尊敬する女性
高校受験のとき、面接対策で絶対に尊敬する人は誰かと聞かれるから考えておきなさいという指導があった。
そのとき、真っ先に浮かんだのが緒方貞子さんだった。
といっても、当時、中学生だった私は世界平和のために奔走している女性、国連で働いている格好いい女性というイメージしかなかった。
今回、たまたま、この本を読んで、改めて緒方さんの功績のすばらしさを知るとともに、壮絶な、しかし、充実した人生だったことを知ることができた。
大学教育に対する叱咤激励部分は、私も同感であり、自分自身しっかり学生と向き合えているか振り返る機会ともなった。質の高い教育を行うために、学び続ける存在でありたいと強く思う。
もう1つ。
緒方さんがインタビューの中で、
「苦しいことがあるから人生は楽しいんだ」
といった趣旨の発言をされていた。
私もそう思う。
私は障害者となった。
研究者として仕事をするというのは楽な道ではない。
もっと、楽な道もあったはずだ。
でも、それを選ばず、あえていばらの道を生きたい私。
自ら苦しいとわかっている道を選んでいる。
それはその苦しみのあと味わえる達成感や充実感、高揚感を知っているからだ。
周囲の人には何も苦労もなく「できる人」と言われることが多いが私は決してそんなにできた人間じゃない。
カンペを見ることができない私が30分間の研究発表をするためには、1日3回筋トレのようにプレゼンの練習を1ヵ月ぐらい続けた。
だから、「すごいよかった!」、「一番わかりやすかった」などと評価をされるのであって、何もせずに当日を迎えているわけではない。
緒方さんが人々の命のために生涯をささげ、重たい決断を幾度となく行ってきたように、
私も人のために、弱い立場にある人々のために、声を出せない人々のために、できることに精一杯取り組みたい、そう改めて感じさせてくれた1冊であった。