狼谷とはんにゃーじ
奈良はニホンオオカミ最後の目撃の地であるという。
奈良の南、東吉野というところでニホンオオカミが捕獲されたあとを最後に絶えた。ニホンオオカミは絶滅したと考えられる。
人間をも襲うオオカミは駆除の対象になった歴史があり、そこへ家畜の伝染病などが蔓延して死に絶えたという。
奈良は山間部が沢山あるので、オオカミは身近にいたと思う。
かつて狼谷という場所があった。きっとオオカミが沢山住んでいたのだろう。オオカミたちの遠吠えが響くと、近隣に住む人々が飼っている牛が怖がっておびえたという。現在そこは切り開かれ、開発され青山住宅という名前になっている。
そりゃあ新しく造成された一角が「狼谷」よりも「青山住宅」の方がイメージがよくってすてき!と思うことを狙って付けたのだろうけど、「狼谷」というゆかしい名前を無くすべきではないと思うし、それは過去を知る重要な手がかりでもある。
現在平城宮跡がある場所が遺跡として認識されていなかったころ、奈良県技師の関野さんという方が「大黒の芝」と呼ばれている場所を大黒=大極ではないか?と考えて発掘調査した。(平城京の中心には大極殿という建物があった)
のちにここは平城宮跡として国の史跡になった。大発見である。
平城京の跡地ですら、長い年月ののちに忘れ去られてしまった。当時周知の事実だったことは、あえて書き記したりしない。でも土地の名前が不変であれば、手掛かりになる。
奈良に般若寺というお寺があって、コスモスの名所でもある。
最初からコスモスの寺だったのではく、荒れてしまった境内をなんとかしようと前住職が研究の末、コスモスが美しい寺に育てた。
般若寺がある場所はちょうど奈良と京都の境目くらいで、かつては奈良の鬼門封じであるとも言われた由緒ある寺だ。
この般若寺のことを古老などは「はんにゃーじ」と発音される。
にゃー?
そしてこの般若寺は、狼谷からわりと近い。
言葉と言うのも日々変遷する。平安時代の文学が私たちにはもう読めない。
そういう意味では伝承文学というのは、心もとないようで実は確かに何かを伝えるものなのかもしれない。
「狼谷」も「はんにゃーじ」というイントネーションも、どちらも残した言い奈良の宝物である。
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