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中小企業のDX-05「AI検討編」

ども。ならなすおです。

この記事は、中小企業さん向けになります。
DX体験記、「AI検討編」です。

これまで、私の記事では、DXについて、「データを活用する業務を新しい技術を使って改善していく事」と定義してきました。

取り上げてきた、「IoTタグ」「センサー」「カメラ」「ロボット」等は、個々の現場での「個別業務最適化」に資する解決策が多かったように思います。
ここまでは、実は「人がやっていた業務をデジタル化する」という話です。
DXは、それで止まってしまうのは、実はもったいないんですよね。

いろんな現場で、デジタルデータが溜まっていく
それを、個々の現場でなく、会社全体でうまく使って、次の段階「真のDX(デジタルトランスフォーメーション)」に繋げていく取組がすごく重要です。
会社がまるで別物かのように劇的に変わっていくんです。

真のDXとは、各企業の「ビジネスモデルそのものを変革したり生み出したりして人々に新たな価値を提供すること」です。
要は、全社的に考えないといけないやつです。

今回取り上げる「AI活用検討」は、真のDXを検討する作業に近く、個別業務の最適化とは「検討の質」が違います

だから、進まない、、、
中小企業さんに、浸透していかない、、、

私は、2023年度、中小企業のAI活用に関するプロジェクト・マネージャーというのをやっていて、その難しさを痛感しました。
その難しさと、「こうすれば活用が進むのでは?」という所感を、本稿に記していきたいと思います。

5,000字超えちゃいました。申し訳ない。
本編、スタートです。


(1)参考になるサイトを紹介

3つほど参考になるサイトを紹介しておこうと思います。
私が紹介するのは、公的機関のサイトがほとんどです。
民間さんにはもっといいサイトがあるのかも知れませんが、私にはそれを見極める力がないので、「公的機関なら大丈夫だろう」と思って見ていますし、紹介しています。
そういうレベルであることを、ご承知おきください。

①IPA「DXスクエア」

IPAというのは、「独立行政法人 情報処理推進機構」の略で、経済産業省の外郭団体です。
世の中にインターネットが普及する前から、産業界や官公庁と連携して、情報処理やセキュリティに関する研究や試験などを行っている組織です。
「情報処理技術者試験」や「ITパスポート試験」などを実施している組織です。

このサイトは、AI検討ではなく、DX全体の話をしているサイトです。
DXの始め方ポイント、中小製造業や建設業のDX推進事例などが載っていて、参考になります。

②経済産業省「中小企業のAI活用促進」

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/AIutilization.html

経済産業省さんのサイトです。
ここで無料でダウンロードできる「AI導入ガイドブック」というのが、コンサルの私にはとても参考になりました
「コンサルの私には」とかいう表現、とげがあるでしょ?(笑)。
このガイドブック、製作者は「BCG ボストンコンサルティンググループ」(業界では「ボスコン」と略します)さん。大手のコンサルファームさんです。

これに書いてあることをやれたら最高なんですが、「そんな優秀な奴、いなくね?人手不足やし」と片田舎の零細経営コンサルタントは思ってしまうのです。

じゃ、どうするか?

このガイドブックの文脈を、地域中小企業さんにも実践できるように翻訳し、助言するのが、我々「地元のフリーコンサル」の仕事だと思っています。


③IPA 「AI (Artificial Intelligence)の推進」

前出のIPAさんの、AI活用に主眼を置いたサイトです。
こちらに載っていた「具体的なAI導入パターン」について、次章で中小企業さんの導入可能性を検討していきたいと思います。

概念実証(Proof of Concept ぽっく)と言えばこの人

すきすきすー(それは細川ふみえ)

(AIで生成)


(2)AIが使える可能性

IPAさんが例示した「AI導入パターン」について、従業員50人未満ぐらいの中小企業さんが検討したらどんな感じかな、というのをシミュレートしてみたいと思います

①手書き文字の認識

AI-OCRというサービスが有名です。
手書き文字を認識したり、文字が書かれてあるファイルのタイプを統一(全部グーグルDocsにする、など)したりできます。

これは本当に、「製造課だけ」とか「総務課だけ」といった導入をするのは無駄なので、「組織内の情報の流し方」「稟議の仕方」などとセットで導入を議論するといいと思います。

例えば、「営業が取ってきた発注書を、経理、調達、製造の各部に速やかに流し、それぞれの業務状況を一元管理して、納期を劇的に早める」といった事ができるかも知れません。


②問い合わせ対応

チャットボットみたいなものに問い合わせを任せ、AIを使って学習させるやつでしょうか、、、
正直、あまりうまくやれているケースを見たことがないかも知れません。
中小企業さんの現場では、問い合わせ、クレーム対応はまだ人力で、マニュアルでやった方が効率的にも顧客感情的にもいいのではないかな、と、2024年現在、思っています。


③会議録作成・要約作成

これはすぐやったら劇的に時間効率が良くなるかもしれません
録音を生成AIに認識させ、文字起こし&要約をさせます
この精度が、ここ数年で劇的に向上しています。

担当がテープを聞きながら文字に起こす手間、内容が正しいか確認する手間、要約する手間、、、
優秀なAさんに、何時間この不毛な作業をさせるんでしょう?
その間に営業をしたら、Aさん、200万ぐらい稼いで来ません?
生成AIを全社で使い、作業分担と情報集約の仕組みを作れば、この作業にAさんが拘束される時間は10分の1以下にできそうです。


④文書作成、確認

文書作成は生成AIの得意分野ですよね。
ハルシネーション(嘘を書いてくる)ヘの注意は必要ですが。
あと、文章の間違いチェック、言い回しのパターン提示なんかも、AIはめっちゃ得意です。

「社外に出す文書を、誰が作り、どうチェックし、誰が責任を取るか」というルール検討と一緒に、すぐ導入した方がいいやつです。


⑤自動操作、自動運転

機械操作や運転をAIに任せる件については、、、
今のところ機械メーカーさん、自動車メーカーさん、SIerさんに任せときましょうか。


⑥診断、検品、分類

ここ、2番目に大事かも知れない。
「何かものを見て判断する」という作業は、カメラ撮影データを用いてAIに学習させることで、人手から機械に任せられる可能性が高いです。
しかし、「判別しやすい画像を撮る環境」(光学系とか言います)、「AIを使う前に画像を解析すればできる事」(画像処理という領域)、「撮った画像を判別しやすいように加工する作業」(アノテーションと言います)など、いろいろと検討すべきことがあり、お金も結構かかります。
ただ、ここのAI化は多分避けて通れない時代になると思うので(人手不足だから)、いずれやるべきものと覚悟しておいた方がいいかも知れません。


⑦商品等レコメンデーション

⑧マッチング

この2つは、一緒に検討しましょう。
ここが1番重要だと思います。
会社にある仕入れデータ、販売データ、顧客データ、製造してきた図面データ(レガシーデータと言います。)などを活用できれば、そしてAIに学習させることができれば、今後の仕入、製造、販売などをめっちゃ効率的にできる可能性があるんです。
「昔のデータは手書きだしなー」とかいう問題があると思います。
なので、いきなりベンダーさんやSIerさんにオーダーするのは、お勧めしません。
でも、ここができたら、本当にすごいことになります。
生産性、売上、10%や20%、平気で上がります。
ここがDXの本質だと思います
是非、全社で検討してみませんか?


⑨経路探索

これは、物流さん、タクシーさん、廃棄物収集・運搬さんなどが少し大掛かりにやるやつですかね。
道順(経路)をAIに学習させて、その結果を現場に反映させることで、時間と運賃を浮かせていくという取組。
本稿で対象にしている従業員50人未満ぐらいの事業所さんでは、システム開発・導入の費用対効果をプラスにできないかも知れませんので、本稿では割愛します。

PoC中のアノ人

(AIで生成)


(3)先にやるべき事

前章では、AI導入の可能性を検討してみました。
もしからしたら、「お、うちの会社、使えるかも」と思った方がいらっしゃるかも知れません。
そんな方に申し上げたいです。
AI導入に動く前に、やっておくべきことがあります。
ここは、ベンダーさんやSIerさんに相談しても教えてくれないと思います。
だって、御社の話です。外部の人間が知る訳ないです。

御社の状況を整理したうえで、業者さんに相談すべきです。
同業の先輩などがいれば、AI導入事例など、聞いてみるといいと思います。
そういう知り合いがいなければ、経営コンサル。
私は、この辺の「現状を整理し、未来に向けた計画を練る」という作業の専門家です。


①これまでの経営の振り返り

まず、データの扱いを検討するわけですから、「これまでどういうデータの使い方、流し方をしていたか」を振り返っていただきたいです。
稟議のシステム、部署ごとの情報作成と管理、部署間の情報伝達、、、
ここが変わっていかないと、AIを導入しても劇的な効果は出ないかも知れません。


②データの所在・使われ方確認

次に、今あるデータの棚卸をします。
手書き、エクセル、旧データベース、、、
どこに、どんなデータがありますか?
それは、今でも役立つデータかな?
使えるデータは、可能な限り新しい仕組みに取り込みたいです


③これからどうなっていきたい?

ここ、すごく大事です。
社長か、現場か、どちらかが「今のままでいいや」と思っていたら、DXもAIもうまくいきません
「今、不便だし、非効率だから、変えていこう!」
という合意を作り、「そのために必要な協力はする」という社内の意識改革をやってほしいです。

現場のAI化にも関与し始めたあの人

(AIで生成)


(4)ぶっちゃけ、高い?

正直に言います。
それなりの値段、します。
何がそんなに高くなっちゃうのかについて、↓にちょっとだけ例示します。
大切なのは、「費用対効果を試算できる計画にする」ことです。
出費が高かったとしても、効果が大きければプラスです。

①データ移行

古いデータを、新しい仕組みの中で使えるようにするための経費です。
手書きデータをテキストデータに「打ち直し」とかしていたら、ものすごく高くなってしまうイメージ、おわかりいただけるかと思います。
いきなりベンダーやSIerに話をすると、そういうめっちゃ高額な見積が出てくるので、社内で検討したうえで、費用のイメージを持って、業者と話します。


②下準備

画像検査AIシステムを入れる場合、学習用のデータ画像、あるでしょうか?
そのデータは、スムーズに学習できるほど、綺麗に並んでいますか?
撮影場所は、充分に明るいですか?
カメラを設置するためのコンセントは近くにありますか?
データを転送するためのWi-Fiはありますか?

AI導入前に考えるべきこと、結構あります。

引っ越しと一緒かな。
お任せパックって高いですよね?
面倒だけど自分で荷造りをすると、安くなる。
AI導入の場合はさらに、お任せパックにして会社側の危機意識や学習意欲が足りていないと、確実に失敗するので、「自分事」として下準備に向き合っていただく必要があります

画像アノテーションに励む彼女

自分でなく製品をアノテーションしよう

(AIで生成)


(5)おわりに

今回、結構厳しい話をしてしまいました。

では、これまでの話、
・タグ
・センサー
・カメラ
・ロボット

は、無意味な議論だったのか?

いえいえ、そんなことはありません。

今までのやつは、「とっつきやすいDX」です。
そして、取り組んだ結果として、社内に「データ」が残ります

それを有効に使っていくのが「真のDX」で、そのために社内検討が必要なんですよね。
そして、新しい仕組みを考えるうえで、AIは、すごく使えるんです。

じっくり検討して欲しいです。

そしてその検討に当たっては、先輩同業者や、仲良しのSIerさん、経営コンサルなど、「詳しい知人」にも入っていただくといいです。

次の20年を生き抜いていくためには、DXは必須です。
そして、DX実現の主要アイテムの1つが、AIです。

どうか皆さん、今のうちに、少しずつ、検討を始めてみてください。
分からないことは、私でよければ、知る範囲でお話しします。

読んで頂いた中小企業の皆様のご発展をご祈念申し上げます。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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