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ならきちのゆる読書感想文

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本の内容に少し触れたりしつつ、基本的には極めて個人的な心のうちを吐露する読書感想文です。
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2022年6月の記事一覧

角田光代『くまちゃん』を読んで

誰かと出会い、惹かれ合い、お互いのことをちょっとずつ知っていって、時には喧嘩をして仲直りして、「これが幸せかぁ」なんて実感したりもして。 そんな、時間をかけて作ってきた二人の大切な関係性も、きっかけがあったり(ときには特にこれといったきっかけがなかったりも)して突然不穏になるわけで。 「このままずっと一緒にいられる相手ではない」とどちらかが(または双方が)悟ってしまったとき、別れが訪れる。 別れたばかりのときは身を引き裂かれんばかりに痛くて、枯れるまで泣いて、「もう恋な

山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』を読んで

国道沿いに立ち並ぶ見慣れたチェーン店。 山と田んぼしかないド田舎、というほどではないけれど、だからといって東京みたいに最先端のものが揃うわけではない、ふつうの町。 生活に何も不便はしない、でも、なんだかここは退屈。 変わり映えしない日常から私を連れ出してくれる誰かを、待っている。 あらすじ退屈をぶち壊すのは誰中学生のころ、なぜみんな恋愛なんてするのだろうと不思議でした。 やれ誰がかっこいい、やれ誰が好き、「3組の○○君と7組の△△ちゃんがつき合った」、「▢▢君と✕✕

山内マリコ『選んだ孤独はよい孤独』を読んで

私は女性として生まれ、女性として自分自身を認識して、世間からも女性だと認識されて女性としての扱いを受け、日本在住の一人の女性としての人生を歩んできました。 女はつらいよ、な人生だなぁと、思いながら生きてきました。 外見至上主義の世の中、男性たちから(時には女性同士でも)品評されるしんどさ、若さに依存した美しさがじわじわ失われていく恐怖、月経・妊娠・出産・子育てという一連に求められる(ように感じてしまう)自己犠牲の精神、いわゆる”良妻賢母”であらねばならないという強迫観念…