見出し画像

遠くても暑くても!絶対行く価値あり!MIHOミュージアム『奈良大和路のみほとけ』展


滋賀県甲賀市にある『MIHOミュージアム』にて『奈良大和路のみほとけ』展が開催中です。

MIHOミュージアムといえば、広大な敷地を持ち、緑深い山の中に素晴らしい建築でもって沢山の芸術品を収蔵しているミュージアム!

そのコレクションは多彩な日本美術から始まって、世界の古代美術にまで広がり、3000点以上!

こちらが奈良のみほとけに特化した展覧会を開催するということで見学してきました。

行ってみて、その内容の豪華なこと、展示の贅沢なことにびっくり…

奈良の御仏の多くは、ものすごく近くで拝することができるのですが、それを越えてさらに近くで見せてもらえて、しかも細部まで鑑賞できるのです。

これまで好きだった仏像がさらに好きになる展覧会でした。

ぜひ、会期中一度は訪れてほしいと思います。

魅惑の後ろ姿 薬師寺 聖観音さま


今回どれも「目玉」といえるようなみほとけばかりだったのですが、その中でも心打たれたのが、薬師寺の聖観音さまです。

ふだん東院堂というところに安置されていて、御厨子にはいっていらっしゃいます。

御厨子は開け放たれ、須弥壇の上にいらっしゃるものの、十分間近で拝める方です。

でも今回の展示では、より近くにおりていらしてて、360度周囲を歩けるようになっている!

観音様の後ろの姿も全部見せてもらえるのです。

正面からのお姿の美しさは言うまでもないのですが、後ろに回っても素晴らしくて、お体にまとうアクセサリーの繊細さや、なめらかなボディラインなどがもう最高…

二の腕に腕輪をされているのですが、その模様が真後ろにあるのを初めて知りました。

足元の台座、そこに刻まれた花弁の様子。蓮をもした表面のデザインも、明るいところでじっくり見れて、こんな風になっているのか…と感激。

聖観音さまが素晴らしいのは知ってましたが、細部に渡ってとんでもなく素晴らしいのが、どこもくっきり見えてすごく良かったです。

仏様の肉体美のようなものが、後ろ側のほうがよりいっそう強調されているようで、新鮮な驚きでした。

キュートすぎる! 法徳寺 菩薩立像


奈良 奈良町のなかに法徳寺というお寺があります。
かつて元興寺の子院だったそうで、今は融通念仏宗です。

このお寺は奈良の古代寺院の仏像を多く受け継ぎ、その中で興福寺にいらした千体仏がいらっしゃいます。

興福寺の北円堂に100体いらしたそうで、すべてお顔が違います。
個人が奉納したと考えられ、どのみほとけも素朴ないでたち。

でも不思議に心惹かれる方ばかりで、似ているけれど個性があり、展示会場にあった数体の方々のなかでさえ「マイ仏❤」を決めてしまいたくなります。

こんなかわいらしい方がいたのか…と絶句。

祈りを込めて造仏されたのか。祈りが叶ったお礼に奉納したのか…

当時の人々の思いがそのまま形ででているようでした。

運慶や快慶が作った技術力あふれる御仏も、古代の寺院にて拝まれた最高に贅沢な材料で作られたみほとけも、どれもこれも素晴らしいですけど、一見時代の波の中に埋もれてしまいがちな、ただただ心をこめて造ったみほとけのなんと素晴らしいことか。

今回一番会えてよかった仏像でした。

修二会の底力が見える! 練行衆のお盆


仏像ではありませんが、今回度肝をぬかれたのが、東大寺の「お盆」

毎年三月に収められる「修二会」にて祈りを捧げる僧侶が使用する、食事の時のお盆です。
なんと鎌倉時代…

たかがお盆と思うなかれ。鎌倉時代に制作されてから江戸時代まで使用されていたと言うのです…

ものを大切にする!なんて言葉が上滑りしていくようです…

修二会を支えてきたのは人ですが、このお盆もまた、修二会の大事な一員で、堂々とした風格は人と同じくらい重い…。

修二会のお道具は、ほかにもあり、もっと長く使用されたものもあります。

東大寺の修二会は「不退の行法」と呼ばれ、これまでただの一度も欠かされたことがありません。

絶対に続けるという決意は、この先人のお道具を受け継ぐ、というところにも現れている気がします。

おまけ 図録は購入必須

今回MIHOミュージアムに行ってほんとによかったし、できたらまた行きたい…後期に登場する御仏も見逃せないかたばかりです。

ただちょっと遠いので、なにかのついでに行くとういのがしづらい場所なんですよね。MIHOミュージアムに行く!と決めてかからないと行けない感じ…


よく展覧会は行けなかったけれど、図録だけ取り寄せた、というのを聞いて、図録って結局写真だから、それって内容の半分も楽しめないのでは…と個人的に思っていたのですけど、今回は違います。

今回の図録は買い!です。

単に登場した御仏の紹介だけでなくて「奈良の古寺とみほとけの重厚なガイドブック」にもなっているのです。

県内の地図とともに、お寺の紹介、歴史、仏像の説明がカラー写真とともにあり、これから「奈良の古寺をめぐりたいな」という方にもぴったりな案内本になっているのです。

そう、今回お出ましになった仏像のことだけでない「その方がいらっしゃるお寺の紹介」がばっちりなのです。
これを読めば、そのお寺を訪れたとき、最も大事なことがわかります。

ぜひ奈良旅行に携えるためにも買って下さい。


展覧会では、ふだんお寺では会えない方にも会えて、とても貴重な機会でした。
暑い季節ですけど、それを押して行く価値のある展覧会でした。







奈良でガイドをしています。これからもっとあちこち回っておもしろいガイドを提供します。ご支援どうぞお願いいたします。