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[補助金申請虎の巻17]収益納付

ども、ならなすおです。

このシリーズは、2025年の年明け以降に出てくる、経済産業省系の各種補助金へのエントリーを目指す中小企業さん向けに書いています。
 
個別の相談は弊社「合同会社それがし」にて、いつでも無料で承っておりますので、下のリンクのフォームからお気軽にお問い合わせください。


今回は、経費の中でちょこっと触れた「収益納付」の話をしたいと思います。
 
補助金で買った設備で利益を上げたら、その利益を納付せんといかんのかーい!
聞いてないよー!
嫌だよそんなのー!
という声が聞こえています。
 
「どんな嫌がらせじゃい」という気持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、以前お話しした「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(てきかほう)の中に規定があるから、収益納付の決まり、作らざるを得ないんですね。
 
結論を先に書くと、「驚くほどめっちゃ儲かったら収益納付が発生する」と思います。
逆に言うと、「驚くほど儲からない限り収益納付は発生しない」です。
 
元公務員だった私の私見を述べます。
「てきかほう」に規定があるから、収益納付の仕組みは作ります。
でも本音を言うと、収益納付なんか、してもらいたくなかったです。
そのお金、未来への投資に回して欲しかったです。
 
そして、現在の公務員さんも、多分同じ気持ちだと思います。
 
今回は、その辺の「心意気」を、紐解いていきたいと思います。
 
本編、スタートです。



(1)収益納付の計算式

2024年8月の「事業再構築補助金(サプライチェーン強靱化枠を除く)補助事業の手引き」の計算式を元に解説します。
 
該当の補助事業の手引きは、下のリンク(公式資料)のP36,37です。

https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/documents/hojyo_tebiki10.pdf


収益納付の計算式ですね。
まず、AからGまでの数値を特定しましょう。
 
A.補助金確定額
実際に貰った補助金の額です。
 
B.補助事業に係る今年度収益額
補助事業に係る本年度の儲けです。
企業全体じゃありません。
その事業の分だけです。
補助事業分だけ切り分けた収益等の算出は、毎年の「事業化状況報告」で行うんですが、コイツが面倒です。
 
C.控除額
これがキモ。
「補助事業に要した経費」から、補助金確定額と、毎年の収益額を差し引いていきます。
つまり、控除額は毎年減っていきます
最初に手出しした額から儲けを引いていって、今どのくらい残っているか、というイメージです。
 
D.事業化累計支出額
「補助事業に要した経費」と「補助事業が終わった後に追加で手出しした額の合計」です。
 
E.基準納付額
一番大事な式です。
(B - C) × (A ÷ D)
噛み砕いて言うと、
最初に手出しした額を超えて利益が発生している場合(B-C)に、
その利益を、総支出に占める補助金の割合に応じて(A÷D)納付してもらうという事です。
 
まず、B - C。
Bの今年度収益。
補助金の目標は、大体付加価値の増だったり、賃上げだったりします。
付加価値は、「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」
 
「補助事業をすると、人件費と減価償却費がかさむんだけど、営業利益がマイナスにならないようにした方がいいですよ。」
という話を前にしました。
人件費と減価償却費は、付加価値計算上はプラスですが、営業利益計算上はマイナス要素として働きます。
 
つまり、補助事業をやった後の数年は、その補助事業箇所の営業利益がプラスになるのは、結構な至難の業だ、という事です。
よっぽど儲からないと、「補助事業箇所の営業利益」はプラスになりません。
 
さらに、そいつから、当初に手出しした経費を差っ引いていきます(B-C)。
それがプラスにならないかぎり、つまり鬼のように儲からない限り、収益納付は0円です。
 
そして、A ÷ D。
全体のかかったお金に占める、補助金の額。
この式、絶対に1より大きくならないです。
最初の「補助事業に要した経費」がそもそも補助金より絶対に大きいので。
 
著しく儲かったとしても、収益納付では、納付額を「補助金額が貢献した割合」まで薄めてくれます。
 
F累計納付額
これまでに収益納付した額の合計です。
 
G.本年度納付額
E(基準納付額)とF(これまでの累計納付額)がA(補助金確定額)を超えるまでの間は、収益納付が続きます。
 
上記の算式から、以下の結論を得ます。
 
鬼のように儲かった分を、更に薄めて納付する。
これが、収益納付の正体です。
 
今、儲かる前なので、「えー?」と思うかもしれません。
でも、払う段になって、収益納付が必要になっている企業さんは、納付負担があまり気にならないレベルで、とても儲かっていると思われます。



(2)式に込められた思い

私見を述べます。
なんで、こんな面倒な式を立てたのか?
 
黒字額を納付させたら早いのに。
なぜそうしなかったのか?
 
多分、取りたくないんです。
 
収益納付自体は、「てきかほう」で決まっているので、やらざるを得ないです。
最近主流の「設備投資補助」は、私企業がその設備を使ってお金を稼ぐことを前提にしているので、「公の利益(公共の福祉)のために補助金を出す」という大原則から少しずれるんですね。
だからこそ、いっそう、収益納付はやらざるを得ない。
 
でも制度を作った担当者は、おそらく中小企業の窮状を知っています。
本音を言えば、お金、取りたくない。
 
その結果が、あの計算式です。
 
最初の方で、「B-C」で、「0になってくれー」という担当者の心の声が聞こえてきませんか?
 
元県職員の私には、聞こえます。
 
あいにく、補助制度の運用は外注されるので、その基本思想を踏襲する人はいなくなるでしょう。
しかし、そこには、中小企業振興を真剣に志した公務員の心意気があります。
 
ありがたく、その心意気に乗っからせてもらいましょう。


中小企業の成長を願う彼女
(AIで生成)


(3)おわりに

すみません、今日のはちょっと難しかったかも。
 
しかも、補助金が取れるか取れないかわからない段階の皆さんに、取れた後の話を延々と、、、
 
でもなぜか、気にしている企業さん、多いんですよね。
 
だから書きました。
 
収益納付を気にして補助金を取りに行かないなどというナンセンスを無くすために。
 
補助事業をやった結果、黒字体質になる!
大いに結構!
めっちゃ儲かる!
大いに結構!
そうなったら、いくらかお金を納付してね♪
 
成長基調に移行するために補助金を使うのでは?
大事なのは、御社が黒字基調になる事なのでは?
「国に一円もお金を納めない」事ではないのでは?
 
私は、収益納付を回避するテクニックには興味がありません。
成長したら、制度に基づいてたくさん納税するし、収益納付もする。
そんな姿勢で補助金と向き合う企業さんと、お付き合いしたいです。
 
今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。

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