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Summer Pockets REFLECTION BLUE 鳴瀬しろは√ 感想

読んでくださる方がいるっていうのは本当に嬉しいことです。
なので、結局全√の感想記事を書くことになってしまいそうです。
この記事では、このゲームの主ヒロインと言える、鳴瀬しろはのストーリーの感想を書いていきたいと思います。

※注意
紬→識→鴎→のみき→蒼→静久→しろは→ALKA→Pocket
まで読み進めた時点での感想です。過去√のネタバレ要素も書かざるを得ない部分があるので、お気をつけください(過去の感想記事も読んでね)。
(何故しろは√で止めずにALKAとPocketまで読んでから感想を書くことにしたのかは後で書きます)

鳴瀬しろはについて。
全体として、不器用な優しさを持っているイメージでした。
共通√で最初に羽依里に会った時には、(実質下着姿を見られてしまってかなり動揺しているのにも関わらず)道に迷ってしまった羽依里に対してどう行けば帰れるかを教えてくれました。鴎√では羽依里に迫られて海賊船の帆に大きな絵を描いてくれたり、静久√では静久からカレーを貰ったお返しにチャーハンを作りに海の家に来てくれたりしました。蒼√でも蒼のことを気にかけている様子が伝わってきたし、何か事情があって人見知りになっているだけで、実際のところ滅茶苦茶いい子だよな…といった想いを持っていました。
そんな想いを持ちつつ、物語を進めていくと色々わかります。
まず見た目と表情がとても可愛い。不器用で誤魔化すのが下手なところとか、スイカバーに熱心になっているところとか、心底楽しそうに料理をしているところとか。なんだかんだ段々羽依里に懐いていって、どんどん表情豊かになっていく姿は本っ当に可愛い。しかも巫女さんです。巫女って属性が好きなので、その姿と立ち絵が見れた時にはもうハイテンションになっていました。それでなくても前半から立ち絵がバンバン出てくるし、しろは√に入るまでどの日付や時間でもマップにほぼ確実に現れるし、これがメインヒロインってヤツですか…と胸を高鳴らせながらプレーしていました。
しろは√の後にプレーしたALKAでも可愛いところを沢山見せてくれるのですが、それはここには書きません。

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しろはが共通√でプールで泳ぎの練習をしている(とても下手)ことから、羽依里の過去のトラウマを何らかの形で乗り越えるきっかけのストーリーになるんだろうな…程度の柔らかな予測はしていました。というかここまで6人の√をやってきても核心には触れられなかったし、間違いなくここで来るだろうなって。
羽依里の過去について、今までの√では語られなかった出来事がこの√では語られていきます。水泳部に所属し、大事な大会で失敗をしてしまった、期待を裏切ってしまった。これは他の√でも語られています。しかし、この√では更に先に踏み込みます。
失敗したことについては周囲の人間は優しかった。しかし羽依里は大会の後、まともに泳げなくなってしまったというのです。とても大事な場面での失敗がトラウマとなって、筋肉が萎縮してしまい体が思い通りに動かない、イップスと呼ばれる症状でしょうか。今まで自分が捧げてきたことが突如として全く出来なくなってしまう恐怖、想像するだけで恐ろしいものです。
(詳しくは書きませんが、自分も過去に音楽ゲームをそれなりにやっていて近しい状況に陥ったので、少し共感できるところがありました)
羽依里は学校に行かず、町をフラフラするようになってしまいます。1年間その状態が続いた後、両親と学校に全ての情報が伝わってしまい、高校停学・家庭崩壊に繋がってしまうのでした。
羽依里は父親から「全て、お前のせいだな」と言い渡されてしまいます。親からの完全拒絶の言葉、それは羽依里を自己全否定の感情に落とし込むのに十分な力を持っていました。

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そんな事情で実家に戻りたくない羽依里に対し、事情を知らないしろはは「家族に心配をかけてはいけない」と必死の表情で詰め寄ります。それもそのはず、しろはは10年前の夏に両親を亡くしているのでした。
しろはは幼いころに両親を亡くし、内気な性格に育ってしまいます。そして4年前には自らの持つ不思議な力が災いし、同級生に呪いをかけて崖から突き落としたと謂れのない噂を流されてしまいます。それ以降、しろはは自分からは誰とも遊ばないようになってしまいました。
更にはその力が発動し、しろはは今年の夏、自らが深い海底で溺れ苦しむ未来を見てしまうのでした。その未来の映像にはしろはの他にもう1人が映し出されており、その人を巻き込みたくないためにしろはは他の人を拒絶するようになってしまいました。
「どうせ私なんて生きていたってしょうがないんだから……」
自らがこの夏に命を落とすかもしれないという未来に対して、しろはは全てを諦めたかのような言葉を呟くのでした。その言葉は、羽依里が家庭崩壊を引き起こす直前、警官に捕まる瞬間の「いっそ全部ぶっこわれてしまえ」「ぶっ壊れてしまえ」という感情にどこか似たものを感じます。

しかししろはには羽依里と違う点があります。しろはは夜のプールで泳ぐ練習をしていました。そもそも泳ぐのが苦手な人間が夜のプールで一人で練習するってかなりハードル高いんじゃないかなって思います。しろはは口では諦めの心情を吐露していても、体としては完全に自らの運命に対して服従せず、抵抗を見せていたのです。
全てを諦めてこの島に逃げて来た羽依里は、自分以上に過酷な運命を背負っていたしろはをなんとかしてやりたい、しろはの境遇に立ち向かうことが自らの道を切り開く術なんだと捉えるようになるのでした。
しろはが可哀想だったから、しろはのことが好きになってしまったから、ではないのがミソだと個人的には思います。勿論しろはの境遇に共感した気持ちや、しろはに対して恋愛感情が全くなかったかといえばそれは嘘でしょう。でも、それは本質ではないはずです。

本来しろはにとって辛い思い出しかない、何も楽しくないはずの夏休みは、今年は違いました。羽依里と釣りをしたり、得意の料理を作ってあげたり、仲間たちと水鉄砲を撃ち合ったり。次第にしろははこの10年ほとんど見せなかった柔らかな表情を浮かべていくようになるのでした。

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そんなしろはの心情を暗喩しているのがウミホタルの光だと思います。亡き父親に教えてもらった秘密の場所で、ウミホタルは10年ぶりに光り輝くのでした。10年前の夏と言えば、しろはが両親を失い、心を閉ざしてしまった時期です。両親に会いたくて仕方がなかったしろはは、現実を捨てて未来へ行きたいとさえ思っていたこともありました。しかし今はそう思っていないのです。自分が呪いだと思っている力のことを知り、それに巻き込まれてしまう危険があることを知っても尚、自分がいてくれてよかったと言ってくれる、そんな大事な人と出会うことができたのですから。
幻想的で綺麗な心情描写だと思います。この√で一番好きな場面です。
(実はこの幻想的な景色はしろはの心情描写とはまた別の意味を持っていることがALKA, Pocketとストーリーを読み進めていくとわかるのですが、それはここには書きません)(個人的解釈なので正しいかどうかはわからない)

夏鳥の儀のお役目を無事に完遂し、何事もなく終了したかと思いきや、悲しくも事件が起きてしまいます。羽依里が以前に灯籠教室会った、半年前に母親を亡くして塞ぎこんでしまっていた少女(堀田ちゃん)が儀式で海に流した船に乗ったままだったのです。
「夏鳥の儀」はお盆で一時的に現世に戻ってきたご先祖様たちをあの世へ見送るための儀式です。この船に乗れば亡くなった母親に会える、堀田ちゃんは一瞬でもそう思ってしまったのです。母親を失ってから内気になり、孤立してしまったその姿は、かつてのしろはに似ている、というか昔のしろはそのものと言ってもいいでしょう。しろはは、そんな堀田ちゃんを助けようとして、海に落ちてしまいます。必死にもがくその姿はかつての彼女とは全然違いました。亡くなった両親の後を追いたいなんて気持ちは、もうしろはにはないのです。
過去のトラウマを払拭し、恐怖に負けずに海に飛び込んだ羽依里は、なんとかしてしろはを抱き留めます。海中で上も下もわからずに溺れ苦しむ彼らを救ったのは、正体不明の青い光でした。その光を掴もうと手を伸ばすことで、救命ボートから伸びる手に引っ張られるところまでたどり着くことができたのです。
(しろは√で一番腑に落ちない場面がここでした。青い光ってなんだったんだろう…って。その前に現れた時の編み人もよくわからないし、一番大事な場面で感動よりも先に深く考え込んでしまったのは正直勿体ない気もします)(この青い光の正体はALKA, Pocketとストーリーを読み進めていくとわかります。先ほどの光るウミホタルとも関連しています)(おそらく)

プロローグ冒頭の二羽の傷ついた鳥は言うまでもなく、羽依里としろはの象徴でしょう。傷ついた者だからこそ、同じ傷を負った者のことを理解することができて、それが救いの存在となり得る。出会いのきっかけともなるかもしれない。このゲームの一つのテーマだと思います。過去の傷を忘れる/逃げるのも一つの手かもしれませんが、乗り越えた先に見える景色もあるかもしれないということです。

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うみちゃん…どうしてこんなところに…

ALKAに続きます。でもその前に一つやり残した√があるので、そちらを読んでからになるかな…。

2022/7/12 追記
今度こそ聖地行くぞ



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