「パート・アルバイト」への社会保険の適用拡大について
こんにちは。社会保険労務士の町田です。
現在、社会保険の適用拡大が順次進められています。
これは大きく分けると、「従来、社会保険が適用されていなかった事業・業種への適用拡大」と、「(既に社会保険が適用されている事業所で)社会保険が適用されていなかった従業員への適用拡大」という二つの側面があります。
本日は、「社会保険が適用されていなかった従業員への適用拡大」の側面として、「パート・アルバイト」への適用拡大について説明したいと思います。
1.「パート・アルバイト」への適用について(原則)
社会保険の基本的な考え方は、「社会保険が適用される事業所から報酬をもらう者は、全て社会保険が適用される(被保険者になる)」ということです。
しかし、労働時間の短いパート・アルバイトについては適用除外されています(被保険者にならない)。
この「労働時間の短い」の判断基準が、俗に「週30時間未満」といわれるものです。厳密には、
「週の所定労働時間」または「1月の所定労働日数」が常時雇用者(=正社員)の4分の3未満」
の場合には適用除外、ということです。
注意点は
・「30時間未満」とは限らない。
例えば、正社員の週所定労働時間が「36時間」であれば、「27時間未満」
が適用除外になる。
・週の所定労働時間が30時間以上になっていたとしても、所定労働日数が
4分の3未満であれば適用除外になる(1日の所定労働時間が長い場合)。
・「所定労働時間」「所定労働日数」は雇用契約ベースで確認するが、実態
として常に超えているようであれば、実態ベースで判断して適用を求めら
れる場合もある。
といったところです。
2.現在進められている適用拡大
上記の条件から「適用除外」とされたパート・アルバイトの内、比較的労働時間が長く、給与が高いパート・アルバイトについて、適用拡大が進められています。
適用拡大の対象となる従業員は、以下の4条件全て満たす方です。
1.週所定労働時間が20時間以上
2.賃金の月額が88,000円以上
3.雇用期間が2か月以上見込まれる(※令和4年10月前は1年以上)
4.学生でない
特に重要なポイントは1.と2.になるかと思います。
ただ、全ての事業所でこの適用拡大が行われるのではなく、徐々に適用される事業所が拡大しつつある、という状況です。
当初(平成28年10月)、被保険者(既に社会保険に加入している方。適用拡大で加入することになる人数は含めない)が500人以上の事業所で適用されました。
今回(令和4年10月)、この「500人以上」が「100人以上」に範囲が拡大されました。また、令和6年10月からはさらに「50人以上」に拡大される予定です。
3.適用範囲拡大の問題点
「適用範囲拡大」は、事業所・新たに適用される従業員に大きな影響を与えます。「厚生年金の金額が増える」「傷病手当金・出産手当金が支給されるようになる」等、「社会保険の適用」によるメリットはあるのですが、それ以上に「社会保険料負担の増大」のデメリットが大きく感じられているようです。
その結果、「週20時間以上」から「週20時間未満」への勤務時間の減少、という選択が(どちらかと言えば、従業員の希望で)進むことになり、人手不足が加速しました。
当然、これは今回の「100人以上」の事業所から、令和6年10月に「50人以上」の事業所に拡大する際には、さらに多くの事業所で起こり得る問題だと考えられます。
4.私見
適用範囲拡大によって被保険者となった方の中には、元々国民年金の保険料を負担していない方(第三号被保険者、60歳以上の方など)も多いと思われます。このあたりが、特に「勤務時間の減少」を選択するのではないでしょうか。
しかし、それは予測されたことであり、何も考慮せず社会保険の適用範囲を拡大した「無策」の影響と感じます。
個人的には、「国民年金第三号被保険者」制度の見直しは急務だろう、と考えています。例えば、第三号被保険者制度を廃止し、全て「第一号被保険者」として保険料負担を求める(そこで、サラリーマンである配偶者が保険料を代わりに支払うかどうかは、その家庭の問題)とするのは、検討の余地があると考えます(移行措置は考えるとして)。
実際、配偶者が「サラリーマン」でなく「自営業」であれば、「第三号被保険者」にはなれずに「第一号被保険者」となり、同じ課題は既にある訳で。
本日は以上です。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。