#01_28歳の誕生日、あと10年で死のうと思った。
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この世に永遠なんてものはない。
とはいえ
このまま時が止まれば、と願った夜も
そう多くはない。
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市内にある1K7帖のマンション。
オートロックは付いていない。
「はっぴばーすでー、ゆっきちゃ~ん。
はっぴばーすでー、ゆっきちゃ~ん。
おたんじょーび、オメデトォ~!
パチパチ~。」
スマホから響く
2才の甥っ子が歌うバースデーソング。
これで何度目か、スマホのリピート再生を押して
「…天使か。」
呟いた声は近すぎる壁に吸い込まれていった。
テーブルには仕事終わりにスーパーで買ったお惣菜とお茶。
料理は好きじゃないし、
一人で飲むほどお酒も好きじゃない。
特に当日を祝う恋人も、友達もいない。
だからと言ってそれが特別寂しいわけでもない。
でも今年はなんとなく、
この特別でもなんでもない誕生日に、
ひとり感傷に浸りたい気分だった。
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市内から在来線で約一時間ほどの田舎に生まれ、
ずっと“みんなと同じ”で居られなかった。
友達作りも、恋愛も、進学も、就職も
周りの同級生が当たり前に出来ることが出来なかった。
いわゆる“普通”をこなせる人が羨ましかった。
見るもの全てが敵に見えた。
欲しいものは一生手に入らないし
やりたいことも一生できないのだろうと思ってた。
自分じゃない誰かになりたいと思った。
こんな戯言を胸に抱えていても
部屋で一人、ぼんやりしていられるのは
私が“まだ”若いからだ。
この先あと十数年経ち、
肌ツヤは無くなりシミも増えて
髪もパサついて下っ腹にどんどん脂肪を蓄えて
今以上に周りを妬み
狭くなった世界で生きていくの?一人で?
それならまだ、
若くて綺麗なのに…と言ってもらえるうちに居なくなりたい。
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2018年、9月18日、火曜日。
一人で迎える28歳の誕生日に
わたしは、
あと10年で死のうと思った。
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