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「連携」に必要な、たった2つの要素

ども、ならなすおです。
今回、中小企業さんに関係する情報になります。

私が紹介している「公的補助金」に関する情報は、主に経済産業省系が多いです。


補助金を、「企業年齢」という切り口で見ると、ざっくり以下のように分けられるのかな、と思います。
企業のそれぞれの段階に応じて必要になってくる「特別な経費」を補助するパターンです。
最近、こちらの切り口で補助制度が作られる割合が多いようにお見受けします。

[企業年齢と補助金]
・創業期
これから創業する、あるいは創業5年未満、といった若い企業向けの補助金。
小規模事業者持続化補助金の創業枠などです。

・既存企業の経営革新期
今ある企業が更なる成長を目指す場合に使える補助金です。
事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金などです。

・既存企業の代替わり期
2代目、3代目など、後継者に事業を引き継ぐ際に使える補助金です。
事業承継・引継ぎ補助金です。



また、補助金には、もう1つ系統があって、「新しい製品やサービスを作って売っていく際」にかかる「特別な経費」を補助する、というパターンです。
中小企業向け補助金の歴史的には、、、とかいうと長くなりますし、企業さんもそんな話は聞きたくないと思うので省略しますが、一昔前まではこちらの補助制度の方が多かったです。

[新製品・サービスを市場に出すための補助金]
・研究開発期
大学等で行われている研究を「さらに進めていくとすごく社会に重要な製品になるんじゃない?」とかいう段階で使う補助金です。
売るまでの道のりが遠いし、資金もかかるので、補助上限は大きく(数千万円など)、補助率は高めです(2/3など)。

・事業化検討期
研究を終え「よーし、本格的に作って売っていくぞー」というタイミングで使う補助金です。
市場調査、製品・サービスの製造、初期の販路開拓など、幅広い使途が認められ、補助上限は大きく(数百万円~数千万円)、補助率も割と高めの制度が多いです(1/2~2/3)。

・販路開拓期
良い製品・サービスはもう作ったから、後はバンバン売っていくだけ、というタイミングで使う補助金です。
展示会出展補助などですね。
補助上限は小さく(数十万円~数百万円)、補助率は低いです(1/3~1/2)。


で、どちらの系統の補助金にもちょいちょい関係してきて、割と面倒くさい問題なのが、「連携」です。

産学官連携、地域連携、企業連携などです。

これは、「ジャンルの違う者同士、資金の乏しい者同士が力を持ち寄って新しいことをやった方が社会的に効率化良いよね」という政策担当者の思いを反映した制度設計で、「効率的である」という意味では全くその通りなのですが、、、

現場では、連携は、残念ながらあんまりうまくいきません、、、

本稿では、私の見てきた「連携」がなぜうまくいかなかったかを考察し、これから「連携事業」に取り組もうとしている企業さんの参考にしていただきたいと考えています。

話に出てくる「契約」については、かなり難しい話で、弁護士さんの助けを得られれば一番いいのですが、そうでない場合は、地域の支援機関やコンサルに相談してください。

今回、ちょい長いです。
5,000字超えちゃいました。
お付き合いいただけると嬉しいです。

それでは、本編、スタートです。


(1)「連携」が内包する難しさ

企業と大学、企業同士、企業と地域(商店街)などの連携事業、「それぞれが強みを出し合っていいものができそう」と思われます。

でも、ごめんなさい。
私、連携事業にあんまりいいイメージがないです。
というか、成功したのをほとんど見たことがないです。

体感では、9割以上が、不成功に終わっているのではないかと思います。

なぜか?

私の携わった連携事業の経験から、要因をいくつかピックアップしてみます。

①ゴールのイメージが合わない

特に大学と企業が連携する場合などでは、それぞれが「何を目指すか」が違っていたりします
事業実施スケジュール、成果の公表の仕方、製品販売時期などを前もって決めておかないと、後で必ず揉めます。


②旗振り役に負担が集中

これは企業内のプロジェクトでもありがちなやつですが、「企画者」「プロジェクトリーダー」「優秀なスタッフ」などに業務が集中し、他のメンバーがほとんど何もしなくなってしまうような現象です。
連携事業では、いろんなタイミングで「メンバー全員のGOサイン」が必要になったりするのですが、何もしていないメンバーに限って、大事な所でブレーキをかけたりします、、、
動いてる人は動いてる人で、「何で俺だけ、、、」という不満が募ります、、、
こうなると、プロジェクトの失敗はほぼ確定です。


③労力と収益「取り分」決め

例えば、「凄いんだけど売れてない製品」を製造している企業と、「WEBマーケティングの得意な企業」がいて、ネット販売の連携事業を実施したとしましょう。
頑張ったのは、売るための仕組みを必死で作ったマーケ企業。
しかし、売れるようになると、製造企業が、利益のほとんどを求めてきたりするんです。
経費の配分、労力の配分、利益の配分は、最初にきっちり決めておかないと、儲かれば儲かるほど、「ドロドロの揉めごと」に発展します。

連携協定書にサインする彼女とパートナー

(AIで生成)


(2)産学官連携

大学と企業が連携する場合、両者の「やりたいこと」が違うため、初めに十分話をしておかないと、100%揉めます。

①企業の連携意図

大学さん(教授、ゼミ等)の持っている先進的なビジネスシーズ(商売の種)を事業化に至らしめ、利益を得たい、と考えます。
研究活動に資金を出したり、実験の場を提供したりすることで、特許を共同で取得したり、使用権を優先的に取得したりして、商売を有利に進めたいと考えます。

・契約
出来れば特許権者に名を連ね、将来の事業拡大も主導したいです。
・スケジュール
想定販売先への営業を早く行いたいので、何事も前倒しで進めたいです。
・情報公開
関係者にはいち早く情報を出し、研究内容のすごさをアピールしたいです。


②大学の連携意図

教授やゼミ生の論文に記載した理論等の「仮説・検証」に企業等の協力を得たいと考えます。
ゴールは、研究を進捗させ、論文を書き、評価を集めることです。
実験のフィールドや、研究にかかる資金などを、企業から、あるいは経産省系の補助金から得ようと考えます。

・契約
研究は専ら大学がするので、第三者はなるべく開発者に入れたくないです。
・スケジュール
実験は慎重に行わなければいけませんし、最もいいタイミングで論文を出さないといけないので、「なるべく早く」というスケジュール感ではありません。
また、研究主体がゼミ生の場合、修士論文等のスケジュールに左右されます。
・情報公開
新規特許の場合、内容が第3者に知られている(「公知」と言います)と非常にまずいので、特許公開など、タイミングを慎重に図って情報を出していきたい、と考えます。

ゴール設定が大きく違うので、初期の話し合いでその認識をすり合わせる作業がとても大事です。

産学官連携の協議

こんなに睨まなくていいけど、協議は慎重に

(AIで生成)


(3)複数企業連携


組織文化が似ているはずの「企業連携」も、よっぽど慎重にやらないと、うまくいかなかったりします。

①業務負担の差異

これは大きいです。
特に最初に書いた「旗振り役に負担が集中する」ケース。
補助金をもらっている場合は特に、事務処理、計数管理、スケジュール管理など、管理者の時間コストは相当大きくなります。
補助金申請時に経費を割り振る際は、「想定業務量」も考慮に入れておいた方がいいです。

また、出来上がった商品を売るケースなどでは、マーケティングを担当した会社に多くの分け前が行きがちですが、製造業者は、補助事業期間前に相当なコストをかけて商品を開発しています。
そのコストは、補助金では賄えませんが、商品販売後の分け前の配分にはきっちり反映されるべきです。


②貢献認識の差異

「うちは頑張っているのに、あそこは何もやってない」とか、そういうやつです。
割と、うんざりします。
連携先を卑下しても、得する人は一人もいないです!
時間も無駄だし、成功確率は減るし、完成形のクオリティを下げるし、いい事は何にもないです。
初めに、「どこの会社が、いつまでに、何をやる」っての、決めときましょう!


③業務の都合

これは、申し訳ないんですが、しょうがないところがあります。
例えば、製造業者さんが別事業で忙しくなり過ぎて、連携商品の増産に対応できないとか、そういうやつです。
連携初期に、お互いに、「起こりうる非常事態」を出し合って、あらかじめ心の準備をしておくしかないんですが、それでも想定外、という事態もあります。
どれだけお互いを信頼できているか、という話になってきたりします。

一人だけ頑張って、他の人は遊んでる図

気楽すぎて、空飛んでるし、、、

左の男子は、態度悪いだけかも

(AIで生成)


(4)地域連携


私、20年近く前に、「地域資源活用促進法」という法の運用を県で担当させていただいた時に、「地域資源(食物とか工芸品とか観光地とか)を使って地域を活性化しよう!」という取組を山ほど応援したんですが、生き残った取組は数えるほどです、、、
連携事業のほとんどは消えていきました、、、

なぜか?

必要な、たった2つの要素が、欠けるからです。

それは、↓です。


①旗振り役のコミットメント

地域活性化事業の旗振りを担当するのは、域外から来た若い方だったりするケースが多いです。
そういう人、結構な確率で、途中で飽きちゃうんですよね、、、
んで、地元に帰っちゃう。
若しくは、ちょっと成功して名を上げたら、東京に行っちゃう。
地域には、「あの頃ちょっと話題になった取組」「一時期テレビに出た取組」の残骸だけが残る、、、

「有名コンサルが地域活性化をプロデュース」とかだと、もっとひどいです。
セミナーで適当な事を言って、プロジェクト実施のお金だけ持って帰って、成否とか一切関係なし。
・・・全部ではないですが、そんなコンサルが山ほどいるんです、、、

断言します!
連携事業の旗振り役に必要なのは、能力ではなく、コミットメント(関与し続ける覚悟)です。


②協力の姿勢

地域の商店街とか、観光地の店舗とか、そういう皆さん。
活性化事業を盛り上げようと、初期は協力的です。
ですが、数年たつと、忘れられたり、「え?まだやってるの?」と言われたりします・・・
これは、旗振り役の気持ちを大きく削る仕打ちです。

連携事業は、そして地域活性化は、絶対に、ぜーったいに、「一日にして成らず」です。
早くて5年、長ければ10年以上かかります。
どうか、長い目で、資金的、人的協力をし続けてください。
やり続けて、成果が出るかどうかは、すみません。正直わからないです。
でもやり続けなければ、途中でやめれば、それは確実な失敗です。

諦めず、出費を抑えて、チャレンジし続ける姿勢が大事なのかな、と思います。

みんなで知恵を絞って、商品開発

(AIで生成)


(5)うまく進めるために


これはほぼ(4)に書いたこととイコールなのですが、コツみたいなものをいくつか示したいと思います。

①参画者個々の本業を強く

誰かが「補助金頼み」で、補助事業が終わったら稼ぎがなくなっちゃう状態だと、その時点で連携は崩壊してしまいます。
「補助金をもらっている間はこんな感じ」「補助事業が終わったらこんな感じ」という認識を共有し、すべての参加者が、「本業だけでも生活できる」という状況にしておけば、事業の継続確率は大幅に上がります

②誰かが抜けるリスクをヘッジ

大学・企業のキーマンの異動、商店主の引退などが発生すると、連携事業は「突然死」してしまいます。
そうならないよう、各組織から、権限を持つ人が複数名参画し、「一人抜けても何とかなる」体制を作っておく必要があります。
なお、「旗振り役」については、初期の成功を収めるまでは、同じ人が継続してやった方がいいです。


③負担ではない「交流」

地域の会合とか、連携体のミーティングとかが負担になってしまうと、連携体はだんだん縮小し、自然消滅します。
参画者が楽しく交流しながら継続していけるような工夫が必要です。
地方自治体さんも参画するのであれば、定期的に自治体主催の「交流会」を開催したり、公式動画で取り上げたり、テレビに出してあげたりするだけで、モチベーションの持続に大きく貢献します。
「自分ら、カッコイイな」と思わせてくれる仕掛けがあると、連携事業の持続にはプラスかな、と思います。


(6)おわりに

私、これから、連携事業の旗振り役、バンバンやりたいです!
中小企業さんのお役に立つことで、企業を元気にし、人を元気にし、ひいては地域を元気にしたい。
それは、公務員時代から変わっていない、私のやりたいことです。

そのためには、(5)の①で書いたように、弊社が本業のみで生活できる強さを、まずは持たなくてはなりません。

頑張らないと、いけないです。

頑張ります。

ちょいちょい休憩しながら、ちょいちょいお菓子をつまみながら、頑張ります。

ブログ1本あがったんで、ちょい休憩します。

今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。

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