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[エッセイ13]かぼちゃの思い出

ども、ならなすおです。
 
今回は、エッセイ「かぼちゃの思い出」
 
10月って、すっかりハロウィンが定着しましたよね。
んで、あの黄色いカボチャの灯りのやつ。
ジャック・オー・ランタンって言うんですか?
あれが街の至ることころに出没しています。
 
私ね、あのジャック・バウワージャック・オー・ランタンが苦手なんです。
というか、黄色くてデカいカボチャが苦手です。
 
何故そうなったか?
 
オランウータンジャック・オー・ランタンには、何の罪もありません。
罪深いのは、私の思い出なんです。
 
あの日、あの時、あの場所で、、、(君に会えなかったら~♪)

ままっ!!
まままっ!!!
(いろいろはしょりすぎ)
(小田和正「ラブストーリーは突然に」参照)
 
全然大した話ではないんですが、これから私にウータン・クランジャック・オー・ランタンを持たせようとする人が現れないとも限らないので、ここに、「涙涙の物語」(ユニコーン「大迷惑」参照)を公開しておきたいと思います。
 
不快になる人がいるかも知れない。
汚いです。
オエッてなるかも、、、
そういうのが苦手な方は、読まない方がいいかもです。
 
それでは本編、始まりです!



(1)地方振興局

あれは、28歳の頃、、、
私は当時県職員で、出先機関の「地方振興局」という所に勤務していました。
 
県庁のいくつかの仕事は、当然ですが県内各地に事務所を置く必要があり、そうした事務所が集まっている建物を、大分県では「総合庁舎」と言っていました。
私が勤めていた総合庁舎には、↓のような事務所が入っていました。
 
・地方振興局
地域活性化事業など
 
・農業改良普及センター
地域の農作物の栽培指導など
 
・福祉事務所
福祉事務
 
・県税事務所
県税の課税、徴税
 
・土木事務所
道路、河川等の土木事業の実施(県管轄分)
 
・教育事務所
学校事務や学校教育の指導・助言
 
採用4年目、地方振興局2年目だった私は、地方振興局全体の総務(経理など)を担当する「総務課」という所に配属されていました。
 
総務課は、「他課に属さない事業」を全て担当する「なんでも屋」で、交通安全、消防団、青少年健全育成など、様々な仕事がありました。
 
そのうちの1つが、「選挙事務」です。


(2)選挙事務

都道府県の選挙管理委員会(「せんかん」と略します。)では、衆参両院の議員選挙、都道府県知事選挙、都道府県議会議員選挙などを担当します。
 
有権者は市町村に住んでいて、投票所も市町村にあるので、実際の選挙事務の主役は市町村選挙管理委員会さんです。
 
県の地方機関の選挙事務は、大きく2つです。
 
・県選管と市町村選管の情報伝達の仲介
県選管はそれほど人数が多くないので、県内の全ての市町村から情報を収集して処理する能力がありません。
そのため、県をいくつかの地方に分けて、市町村との情報交換の中継基地を設けます。
それを担っていたのが、「地方振興局総務課」です。
例えば、「○時現在の投票率」などの情報を一定時間おきに市町村から報告してもらい、集約して県選管に報告する、といった仕事です。
 
・明るい選挙推進
選挙がありますよーという広報をしたり、選挙違反をしないようにしましょうね、という啓発を行ったりします。
選挙があると、県と政令指定都市にある「明るい選挙推進協議会」(「めいすいきょう」と略します。)というのが、啓発イベントをしたりします。
市町村と連携してこれをやるのも、地方振興局総務課である私の仕事でした。

 
その秋あった選挙は、衆議院議員選挙だったかな?
11月の初めだったと思います。
 
選挙の投票日は、日曜。
 
失敗が許されないオペレーションなので、振興局総務課の係長と担当の私は、土曜日の準備作業と日曜日の本番の2日、出勤して対応することになりました。
 
他の事務所は休みなので、総合庁舎はがらんとしていて、仕事が立て込んでいる一部の職員さんがぽつぽつ出てくる以外は、閑散としていました。

(3)悲劇の予感

土曜日の午後、出勤。
 
正面エントランスは締めていて、裏口から入ります。
 
入った瞬間、変なオイニ-(臭い)がしました、、、
「なんだろう?」
と思いながらも、スルー。
2階の地方振興局に入りました。
 
その日は、選挙事務はちょっとした準備だけで、「その時間にそこにいればOK」という類の業務だったので、別の仕事をしていました。
 
局の扉を開け、トイレに向かうと、、、
 
また変なオイニ-。
おそらく、1回のオープンスペース(特産品の展示などをしています)から来ているようです。
 
嫌々ですが、確認してみることに、、、

さすがにこんなに大きくない
(AIで生成)


そこには、近隣の農家が栽培しているという、展示用の巨大な黄カボチャがありました。
 
大きさが話題になったので、農業改良普及センターの職員が置いたとのこと。
それはみかん箱を4つならべた上に、デンと座っていました。
 
オイニ-は、このパイセンが放っているようです。
 
多分、自分の重さで下の方が圧迫されて、ぐじゅぐじゅになっているのでしょう。

下の方が腐ってきてる
繰り返しますが、ここまで大きくはないです
(AIで生成)


とりあえず係長に報告。
 
2人でどうこうできるサイズでもないですし、農家さんに返すやつかもしれないので、とりあえず無視して様子を見ることにしました。
 
後は選挙本番を待つばかり。
 
深刻さを増していくパイセンのオイニーに不安を覚えながらも、その日は帰路につきました。


(4)仕事より全然大変

翌日。
 
選挙事務は確か午後からだったと記憶しています。
 
本番は有権者さんの投票が終わった後なので、夜。
 
午後は、定時連絡以外は別の仕事をしていました。
 
だんだん無視できなくなってくるパイセンのオイニ-、、、
 
下の方からルーシー(汁)が出てきています、、、


ルーシーは下の方からしか出てなかったです。
(AIで生成)


これはもはや、対策を講じざるを得ない状況だと判断しました。
月曜朝の来庁者に、このオイニ-をかがせるわけにはいかない、、、
 
係長に報告し、係長権限で20歳の若手職員を1名招集してもらいます。
私は、パイセンを運ぶ用の「捨てていい毛布的なやつ」を探しました。
 
10分後、20歳の彼、到着。
「うわ、何すかこの臭い、、、」
 
ごめん、君はこのオイニ-の根源を外に出すための力仕事要員なんだよ。
 
しばらくみかん箱と格闘しながら、何とかパイセンを毛布に乗せます。
 
そして、3人がかりで、裏口から外に出しました。
土の所まで運び、パイセンをリリース。
 
幸い、ルーシーの付着は最小限で済みました。


ここまで悲しい作業ではなかった
(AIで生成)


あとは、ミカン箱も外に出し、パイセンがいた場所周辺のルーシーを処理すれば完了。
 
いい大人3人で、何をやっているんだか、、、
うち1人は、そのためだけに呼ばれています。
 
後々考えてみたら、この時の係長は神でした(出世しました)。
この時呼ばれた20代の若者も、その後出世を遂げたと聞いています。
 
その後の選挙事務は、よく覚えていませんが、多分楽勝だったんだと思います。
 
その2日で私の心に残ったのは、パイセンのぐじゅぐじゅの下部とルーシーのビジュアル、そして強烈なオイニ-でした。
 
その後数年、私はカボチャを食べることができませんでした。
 
黄色いカボチャを見るのも嫌で、すっかりハロウィン嫌いになってしまいました。


(5)おわりに

このエッセイに、教訓はありません。
 
巨大なものは、自重で腐ることもあるんだな、とかそのぐらいです。
 
あのオイニ-は、表現できないです。
っていうかそんなもん表現しない方がいいです。
 
50歳近い私。
妻が結婚後初めて作ってくれた料理を覚えていません。
仕事で初めて作った刊行物も覚えていません。
でもあのルーシーのオイニ-は覚えています。
 
香りと記憶は、結びつく、、、って、誰かが言ってました。
糸村君ではなかったと思います(上川隆也「遺留捜査」参照)。
 
あの日の思い出は、今だに私を、ハロウィンから遠ざけています。
 
今回、汚いのにご覧いただき、ありがとうございました。

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