正倉院展でぜひ見つめたい「漆」
螺鈿や琥珀の美しさの中で…漆に注目
奈良 正倉院の宝物はすごい、素晴らしいものばかりなんですが、その中でも漆の技術が半端ないです。
今年(2023年 第75回正倉院展)でもは聖武天皇の来ていた御袈裟を入れていたとされる「箱」がご出陳なさっているのですが、まーこれがすごいのです。
美しいのです。
牛革製という箱に何層塗られたのか、漆がつややかに光り、まさに黒い宝石のよう。
漆の工芸品は今でも世の中にありますが、1000年前ってほんとですか?と言いたくなるツヤと気品です。
飾り気のないシンプルな漆黒がこんなに美しいのか・・・とほんとに度肝を抜かれます。
ほんとに黒い宝石です。
日本人の女性の髪が黒くて美しいことがもてはやされたのも、こも漆の輝きを愛する性質が根源にあるのでは・・・と思っていまします。
漆✕金属のすごみ
漆技法のものでほかにすごいのは『平文』ひょうもん 『平脱』へいだつ
という技法です。
どちらも漆を塗った上に金や銀で細工を作り、それを漆で塗り込めて研ぎ出す技法です。
似たやり方ではありますが、平脱の方は、金銀の細工の上にかかった漆だけをはぎとるそうで・・・
平文は、全体的に研ぎ出すことでなめらか仕上げになります。
どちらも素晴らしく美しい上に、漆+金細工・銀細工の競演というとんでもなく贅沢なものです。
銀は経年劣化で黒くなってしまうのですが、金は残り具合が良い場合が多く、まさに漆✕金属のすごみを味わえます。
つい我々はきらびやかな螺鈿細工や宝石の散りばめられた宝物に目を奪われがちですが、のちに「ジャパン」と名を馳せる漆に注目したいです。
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