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[補助金申請虎の巻08]付加価値
ども、ならなすおです。
このシリーズは、2025年の年明け以降に出てくる、経済産業省系の各種補助金へのエントリーを目指す中小企業さん向けに書いています。
今回は、必ずと言っていいほど聞かれるようになった、「補助事業者は付加価値を上げてください」という要件を解説します。
つまり、「付加価値って何よ?」
という件ですね。
これを把握して、上げていく計画を作らないといけません。
付加価値を上げる件、割とハードルが高いです。
成長中の中小企業さんであれば、クリアしやすいかと思います。
しかし、「経営革新案件」では、初めにぐっと売上や利益が落ちたりすることもあるので、数字を気にしていないと、補助制度の求める水準に届かなかったります。
私の支援スタンスをお伝えしておきますね。
無理して数字を作るのはやめましょう。
嘘をつくのはよくありません。
不達成で、補助金返納とかなるのも面倒です。
「事業計画で示す妥当な成長路線を歩んだら、こんな成長をします。」で、大体の場合、補助制度の求める水準はクリアできます。
それでは、細かく見ていきたいと思います。
今回もよろしくお付き合いください。
(1)経済産業省のいう「付加価値」とは
経済産業省系の補助金で「付加価値」というと以下の3つの数値の合計になります。
・営業利益
・人件費
・減価償却費
ざっくり言うと、「会社の儲けの使い方」を表す指標です。
営業利益とは、儲けを会社が持っている場合に増えるものです。
人件費とは、儲けを賃金アップに使った場合に増えるものです。
減価償却費とは、儲けを設備投資に使った場合に増えるものです。
この3つを足すことで、どのくらい儲けが増えたかを把握しようとしているんですね。
例えば、2024年7月26日まで公募されていた「第12回事業再構築補助金」の「成長分野進出枠」という枠では、以下のような付加価値額要件が設定されています。
「補助事業終了後3~5年で付加価値額の 年平均成長率 4.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の 年平均成長率 4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること」
これが、「コロナ回復加速化枠」という枠だと、年平均成長率が3%になります。
「年平均成長率」なるものを補足しときますね。
これは、CAGR(Compound Annual Growth Rate)という指標で、「複利計算」と同様に、「2年目は成長しているのだからその成長した数字を元に計算する」という成長率計算のやり方です。
分かりにくいんで、図を出しますね。
下の図は、基準年が「1,000」の時CAGRが大体4%になるように作った数値の推移です。
単純に毎年4%と考えると、5年後は20%になるような気がしますが、CAGRを計算すると、5年後には2 1.7%になります。
単純に計算するより少し大きくなる、と思ってください。
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実際問題として、5年で21%成長などというのは、大企業で考えるととても難しい話ですが、中小企業が成長基調に乗れば、割と達成可能な数値です。
中小企業は、ベースとなる「基準年」の付加価値が小さいので、やり方によっては、高成長できます。
国も、そこに期待して、中小企業の成長を後押しする制度を作っているんですね。
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(AIで生成)
(2)付加価値の各要素
付加価値を構成する3つの要素を、簡単に解説します。
①営業利益
売上から、仕入れや原材料費、工場の人件費など、販売品に直接関係している経費(減価)を引いたものを「売上総利益」と言います。
よく「あらり」(粗利益)と言ったりします。
あらりから、事務所の経費や役員報酬、事務員さんの給料、オフィス家賃、広告宣伝費などの「販売費および一般管理費」(「はんかん」と略します)を引いたものを、「営業利益」と言います。
営業利益は、「営業活動をした結果、どのくらい儲かったか?」という指標なので、企業経営上大変重要な数字です。
これが増えている企業は、ざっくり言えば「順調に成長している」と判断します。
次に説明する人件費や減価償却費が増えると、営業利益は減ってしまうのですが、補助金申請の際に経営計画を作る際には、営業利益がマイナスになってしまうような計画は、正直見栄えが良くありません。
コロナの直後には、「営業利益が今はマイナスだけど大きくプラスにできます」という計画が多かったと思いますが、現時点では、営業利益がマイナスだとあまり心証が良くないのかな、と予想します。
②人件費
これは、プラスにならないとそもそも補助制度に申請できない可能性が高いやつです。
給料と、役員報酬、福利厚生費などが含まれます。
別記事で触れますが、国の意向として、中小企業の賃金アップは至上命題です。
最低賃金、すごい勢いで上がってますよね?
ここ数年の年平均で3%以上あがっている県もあります。
人手不足の昨今、新たに人を雇って人件費を増額させるのは容易ではありません。
なので、既存の人員を賃上げすることで、会社全体として人件費を増加させていきます。
③減価償却費
まず、減価償却という制度を簡単に説明します。
企業の預金口座にあるお金で1,000万円の設備を買ったとします。
その設備を5年間使い続けるとします。
すると、その購入代金は、その年に全額経費として計上することはできず、5年に分けて経費にしていきます。
その設備は、経費として計上した額と同額ずつ、固定資産としての価値を失っていき、5年後には価値が1円(ほぼゼロ)になります。
毎年200万円ずつ経費に計上すると仮定すると、最初の期に計上できる経費は200万円となり、設備の資産価値は800万円になります(定額法の場合)。
この経費計上した200万円を「減価償却費」と言います。
「1,000万使ったのに200万円しか経費にできないの?」と思われるかも知れません。
そのとおり。
会社の口座残高は1,000万円減っているのに、資産は200万円しか減っていないと見なされ、その差額は税金の計算対象になってしまいます。
中小企業さんには、これは痛い、、、
そのため、買った設備を初年度に多く経費計上する「特別償却」といった優遇装置があります。
最近の補助制度では、企業さんは設備投資を行うケースが多いです。
そうすると、減価償却費は増えるため、付加価値は増加するように感じます。
しかしその分、営業利益が低くなってしまいます。
トータルとして付加価値がどう変化するかについて、試算する必要があります。
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(AIで生成)
(3)おわりに
今回は、最近の補助制度で必ずと言っていいほど聞かれる「付加価値」について解説していきました。
最後に、ものすごく端的に言うと、
人件費が増えたら、その分営業利益が減ります。
減価償却費が増えたら、その分営業利益が減ります。
つまり、付加価値を増加させていくための取組は、「どうやって営業利益を増やすか」という取組だと言えます。
設備投資をしたら、DXのためのシステムを入れたら、どういう風に、営業利益が増えるのか?
利益を増やす方法は、2つしかありません。
売上を上げるか、コストを下げるか。
中小企業では、コストダウンの余地はそんなに大きくないので、ほとんどの場合、付加価値の増は、売上の増とセットで検討されます。
そのための、事業計画です。
事業計画、ひな形に当てはめて、ちょちょっと作る、といった作業でできるもんではないです。
本気で計画し、真摯に遂行していく企業が、補助金を取っていきます。
取っていくべく、弊社も応援したいです。
ご相談、お待ちしています。
[合同会社それがし]
今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。
次回は、これも最近の補助金で要件になりやすい「賃上げ・労働生産性」について解説します。