
小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-12
しばらくたった、ある日。夜の閉店間際。ときじく薬草珈琲店の入り口の扉がガチャリと開いて、一人の男性が店内へと入ってきた。顔立ちの整った、銀髪の男性。
店内の掃除を進めていた葵は店に入ってきた男性に気づき、掃除の手を止める。そして、それが誰であるかに気づくと、ちいさく「あっ」と声を上げた。
男性は軽く会釈をしてから、はにかむような笑顔で葵に問う。
「この店で、一緒に仕事をさせていただくことは可能ですか?」
葵は男性の言葉を耳から身体に取り入れ、頭の中で反芻する。そして刹那の後、その真意を知り、目頭を熱くしながら男性に返事を返した。
「もちろん、是非、一緒にお仕事させてください」
薬草で人が癒される。音楽で人が癒される。また、人は人によっても癒される。
そしてまた、どんな薬も、飲み過ぎたら毒になる。でも、その薬が本当に癒してくれるなら、ちょっとくらいの毒は気にならないかな。
そんなことを考えながら、葵は目の前の男性を店内へと招き入れた。
※続きはこちらより