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奈良 修二会 松明を届ける電車に乗ってみた

奈良 東大寺にある二月堂とうお堂で欠かさず続けられている『修二会』

お水取り、お松明と色んな名前で呼ばれています。

奈良時代から始まってから一度も途切れることなく修められている法会で、二月にあることから(現在は暦の変化で三月)修二会と呼ばれています。

この修二会を催すためには、実に様々なお道具が必要です。

たとえば御本尊様にお供えする造花を作るための和紙は、古代から伝わる染色技法によって染められ、夜の行に上がるお坊様の足元を照らすために、まっすぐな真竹でもった松明が作られています。

こういった沢山のご寄進でもって修二会は成り立っており、そしてどれも「修二会を支えたい」と思う人々の熱意でもって贈られています。

お行のなかに「だったん」というものがあります。

修二会の行の中でも特殊なもので、その由来は謎が多く、どういう意味があり、何のためにしているのかよく分からないところが多い行です。

目に見えてわかるのは、だったん専用の衣装が用いられること、火天・水天というふたつの役どころがあること、「だったん松明」と呼ばれる松明を使用すること。

これ、お堂の中で松明に火をつけて使用するのです。

修二会が水を汲むという作法があるために水の行事と呼ばれる一方で、火の行事と呼ばれる所以です。

木造建築の室内で、火がついた松明を引きずる行法…言うまでもないですけど、二月堂は国宝です。

だったんそのものも本当に語るべきところが多いのですが、このお松明のための材木を三重県から運んでいます。

三重県名張市にある「伊賀一ノ井松明講」の皆さんによって準備され、かつては山道を歩いて担いで持ってきておられました。

近畿には「近鉄電車」という私鉄が走っており、今は電車で運んでいます。

専用列車が用いられ、松明を乗せて走ります。

そして、東大寺の最寄りの近鉄奈良駅からは徒歩なんですね。

駅から東大寺まで2キロほどですが、かなり重たい松明を担いで歩くのはほんとにたいへん!

私もちょっと担がせてもらいましたが、もう数歩歩いてよろめくという感じ。

こ、これをかつては名張から奈良まで…

とんでもない重労働に、昔の人のパワーと熱意を感じます。

だったん松明用の材木は、きれいに切られ、こもで包まれ、まさに真心こめて差し上げられているのがわかります。

近鉄電車には色んな特別電車が走るのですけど、だったん松明用列車というのは、ほかにないすてき電車です。






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