見出し画像

中小企業のDX-03「IoT カメラ編」

ども。ならなすおです。

この記事は、中小企業さん向けになります。
DX体験記、IoTの「カメラ編」です。

カメラ映像のリアルタイム共有やクラウドでの解析は、前からIoT(Internet of Things)の取組としてメジャーでしたが、最近のAIブームでさらに注目度を増しています
それで、びっくりするほど儲かっているのが、NVIDIAさん(GPUというのを売ってます)。

カメラが保存する画像、動画データは、「サイズが大きい」という特徴から、計算、通信、保存のいずれにも負荷をかけます
その負荷が「コスト」になるので、サービス価格もどうしても高くなってしまいます
ですが、これからの時代、なくてはならない存在になっていくのは間違いないです。

DX体験記IoTの3回シリーズ最終回は、そんな「カメラを使ったソリューション」を紹介していきます。

それでは、本編、はじまりです。

(1)カメラの特徴整理

カメラは、現在、いろんな所で、いろんな使われ方をしています。
本稿では、まず初めに、これからカメラの活用を検討する中小企業さんのために、カメラの特徴を整理しておきたいと思います。

①カメラで把握できる情報

IoTシリーズの第2回「センサー編」では、各センサーが計測できる情報は原則として「1つ」でした。
しかし、カメラは、「一度に様々な情報を取得できる」という特徴を持っています、

・色
モノの色です。
「ちょっと茶色くなってたら腐ってるかも」とか、「この青色の設定値を外れたら不良品」とか、様々な判定に使えます。

・明るさ
明るいか、暗いかについても、もちろん判定できます。
光センサーに取れない情報としては、「いつもは置かれていないモノが置かれていて、視界が遮られて暗い」などという場合があります。
障害物がカメラに映るので、どけに行きます。

・設置地点の異状
障害物の検知のように、「カメラを置いている場所の周囲の異状を知る」ことができます。
「在庫の段ボールが倒れている」とか、「火事だ」とか、「電灯が切れている」とか、普段と違うことが起きていることが、カメラを見ればわかります。

・人の動き
「ベテランの作業」と「若手の作業」をカメラで撮影して比較することで、社内研修用の教材を作れたりします。
また、「機械が作業してる間、人間は暇こいてる(「手待ち」と言います)な」とか、そういうのもわかります。

・人の異状
「いるべき場所に作業員がいない」「作業員が倒れてる」「変な人が来てる」といった異状は、カメラを見ればすぐわかります。

・モノの動き
「部品製造機械が順調に作業しているかどうか」「これから作業する部品が作業台にちゃんと補充されているか」といった情報もカメラで把握することができます。

・モノの異状
出来上がった製品に不良がないか検査したり、機械に故障が発生していないか確認したり、といったことにもカメラが使えます。

カメラを確認するIoT女子
この現場、カメラ多過ぎ。コスト高そう・・・
(AIで生成)


②カメラを使ってできること

・記録する
当たり前ですが、撮影し、それをファイルに残します。

・判定する
撮影画像をもとに、「不良品の判定」や「異常の検知」などを行えます。

・分析する
観光地に設置されたカメラは、「季節ごとの人通り」「通っている人の男女の別」などを分析していたりします。こうした分析は、AIを使って機械学習をさせることで可能になったりします。


③だから高くなる

カメラと温度センサーで、「扱っているデータの中身」を考えてみましょう。

カメラの場合、データは「動画ファイル」です。
一日記録しただけでも数ギガの容量になります。
また、検査などの高度な用途に使うには、高精度のカメラを使わないといけません。
撮影場所の光の調整等も重要になってきます。
そして、分析しようとすると、そのバカでかいデータを、クラウドにサクサク上げていって作業させなければなりません。
コンピュータは、バカでかいデータを高速で処理しなければなりません。

余談ですが、ここで登場するのがGPU(Graphics Processing Unit)です。
NVIDIAさんが作ってるやつです。
ものすごくざっくり言うと、普段我々がパソコンで使ってるCPU(Central Processing Unit)は「難しい事をきっちりやる装置」です。
GPUは、「簡単なことをめっちゃ高速でやる装置」です。
画像を扱う領域は、「簡単な計算を高速でやる」世界なので、GPUが重宝される、という訳です。

さて、話を元に戻して。

温度センサーで計測するデータは、「温度」と「タイムスタンプ」です。
9:25:30(9時25分30秒) 24.0(24.0℃)
9:25:40(9時25分40秒) 24.1(24.1℃)
9:25:50(9時25分50秒) 24.0(24.0℃)
という感じで、テキストデータが溜まっていき、ある程度溜まるとコンピュータに送信します。
通信も、解析も、めっちゃ小さいサイズで大丈夫です。
通信回線、細くて大丈夫ですし、GPUはいらないです。

「カメラ」と「温度センサー」の扱うデータの質の違いを、ご理解いただけたかと思います。

画像、動画データは、
・保存に大きなストレージ(保管場所)が必要
・撮影環境、カメラの質にこだわりが必要
・データを通信させるのが大変
・解析、分析させるのに大きなGPUが必要
といった理由から、ソリューション(経営上の問題解決策)を作ろうとすると、値段が高くなります

導入は、慎重に検討した方がいいです。

小型カメラを設置するIoT女子
そんなにコソコソしなくてもOK
(AIで生成)


(2)人流の把握・分析に

ここからは、カメラが実現してくれそうなソリューションをいくつか紹介したいと思います。

まずは、人流の把握、分析です。

皆さんが小売店の店長をやっているとイメージしてください。
店内のカメラに、
・時間ごとの客数
・季節ごとの客数
・夏祭り時期の客数
・お客さんの年代
・お客さんの男女の別
などの情報が入っています。

こうしたデータを解析してデータベースを持っておき、レジの売上データと併せて分析すると、「気づかなかったけど、夏祭り時期にG商品がめっちゃ売れる」といった気づきが得られるかもしれません。
この気づきを、G商品の仕入れや、夏祭り時期のキャンペーンに活用します。
売上アップが期待できます。

注意しないといけないのは2点。

・個人情報
カメラデータには個人情報が入るので、取扱いに注意し、不適切な用途に用いないこと。

・コストパフォーマンス
カメラデータを解析して情報を取り出すサービスはかなり高額なので、「元が取れるか」つまり費用対効果分析を前もってやってから導入すること。

私の感覚では、個別店舗でカメラソリューションを入れるのは多分割高なので、複数の店舗が協力して(商店街振興組合単位など)導入を検討するのがいいのかな、と思います。

カメラデータを解析する店長
(AIで生成)


(3)製品検査に

外観検査(見た目で良品と不良品を見分ける)というやつです。

昔からあるのは、「画像処理」という技術です。
検査しやすい画像にしたり、不良品判定のポイントを特定したりします。

さらに、検査データをAIに「機械学習」させる取組も進んでいます。

ここで注意しないといけないのは、AIは「学習すればするほど自動で賢くなる」という訳でもない、ということです。
学ばせ方、学習データの質など、検討を重ねる必要があります。
つまり、高くなります

最近では、特定業界の「学習済みデータ」を流用するような製品も出てきています。
これだと、自社で膨大な参考データを作成するのと比べて、安くなります。

外観検査の業界は、人の頑張りに依存してきた会社が多いと思います。
いわゆる「神おばちゃん」です。

神おばちゃんはどんどん定年を迎えています。
できれば、神おばちゃんがいるうちに、彼女の抜けた穴を埋められるようなソリューションを検討しておいた方がいいです。

カメラを用いた外観検査
(AIで生成)


(4)異常検知に

工場などでは、「大問題ではないけど、ちょっとした原因で機械が止まっちゃった」といった事が結構あります。
「チョコ停」と言います。

普段軽視しがちなチョコ停ですが、積み重なると「実は工場の稼働率を5%下げていた」なんてこともありますし、大きな故障の前触れだったりもします。

最近の工場では、「人がほとんどいない」という所も多いですが、そういう工場でチョコ停が発生すると、「しばらく動いてないのに誰も気づかない」という事態に陥る恐れがあります。

該当の機械に全てセンサーを付けるのが難しかったりする場合は、カメラで現場を取っておき、「こんな状態になったらアラームを鳴らす」といった設定をしておくことで、チョコ停に伴う稼働停止時間を最小にすることができます。

もちろん、夜間の「機械だけに作業させている時間のモニタリング」や、防犯目的でも使えます。
(暗いところで使う場合は赤外線カメラと併用したします。)

この現場は監視にコストをかけ過ぎ、、、
(AIで生成)


(5)匠の技の伝承に

日本の中小企業は、人手不足と合わせ、「優秀なベテランが定年退職し、後継者がいない」問題が深刻なのではないかと思います。

こうした技能継承問題を、カメラを使って解決しようとする取組があります。

ベテランの動きを撮影し、その特徴を把握・記録しておいて、
・若手が学習できる教材を作る
・若手の作業を撮影してベテランの動きと比較する
といった取組です。

これは、AIを使わなくても、スマホで頑張ったらできる場合もあるかもしれません。

ただ、匠の技というのは、「カメラに映ったとおりにやれば完全に模倣できる」というものでもありません

「再現性」という点ではまだまだ課題がありますが、現代日本の中小企業が目を背けてはならないテーマですので、少なくとも「ベテランの作業風景を撮影して残しておく」ぐらいはやっておくと、後々使えるのかも知れません。

気が散ります
(AIで生成)

(6)おわりに

ちょっと前までは、画像検査とか、現場データのカメラ保存といった取組は、高額過ぎて中小企業には手が出ませんでした。

しかし、最近のAIの台頭で、価格が急速に下がってきていると思います。

個人的には、2024年現在「まだちょっと高いのかな」という気がしていますが、これから、中小企業にもカメラソリューションを検討してもらう時代が必ず来ます

「あ?カメラ?無理無理、高いから」と秒で諦めてしまうのではなく、少しずつ検討を始めてみてください。

「こんな使い方、あったらいいな」
からで、全然OKです。

それは、もしかすると、「AI技術で安価に実現可能」なソリューションかも知れません。

さて、3回シリーズでお送りしたIoTの解説も、そろそろ終わりです。
一番言いたいのは、「データを持ってさえいれば、後々使えるかも知れない」という事です。
高額なソリューションは、今は買えないかも知れません。
でも、データを使いやすい形式で残す取組については、始められるところから始めてみてください。

数年後、それが御社を救うかも知れないです。

ご覧いただき、ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!