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【開発秘話】オリジナル版開発秘話20

女神の塔 ~MSXグラフィックを突き詰めた!~

ついにやってきました。ゲーム中、後半へのターニングポイントでもあり、今回グラフィック的にも曲的にも一番のお気に入りの女神の塔です。
絵を美しく見せるために必要な要素は「光」だと思ってます。いくらMSXのグラフィックが貧弱だといっても、この「光」を感じさせる事ができれば美しい絵ができると考えておる訳です。
無駄にステージの多いこのゲーム、ここはいろいろとグラフィック案があったんですが、後半ステージという事もあってグラフィックが決定するまで時間がかかりました(放置していたという意味)。いつのまにか巨人族が作った塔という設定が出来上がっており、遺跡風の中に突然SF風ってのは今となってはありきたりとも思いますが、やはり演出としても統一された世界観に異質な世界観ってのは盛り上がりますから。
そんな流れで当初は白く光るようなイメージだったものをSF系でいく事に。そしてここがミソなんですが、ステージ全体が下から光を当てられたように描きました。女神像が奇麗に描けてご満悦です。しかし先に作っていた滅びの塔がすでにSF風で作ってあり、同じネタは使えないなーという事で滅びの塔のSFテイストを消し去りました。名残はありますけどね。

さて、何度も言いますけども我々、というか俺は思いつきでどんどん作業を進めるタイプの人間です。マップグラフィックを描きながら思いついたネタを深く考えずに採用してしまいます。こりゃ(MSXグラフィックでは)斬新だろ!と思って導入したのがモニターらしきものの砂嵐。これはいい感じでした。ここでやめておけばいいのに、「モニターってことは何かの映像が流れていた訳だな。何が流れていたのか?巨人が空飛ぶ塔を作る教本ビデオでも流してたか、どこかから指令を出す人が映し出されてたかのどっちかだな!」ということで人らしきシルエットが写るモニターまで描きました。設定?そんなもの飾りです。前向きに考察するならば、この水で空飛ぶ塔は宇宙の生命体とコンタクトが取れるところまで進んでいた計画だった……ぐらいに思っておけばいいんじゃねーの。
水で飛ぶ。ここは少々まじめに考えたこだわりがありまして、ここの塔より先に作られた滅びの塔。これは溶岩の熱を使って塔を飛ばそうとしたのですが出力不足で失敗したという設定です。そして第2弾の女神の塔は水を分解して水素燃料で飛ばす事にしたという設定です。技術進歩しているという事ですな。ではなぜこの塔は飛ぶ事なく終わったのか。知るかそんな事。好意的に考えれば、完成直前にサキトが反乱したとでも思いねぇ。
深く考えているようで表面的にしか考えていないGR3 PROJECT!3人でGR3 PROJECT!どうぞよろしく。

ギミック的にもこのフィールドはお気に入りです。イレギュラーな位置にあるゲートをくぐる事でたどり着く異世界観。しかしながら遺跡内の散策中に一画面だけみる事ができるこのじらし感。そんな画面に一瞬だけ現れるオヤジ感。この通行パイプがやりたいだけに作った背景マスク処理の無駄感。たまりませんな!これだけでメシが3杯食えるぜ。
空の水源の裏面という事もあり、縦に長いフィールドで上に進むタイプということで(塔があるからなんだけども)、その頃出来上がっていたかぎ爪アクションを取り入れて塔を苦労して登る感が大幅アップ!
いやらしいよね、あそこ。ヴィマーナはいいとして、波状に飛んでくるやつと見えないやつ。この辺で慌てると下までさようなら。今の時代、この手のストレスたまるようなアクションは少なくなってきましたが、腕が上達する事で乗り越えられる障害ってのは解いた時の喜びは極上ですわな。
最初は塔の真ん中に問答無用で落とされる落とし穴があったんですけどね。これは飛行機模型を取る時だけにしました。ちょっと失敗だなーと思ったのは、飛行機模型がわりとすんなり取れてしまうところ。一度上まで登って女神像に邪魔されて戻ってくると取れるようにした方がよかったなぁ。いまいち、女神像が消えるって言うギミックをうまく見せられなかったのが残念。

他にもここは大天秤が鎮座してますね。duplexさんのアイディアです。あれで一部屋使っちゃうので頑張って密度を上げたんですよ。右と左で塔の登り方が変えられたのはうまくいきました。あと賢者がいたり、俺のMSXが置いてあったり、鍵妖精&伝説の樹、女神像が消える前と後で取り方が変わるA1スピリットやら、細かいながらも豪華な仕掛けが詰まってます。そのわりにマップの隠し方が簡単すぎますわな。いやね、もうこの辺りになると地図ごときで複雑な仕掛けを組んでも「別に地図いらね。」と思われちゃうんじゃないかと思いましてね。

敵はなんだっけな。各フィールドの敵は初期段階で一斉に考えて決定したので、開発期間が長くなると「なんかやっぱりものたりねーよ。」と思うようになっちゃいます。その頃既に開発期間がズルズルとのびているのを憂慮し、「これ以上、仕掛けや敵はできるだけ増やさないようにしましょう。」とお達しが出た直後に「やっぱこれ増やしてよ。」で追加したフィールドだった気がします。それが目ん玉飛び交うキュプロクスです。ちょい大型で、動作にも少しクセがある。ここに来てようやく敵の単調さに気を使い始めたという事です。
他は最初から決まってた奴らだっけかな?水色の飛び交う顔チョンチョン。これ結果的に塔を登る妨害として有効なやつになりましたね。ヴィマーナも塔にはぴったりでした。犬に乗ったフクロウ剣士アンドラスは気に入ってるんですが、この手のフィールドでは相手にしにくい動きなのが。結果、しばかずそのまま放置してた方が安全だからね。
真実の目がないと見えないア・バオア・クーですが、こいつは設定からして高い山や塔を登るときに不安さで後ろを振り向きやつに取り付くと言うおあつらえ向きなモンスターで、まさに塔を登るこのフィールドにもってこいってことで採用したんですが、仕組みがわかれば別に真実の目なくても相手にできる、うっとおしいだけの敵になっちゃいましたな。

グラフィック面に余裕があれば女神像がビンタしてくるとかやりたかったなぁ。

音楽も今回の一番のお気に入りでございます。これは空の水源のアレンジですが、メロディーラインを残しつつ、一音一音微妙に音程をずらしてコード進行を無理矢理変更して、アレンジは音数の少ないメロディ部分に無駄に小刻みなリズムパート、だがしかしそのバックで一定フレーズを繰り返すチェンバロパート。自分はこういう作り方が大好きです。メロディーがいいとか本来の「良い曲」よりも「アレンジの妙」の方に目がいくバカな作曲でございます。

うーん、狙って仕込んだものはそれほど効果が出ず、思いつきでやったものの方がよっぽど予想GUYの効果をもたらしている。こんな事が続くから思いつきでものを作るようになっちゃうんだよ。

盛り上がるのであれば、もっともっと掘り返してみようと思います。