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LA-MULANA2の音楽について

無事コンシューマ版の発売も終わったことで、これから周りの進行具合に合わせて設定や世界の構築をどのように作っていったかの話をする前に。それらの作業とは一応分離して制作する音楽について先に語ってしまおうと思う。
前作ではサントラ発売に合わせてライナーノーツを書いて公式サイトに置いておいたが、ここ最近サイトの更新などしていないしホームページという存在事態が今の時代にはそろそろ不要かなーと思うのでここに書く。

音楽のコンセプト

まずこれである。前作から考えても50曲は超える曲数になるのだから、どんな音作りにするかというコンセプトは最初のうちに考えておかなけりゃならん。プロでもないアマチュア趣味作曲家なのだから行き当たりばったりでも良いのだが、少数とはいえ複数人数で作っているので最初のうちに方向性を示しておかないと各々が違うものを作る状態になりかねないのだ。とっととコンセプトを決め、2・3曲ぐらい「これがLA-MULANA2の音楽」と示せるものを早々に用意しなければならないのだ。

音源は新しいものに

これはグラフィックが前作より上のものを目指すので、バランス的に音もクオリティアップしていなければならない。というよりも、前作まで使っていた音楽制作環境がバージョンアップするOSに非対応になってきて使えなくなっているのだ。
特に音楽制作をするための作曲ソフト、これまで使っていたStudio Vision。あの植松氏も使っているというアレだ。これがもうMacOS Xに対応していないもんだから使うにはいちいち古いマシンを引っ張りださなければならない。いいソフトなので使い続けたいがいずれ限界がくる。ということで今のMacOSに完全対応しているLogic Proというソフトに乗り換える。このソフトには豊富でリアルな音源が大量に用意されているので、それを使う。
結果、音質が前作以上に豪華になっちゃう。逆にいえばゲームがレトロ風だからと音質を下げるのが逆に面倒になるので、そういう作業はやらない。

最初から民族音楽意識

前作の音楽も「ゲーム的なメロディに民族音楽要素」なんてしれっと言ってたはず。でもこれはウソ。
だってLA-MULANAの曲なんてリメイクする数年前に作った曲なんだから。その時は「当時のKONAMIっぽい」方が重要だった。む。LA-MULANAの時点であまりKONAMIサウンドは意識しなくなっていたかもしれない。民族楽器を活用するように心がけたのはリメイク版からだ。
なので2の音楽は「最初から民族楽器を活用した曲作り」をする。俺の知っている知識の範囲でね。

ギターはロマン

ギターを弾ける。でもかじった程度だ。高校文化祭レベル。でもギターは好き。ミュージシャンのスコアブックなど見て弾きかた、テクニック、フレーズ作りなど知識ばっかり膨らましてたな。だから「知ってるぞ」アピールのために無駄なこだわりを見せるのだ。
ギターのフレーズは全てギターの弾き方・奏法から外れないものにするのはもちろん、全曲ギターバッキングのフレーズとドラムとベースのリズムは極力被らないようにするという無謀なテーマを自分に課した。当然、後々これに苦しめられることになる。

前作のことは忘れる

これが最も重要で、最も最初に心に決めたテーマである。
LA-MULANA2は続編なので当然前作と比較される。「前の方が良かった」「あのフィールドみたいな曲がなかった」ひどいのになれば「今作の曲はクソ」になるだろう。しかしここは「前作のことは忘れる・参考にしない」と決めた。

だってだぁ、LA-MULANAの曲を作ったのは10年以上前だぞ?そんな昔の頃の曲の作り方なんて覚えてねーし同じ感覚になるわけがない。事実、前作の曲は今となっては拙い部分が気になって聴きかえすことも無くなってしまった。
そして続編とはいえ完全な新作になるため、おそらく俺の作曲数が多くなる。完全新作となればプログラマの労力は上がるし、なおかつ曲のイメージを決めてるのが自分なのだから作る速度も上がる。

そんなこんなで、今作では音楽的に前作より評価が下がるのは覚悟の上だったのだ。曲数が多いとはいえ店などは前作のものを流用するつもりだったし、負の思念や祭壇など短くて雰囲気だけの曲も多いので印象的には曲数が減っているように感じるはず。そして俺が作曲の中心になるということはマニアックな曲が増えるってことだし。さらに最初から民族音楽要素高めでレトロゲームのようなメロディ中心の曲作りもしないと決めている。

これだけのデメリット要素がわかってて決行するには当然わけがある。LA-MULANA2の曲はこうだ。俺が今作りたいのはこういう音楽だという点を重視するためだ。自分のノリを高めることで作業能率を高める狙いもある。ゲーム作りで比較的終盤から着手になる作曲作業が後々重荷になることなんて百も承知だからだ。
ふふふ…。知ってるんだァ、ボク。
とにもかくにも、「意識しすぎて昔の自分の作品に足を引っ張られる」なんてのはクリエイティブ仕事であってはならんことだ。

でも効率を上げる

コレ大事。曲が多いのがわかっているのもあるし、制作環境を一新しているので慣れるにも時間がかかるからだ。
そもそも作曲自体が久しぶり。リメイクの時は作曲をしていない。タイムアタックの曲はあるが既存曲のフレーズを流用したものだ。LA-MULANA2の前となると2008年のFlashゲーム「こちら未来開発宇宙支社」が最後だ。

こりゃ勘を取り戻すのに相当な時間を要するはずだ。事実、序盤の数曲を作ってからはかなり長い期間曲が作れてない。お年を召したせいか、「いいフレーズを思いついたぞ!」と作曲ソフトを立ち上げている間に「……忘れてもうた」となる。
音楽のプロなわけでもなく楽器が満足に弾けるわけでもない。俺の作曲作業は頭から順番にプチプチと音を1つずつ入力していく方法でやってる。8小節の良いフレーズが思いついたとしても、2小節目あたりの作業で残り6小節分の内容が消し飛んでしまう。
恥ずかしいので絶対に公開することはないが、iPhoneのボイスメモに20以上の「ダンダダダスタ、んペッペッぺぺ〜ん♪」なんてその場思いつきメロディを記録しているぐらいに苦労していたのだ。そしてそのボイスメモのうち、メロディーフレーズとしてきっちり使い切ったものは1つもない。この方法で比較的まともに有効活用できたのは妖精界と冥星霊殿の曲ぐらいか。

そして先に書いたことと思いっきり矛盾するのだが、「昔作った曲を積極的に活用する」ことにした。もちろん、今聴いても「使える」と判断できるクオリティのもので「今作のイメージに合う」条件を満たしたものしか使ってない。それもこれも作曲作業の時間を減らすためだ。事実、開発終盤のメロディ何も思いつかない脳みそスカスカ病にかかった期間を思い返すと、やってよかったと思う。
大学時代、演劇サークルに所属していて劇中の音楽を全作曲するなんて若気の至りを発動させていたので曲数はある。しかも300人程度が1度聴いただけレベルなので未発表曲に等しい。しかも今回は高校時代に作った曲が1曲紛れている。さらに中学の頃に頭に浮かんで消えないフレーズまで採用してる。こういうのは再利用というより「供養」に近い。

コンシューマ版のリミックス

これについてもこの機会に触れておこう。
実は今作では俺の作業を減らす目的でアレンジは外部の人に依頼する予定だった。公開されていたアルファ版で聴くことはできる。他にもタイトルや店などの小物は数曲アレンジ依頼して、そのまま利用している。前作の流用で小物な曲はこちらもこだわりが少ないので良かったのだが、フィールド曲となるとこちらの注文が大きいのでなかなかうまくまとまらなかったのだ。
自分の作曲は独学なので、いまだにコード進行がおかしいとか不協和音が残ってるんじゃないかとか、そういうのが気になってしょうがないのだ。専門の人に頼めばこういうのがなくなるかなぁと思ってたんだが、人の手が入るとどうも遺跡らしさというかLA-MULANAらしさが下がってしまうと感じたのだ。
結局アレンジを頼む話はナシになったにも関わらず、初期に依頼したものはそのまま使っちゃってるのだ。音色をこちらで使っているものに差し替えて使う予定だったのに時間がなかった。他にも楽器ごとの音量バランスが悪くて聞こえなくなってるフレーズやら思うような迫力がださていない曲とか、後から色々気になった。

専門的な話になってしまうが、音色を変えたりバランスを整えたりすると、全曲リマスタリングという作業が発生してしまう。作曲ソフトで作った曲をそのまま出力すると音が小さいので音圧を底上げしなくてはならない。しかも全曲同じ音量に聞こえるようにしなければならないので、再調整が必要なわけだ。

そして大事なことを忘れてた。前作の音楽テーマに「アクションゲームなのだからノリノリで自然と体が動くような曲に」というものがあり、ドラムとベースを強調するようなミックスをしていたのを今作ではすっかり忘れてしまっていたのだ。
後PC版発売後の実況動画などを見てみると効果音に比べてBGM音量が小さい。しかもメロディが埋もれ気味のミックスが多かったので「こりゃ普通にやってたらBGMの印象薄いんじゃないか」と思ってしまったのだ。そんなわけで「印象に残すためにメロディを浮き立たせる」+「すべての楽器屋フレーズがきちんと聞こえる」+「リズムを強調する」なんてやっていたら全曲リミックスと相成ったわけだ。そしてこの機会にアレンジ依頼してそのままだった曲をこちらの環境で再アレンジした。前に「リミックスはアレンジではないので曲の印象が大きく変わるわけではない」と言ったが、店などの小物は印象が違って聞こえると思う。そもそものアレンジ手法が自分とは違って「少ないトラックで1つ1つの楽器をしっかり聞かせる」アレンジだったものを、「遺跡の泥臭さを出すためにとにかくギターや民族打楽器をこれでもかというぐらいに重ねる」アレンジにしているのだから印象も変わるってもんだ。

盛り上がるのであれば、もっともっと掘り返してみようと思います。