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[補助金申請虎の巻05]財務分析(ロカベン)

ども、ならなすおです。
 
このシリーズは、2025年の年明け以降に出てくる、経済産業省系の各種補助金へのエントリーを目指す中小企業さん向けに書いています。
 
今回は、補助金申請作業の前にやっておいた方がいい簡易経営診断「ローカルベンチマーク」の解説第1回「財務分析」です。
 
ここから3回、ローカルベンチマークの解説をしますが、それらをまとめて、弊社「合同会社それがし」が「経営健康診断」というサービスを実施していますので、是非ご活用ください。

 
[合同会社それがし]


[経営健康診断サービス記事]


今日扱う「財務分析」。
「苦手だなー」と思う企業さんが多いんじゃないでしょうか?
「あんまり他人に見られたくないな」というお気持ちもわかります。
 
ですが、決算の時、税理士さんなど、一部の人には見せますよね?
 
私は長く中小企業支援の仕事をして、たくさんの決算書を拝見しました。
ご安心ください。
めっちゃきれいな決算書など、ほぼありませんでしたよ。
現預金が少ないとか、借入が多いとか、そこだけを見る訳じゃありません。
弊社では、お預りする決算書を真剣に精読し、良い所も問題点も見つけていきたいと思っています。
 
なお、本稿で示している様式は、経済産業省が示しているローカルベンチマーク用様式「ロカベンシート」の「2022年度版/最新」からの抜粋です。
読者の皆さん、無料でダウンロードできますので、是非見てみてください。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/sheet.html

それでは、本編、スタートです。



(1)必要な書類

決算の際、税理士さんからは、たくさん書類をもらうと思います。
それらのうち、ロカベンには、あるいは補助金申請にはどの紙が必要か?
 
一般に、決算書というと、以下のような書類を指します。
 
・貸借対照表
決算期末に会社に存在する資産、負債の状況を表す書類です。
バランス・シートというので、「B/S」と略されます。
 
・損益計算書
その期に費用が稼いだ収益や、かかった費用などを示す書類です。
利益(プロフィット)、損失(ロス)の英語頭文字から、「P/L」と略されます。
 
この2つが、良くコンサルや銀行さんが「ビーエス、ピーエル」と言ってるやつです。
 
・製造原価報告書
製造業さんの場合は、製造に係る「直接経費」と、オフィス等でかかる「間接経費」を分けて分析する必要があります。
直接経費を細かく分析するための資料を「製造原価報告書」と言います。
 
・販売費および一般管理費内訳
全ての企業で発生している、役員報酬、給与、家賃、広告費、手数料などの経費を「販売費及び一般管理費」と言います。
「はんかん」と略します。
損益計算書にこれを列記すると1ページに収まらなくなるため、別に「はんかん内訳」というのを作って整理する企業さんが多いです。
 
・株主資本等変動計算書
最初に設定した資本金に、毎年の営業の結果(資金過不足)が積み重なっていったものが、貸借対照表に「純資産の部」という形で出てくるんですが、これを詳しく別紙にしたのが「株主資本等変動計算書」です。
ロカベンでは、これは使わないです。
上の4つに比べたら、補助金等でもあんまり使わないです。
 
個人事業主さんの場合は、決算時に作る書類が法人とはだいぶ違うのですが、青色申告をされている場合、「確定申告書第1表」「損益計算書」「貸借対照表」などをお預りします。
 
ロカベンに使う決算書の様式は、このようなものです。
それに加え、3期前の更に1期前(4期前)の売上高の情報があれば、万全です。
 
なお、弊社もそうですが、業歴の若い企業の場合は十分な分析ができませんが、「ある資料でやれることをやる」というだけなので、「資料がそろわないからやらない」とは思わないでください。
 
弊社「合同会社それがし」の「経営健康診断」では、上記だけで情報が不足している場合は、減価償却の状況や、借入期の返済状況などの書類をお預りする場合があります。
ロカベンよりもう少し詳しく財務分析をして、レポートにまとめさせていただきます。


(2)ロカベンに入力する内容

①基本情報

ロカベンでは、まず、自社の基本情報を入力します。

経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート(2022年度版/最新のもの)」より抜粋


ここで、「大分類が分からん」「小分類が分からん」という企業さんのために、ロカベンシートは、プルダウンメニューと「参照」という解説を付けてくれています。
 
従業員数と資本金を入力することで、企業規模を把握し、同業種・同規模の業界平均値と比較を行います。
 
驚くほど良く出来た様式です。


②財務分析用情報入力

次に、前章で示した決算書から、必要な情報を入力していきます。

経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート(2022年度版/最新のもの)」より抜粋


3期分の決算の情報と4期前の売上高の情報で、上記を埋められると思います。


(3)ロカベンによる分析

入力情報を元に、下記の6つの財務指標(6つの指標)を計算し、業界の平均値と比べて、レーダーチャートに表示してくれます。

経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート(2022年度版/最新のもの)」より抜粋


①売上持続性(売上増加率)

前期と比べて売上がどのくらい伸びたか、という指標で評価しています。
これは、本当は、企業さんの事情をお聞きしないと何とも言えないですが、客観的な評価指標としては、これを使うのかな、と思います。


②収益性(営業利益率)

売上のどのくらいの割合が営業利益になったか、という指標で評価しています。
この「営業利益率」は。業種によってばらつきが大きいので、同業の平均値と比較できるのは嬉しいです。


③生産性(労働生産性)

従業員1人がどのくらい利益を挙げたか、という指標で評価しています。
営業利益を従業員数で割っています。


④健全性(有利子負債倍率(EBITDA)

「イービットディーエー」などと読みます。
(借入金-現金・預金)/(営業利益+減価償却費)
という式で計算し、企業の借入返済能力の指標として見ます。


⑤効率性(営業運転資本回転期間)

売上高の何か月分の運転資金が必要かを評価する指標です。
こういうのは、典型的に、業界平均と比較するのが有効なやつですね。


⑥安全性(自己資本比率)

資産全体の中で自己資本(返済不要なお金)の割合がどのくらいかを評価します。

 
これらの指標を評価する上で、各企業さんの個別の事情を加味する必要があります。
 
例えば、昨年大きな借入をしたばかり、新事業を始めたばかり、などなど。
 
出た結果を踏まえて、自社の財務の現状を適正に把握していくためには、銀行や支援機関、コンサルなどの助けが必要かな、と思います。


(4)おわりに

財務分析というのは、「完璧にやる」というのは多分ムリで、「業界平均との比較」などをするのが関の山だと思います。
 
例え分析の結果が良くなくても、それに御社なりの事情があるのであれば、それを堂々と表明していけばいいだけです。
 
昔は、人が人を見てお金を貸したり投資をしたりする、いわゆる「男気貸し」みたいなのが結構ありました。
今は、そういうのはぐっと減って、客観的な評価が主流になっています。
 
一度、客観的な数字を出してみて、そこに必要な注釈を付けていく。
その第一歩が、ロカベンの「財務分析」だと思ってください。
 
企業の数だけ、事情があります。
客観的審査を受ける世界で、その事情をいかに表現するか?
私はコンサルとして、それを常に考え続けます。
 
今日もご覧いただき、ありがとうございました。

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