッキリストを公開して、ドラゴンホークデッキ使いが増えてくれたら、ドラゴンホークさんの可能性を広げられる」というものです。ついでに、晴れる屋さんオリジナルの構築済みドラゴンホークデッキのページが売り切れにより消滅してしまったので、一つでも多く日本語で書かれたデッキリストを増やしたかった。

 ゆえに、ボクのリストをフルコピーしても構いませんし、これを叩き台にしてオリジナルのデッキを作るのもOKですし、それを公開するのも大歓迎です。

 ところで、あなたはブルームバロウを訪れたら、どの種族に変身したいですか? ボクはもちろんバードフォークです。もしよかったら、あなたの「なりたい」をボクに教えてくださると嬉しいです。

今すぐ再訪したいくらい、ボクはこの次元の虜です。

いいなと思ったら応援しよう!