劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiODの感情備忘録
表題の通り、この記事はあくまで一消費者が『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』(通称ムビナナ)を見て感じた感情をそのまま書き起こす。
はじめに記載しておくが、コンテンツ"アイドリッシュセブン"を愛しているものの、いちアイドルオタク・ライブジャンキーとして自分のなかに湧き出てきた感情を踏まえて書きなぐっている為、好意的な内容はもちろん、批評的な内容を含んでいることを前提に、読み進める方は読み進めてほしい。
◆筆者の概要
まずはどのような価値観でこの『ムビナナ』に接しているかを記載する。
音楽系・IP系のコンテンツに関しては下記のオタクをしている。
・アイドリッシュセブンのオタク
┗リリース初期(2015年8月ごろ)からのオタク
┗ナギ・巳波中心にほぼ箱、というか概念「アイドリッシュセブン」を推している
┗ライブイベントは推しの卒業ツアーとかぶってしまったRe:vale単独以外すべて参加
・ハロー!プロジェクトのオタク
┗年間30本はライブイベントに行ってしまっている
・ロキノン系(死語か…?)のライブオタ
┗屋内外のフェスに年間3つほど参加をしている。
┗単独であれば年に5本ほど
・VTuber(にじさんじ)のオタク
┗ライブ系イベントは大体視聴している(現地・オンラインが半々くらい)
と上記のような感じで、年間のライブ参戦回数は数えるのもめんどくさいほどの数。ちなみに今数えたら1月~7月頭時点で30本は参加している。
そんなライブジャンキーからみて今回のムビナナは「愛憎相半ばする」出来だった。
誰に共感してくれとも、運営にこの気持ちよ届け、とも思っていないが、なんか、こう、水を差したくないと思うくらいには好きで、興行成績がもろもろ揃った今ようやく垂れ流しができた。
前置きが長くなったがそんな「ライブキッズ」から見たムビナナの感想・感情備忘録を以下に書き連ねる。
私の感情を吐露するだけなので物好きが高じて読み進める人もいるだろうが、自己責任でお願いいたします。
◆ムビナナの最高な点
①3Dモデルの出来、表情等の調整がものすごく丁寧
終始これにつきる。
少し時間をさかのぼる。
「ムビナナ、コケそう…」
このKVでた段階の私の感想は、これに尽きる。
私自身、3Dコンテンツに触れる機会がVtuberなどのおかげでものすごく増えていて、かなり目が肥えてしまっているのもあるかと思う。
このKVはポーズがすさまじく「固い」。
もともとの目が肥えてしまっているのに加え、ブラホワで最高品質の3Dを浴びてしまってからのコレだったので、3Dモデルだけ1~2年以上古いのではないか…と危惧してしまうくらいキャラクターが「固い」。
この時点でものすごくアイドリッシュセブンの映画に対してとても、えげつないほどの不安を抱えていた。
(もちろん3D以外にも某先人コンテンツとの「ライブ映画」被りの件ももちろんある。が、先に出した・後に出したに関しては製作期間がアホみたいに長い映画において検討するのも無駄だしそこに突っかかってくるアンチはそれも想像できない人たちなので気にするだけ無駄。)
だが実際はどうだろう。
はちゃめちゃに顔がかわいい…!!!!!!!!!!!
男性らしいモデル自体、かわいく作るのが難しい。
「男性モデルはかわいくない」、というのは過去のVTuberを見てもらえればわかるだろう。
今ではめちゃくちゃかわいくなったが、親愛なるにじさんじの3Dモデルもそれはそれはかわいくなかった。
アイドリッシュセブンの過去MVを見た人も分かると思う。
男性のモデルは半数がかわいくないと言っても過言ではない。
(ソシャゲの3Dモデルでかわいい品質の男性モデルがあるじゃん!と思っている人、体の作りを見てほしい。めちゃくちゃ線が細くて女性らしいしなやかな体躯のモデルが多いと思う。
男性モデルはめちゃくちゃリアルになるか、女性的なモデルになるか、みたいなところがどうしても出てきてしまう印象だ。)
それに加えてめちゃくちゃモデリングしづらいだろう"アイドリッシュセブンの顔"。
私たちのなじみ深い"あの顔"を正確に・的確に拾い、かわいく起こされているではないか。めちゃくちゃすごいし、あのKVでこの映像クオリティーが提供されると思っていなかったのでかなり驚いている。
あのMV(愛すべきあれとか、あれとか)を作っていたアイドリッシュセブンが、この映像を作れるなんて…と、それだけで泣きそうになるくらいにモデルが・顔が・動きがとてもよくできていた。
しゃべるタイミングで、丁寧に口が開き、顎もかわいく違和感なく動いている…かわいい、ちゃんとかわいい。
(なお、横顔は本当にかわいくするのが難しい中、最大限にかわいいを引き出しているので私は横顔も愛している)
特に顔回りで感動したのはトウマさんと十さんの顔の出来の良さだ。
この二人はめちゃくちゃ可愛さとかっこよさが共存している。
(あと十は髪の毛のふわふわ感含めて大型犬みたいでキュート)
特に新曲の二人の顔調整が本当に素敵だと思う。
STRONGER & STRONGERの2A終盤「未来の話を朝までしよう、now」のトウマなんか本当にすごい。トウマの顔であんなニュアンス感がある顔が作れるのかと感心した。ライティングの醸し出すエモさと相まって本当に素敵なカットになっている。
またMMD等でもみんなを悩ませている関節の処理や、想像するだけで嫌になる布の処理、本当に丁寧に丁寧に作りこまれているのが初見でもわかる。
KVの時から壮五さんの長めのジャケットや、和泉兄弟・虎於さんのペリースなど、布干渉の調整がめんどうくさそうだと思っていたが、本編の新規衣装はそんなものの比ではなく、ビジュの良さと比例してくそ面倒くさい衣装をお召しになっていた。
本当に何もしなかった場合、しゃがんだ瞬間ガタガタになる長いすそをn人分、1時間近くの映像を調整したアーティストさんたち、本当に偉すぎると思う。
現状どこを見ても破綻なく、かわいく仕上がってて本当に3Dアーティストさんたちの努力やこだわりが詰まっていた。
特に『Pieces of The World』の衣装の動きが私は好きだ。
千の腰回りの布の処理とかがめちゃくちゃ丁寧で、Orangeさんの布へのこだわりを感じた。
もしBlu-rayを持っている人がいたら見てほしいのだが、2サビの『僕らの向かっていく先はどこだろう』と『芽吹いて梢になっていく』の部分の千の衣装。
なんか、もう、あまりにも「布」でここだけめちゃくちゃコマ送りで見てしまうくらい。
これまでのアイナナコンテンツで手抜きだったことは一度もないが、本当に丁寧でダイスキになってしまった。
ちょうどPoTWの話があがったのでPoTWの別軸のやばさを語りたい。
PoTW・WFWの16人ダンスは素人目でみてもえげつないほどの工数がかかっている。
親愛なるにじさんじの緑仙が昨年主催?した「SEEDs24」という24時間ノンストップで配信を行うという狂った企画がある。
この企画の冒頭で8名のライバーがリアルタイムでフルボディトラッキングを行う映像が流れた。
後日、緑仙さんが感想配信内にて「えにからがめっちゃ頑張ってギリギリに挑戦していた」という旨の発言がありおそらく現状のリアルタイムでのフルトラッキングは8人が限度なのかとうかがえる。
また、同じく昨年行われた「FANTASIA」というライブでも同じく8人の出演であったことから、おそらくにじさんじのトラッキング技術(私調べ国内最高峰)では8人前後が限度なのだと推測できる。
上記を踏まえてPoTW・WFWを見ると、特にPoTWに関してはどのように収録を行い、どのように1つの映像に破綻なく収めたのだろうという疑問が上がってくる。
(WFWに関してはユニットごとに収録→2番A・Bメロで収録→ユニットごとで収録の映像をうまくつなぎ合わせているのだろうと推測できるが、それでも大変なことは変わらない。)
PoTWは1A以降ユニットをまたいだフォーメーション移動がものすごく多く、何をどうとってどう組み合わせるのかの想像が本当に難しい。
この1曲仕上げるだけでどれくらいの人が頭を抱えて乗り越えてきたんだろうと思うと感動がより大きくなる。
これだけで1視聴2000円の価値はある。あまりにもお得すぎる、ムビナナ。
ムビナナは最高に顔がかわいいく、3Dモデルまわりの描写がものすごく丁寧にされている。製作チームのすべてに感謝。
ダンデライオンへの圧倒的感謝(RabbiTubeを制作したダンデライオンがいなければモデルはこんなにかわいくなっていない)、Orangeのプロフェッショナルな仕事に対する"感謝"と書いてしまうと零れ落ちてしまうほどのクソデカ感情。
本当に映像としてこんなに素敵な3Dを提供してくれてはちゃめちゃにうれしい。
これだけは揺るがない。
②踊っている推しが見れる(しかもたくさん)
これも本当に感謝しかない。
まず「全編ライブで映画を作ろう」という発想自体が「アイドリッシュセブン」らしく志がヤバイ。(さすが1stライブをドームでやろうとした企画陣)
手書きも3Dもどちらでやっていてもダンスはコストがえぐい。
描写が同じ・連続するタイミングが通常の描写に比べるとあまりにも少ないのは想像できると思うが、その前段階でも検討する内容が多い。
それを全編?1時間超えをするのが当たり前の映画で?という激ヤバ発想がまずすごい。
小学生のクリスマスプレゼントでもそんなもの欲しいと思ってもやらない。
全編ライブ映像の1時間越えの映像を制作してくれてありがとう。
私は生粋のアイドルオタク。
ハローの前はスタダ系・ディアステ系・WACK系とかなりのアイドルのつまみ食いをしてきた。
全身で音楽を表現し、魂を燃やしてステージに立っている姿でないと興奮しない、そんなアイドルしかアイドルと認めないほど、確固たる「アイドル論」を持っている面倒くさいタイプのオタクだ。
アイドルは踊ってくれないと困る。
アイドルが踊って歌う姿が大好きすぎるので『WiSH VOYAGE』のMVはこすりすぎて場面を暗唱(場面を暗唱…?)してしまうほど。
ムビナナが始まる前はブラホワの映像を死ぬほどこすって見まくっている。
度々失礼するが、『1時間30分、ほぼ踊りと歌で構成されているアイドリッシュセブン映像』。これだけで大感謝でしかない。
また「生きているアイドル」に重きを置いているアイドリッシュセブンだからこそ、モーションアクターさんにもこだわりキャスティングをしている。
ほぼ1人のキャラクターに対して決まったアクターさんをあてがっており、ダンスの癖・重心位置等がドルオタには涎が出るほど興奮する作りになっているのも、めちゃくちゃ評価したい。
現在公開されているモンジェネの3:45以降なんか、それはそれは大興奮する。
特にドルオタ的に刺さるのは3:51~3:52に行われる前列後列の入れ替わり~戻りだ。
特にナギ・陸・大和が後列→前列に、
それ以外が前列→後列に戻るときの足さばきを見てほしい。
めっちゃ興奮しない?
陸くんの2拍貯めがアクセント利いていてリズム感ある人っぽいのが良いな
ナギ君は指差しの時を一番きれいに見せたくて一瞬重心が上に行っているんだろうな
大和さんは後ろに重心を残して一気に前に出てくるのがメリハリがあっていいな
環くんはダンスうまい人特有の体幹の良さがステップの安定感に出てて素敵だな
一織くんは以外と大股でガシガシ下がっていくんだな
環くんと一織くんのステップが同じ感じなので振り通りなのはこの2人なんだろうな
三月君はスキップみたいにはねて下がってて体が軽そうだな
逢坂壮五のとことこした動きかわいすぎない!?!?!?!?
そう、この足さばきのカウントの取り方の違いがドルオタが大好きな内容が詰まりまくっている。
この解像度は映像でしか得られない、そんな映像を作るのにはえげつないほどの時間と金と技術者がいる、しかしドルオタはこの解像度をどうしても求めてしまう。
そんな欲求をムビナナは満たしてくれる今のところ唯一無二に近いコンテンツなのだ。
こういう所が見られるのが本当にうれしい。
この後残念な点を書き連ねるが、本当にムビナナのことは『作ってくれて、挑戦してくれて、こだわってくれてありがとう』と心の底から思っている。
ムビナナよ永遠なれ。
◆ムビナナの残念な点
ムビナナ最高!な部分は以上。
批評文を読んで気分が悪くなる人は以下の文章は閲覧非推奨となります。
①セットリストが終わっている
<セトリ入り楽曲に関して>
皆さんもこの部分、思う所があると思います。
「DAY1のTRIGGERの死にっぷりがヤバイ」
どうしてオケアレンジに…?
何度も「アイナナの世界に存在しているから…」「大ヒットミュージカルの楽曲で認知度があるから…」と自分を説得しようとしたが、何度考えても「でもアイドルフェスでやる曲ではなくないか…!?」「限られた楽曲の中でやるものではない!」と自分の中のライブキッズが喚き散らかす。
『BEYOND THE PERiOD』がアイドルフェスという建付けであっても、合同ライブという建付けだったとしても、この自己紹介ターンのような部分にわざわざバラードを持ってくる意味が何度考えても分からない。
TRIGGERは歌唱力が高いユニットではあるけれど、それだけではなく「ダンス力」「アイドル力」を含めた「総合パフォーマンス力」の高さで殴ってくるユニットだと私は感じている。
そんなユニットがわざわざテンションを落ち着けるバラードの選択をするのか?様々なインタビュー記事を読んだが、納得できるコメントは今現在見当たらない。
1つ仮定として各ユニットの美味しいところが均一になるようなレギュレーションで楽曲を選択をした可能性がある。
既存2曲+新曲のレギュレーションのように、【"動"の曲2つ+"静"の曲1つ】をレギュレーションとして科しているのであれば、あまりにも「リアルライブ」「アイドルの合同ライブ」「フェス」の要点が押さえられていない。
合同ライブ・フェスは「"動"の曲で殴れ」、これ以外正解はない。
あくまで持論だが、"静"の曲を入れて正解になるパターンはもちろんあるが、各ユニット持ち時間が40分以上あり、1ユニット合計で6曲前後披露できる場合に限ると私は思う。
「XXの新曲がスローテンポな楽曲だったので、他のユニットも1曲はスローテンポ、"静"の楽曲を入れよう」、こんな発言が企画会議でされていたのであれば泡吹いて倒れる自信がある。
ユニット間の平等ももちろん大事だが、「1ユニット3曲しか入れられない」そんな場面で全ユニット3分の1で"静"は本当にヤバイ。新規ファンの獲得も既存ファンの満足度も何も得られない。
自分の推しユニットだけがクラシカルな演目を行い、他のユニットがジャジーでダンサブルな演目を行っていたらと想像してみてほしい。つまりそういうことだ。
ムビナナの場合『Incomplete Ruler』がセトリ入りしているので、全体のバランスを見たときにも15曲のうち1曲"静"の曲が入っているので、他の曲はガチで全部の楽曲"動"の曲で大丈夫。
リアルの合同ライブ・リアルのフェスを考えたとき、「アーティストを知らなくても音楽でノれる」楽曲がラインナップされることがほとんどで、ムビナナのセトリにはこの観点がなく、かなり拍子抜けしてしまった。
メタ的な視点で言うと「"動"の曲の方が工数がかかる、他の曲との工数の兼ね合いから"静"の曲になった」と考えるのが自然かもしれない。
それならそれで、数ある曲の中からいまいち起爆力に欠けるDAY2のクレライに多くのダンスシーンを盛り込んだ意図がわからない。
また、映画のコンセプト上TRIGGERのこのパートの選曲になんらかの意図があるのかもしれない。TRIGGERのこのセトリが森羅万象の中でなんらかの役割を担っており、そのための選曲なのかもしれない。そうだとしても、後述するがコンセプト自体がライブの世界観を構築する役割として非常にわかりづらいものであり、この選曲によってその世界観を表現しきれていない。
「リアルライブとしてのリアリティ」「ファンの期待」を犠牲にしてまで突き通す理由があったのか?なにをどうしても疑問に感じた。
<MCに関して>
前半の構成に悪い意味で衝撃を受けた。
M1→MC→M2→MC
→次アーティストM1→MC→M2→MC
こんなセットリスト見たことあるか?私はない。
「次の景色は少し…危険かもしれないけど」
「ŹOOĻ!刺激を楽しんで!」
(バイバイ~✋/またあとでね~)←!?!?
(ここで暗転)←!?!?!??!?!?!?!?
心の中の某俳句の先生が叫ぶ。
「お手振りなんてアンコ前・後で丁寧に入れられるからここでは不要。没入感を損ねてしまいますからね。思い切って削ってしまいましょう。」
また、ライブ途中に暗転フェードアウトして場面転換するのもすごく受け取り方に困る。
ムビナナに対して各所が「没入感」「ライブ現地にいるような感覚」と表現しているが、私は各ユニットが終わる度に気絶でもしているのだろうか?
「尊すぎてアイナナ終わった後に気絶してたんだよね~」ってこと?
先ほども記載したが、ライブは「曲で殴れ」が鉄則だと私は思っている。
曲が終わる度に「スン…」ってなってしまうので客側は毎回冷静になってしまう。音楽の渦に巻き込まれずにただ観測者になってしまう。
ライブの構成は曲で殴って、殴り続けて、観客を観測者から参加者にさせる、そんなセットリストであってほしい。
ペンライトの色を変える暇を観客に与えるな。ひたすら殴れ。
「じゃあ場面転換はどうすんの?」
→センターステージがあるじゃないか!!
IDOLiSH7がセンターステージでŹOOĻの呼び込みMCを行い、
その間にŹOOĻがメインステージにスタンバイする。
「ŹOOĻ!」の呼び声とともに1曲目スタート。
それですべてが解決する。
このステージングをするだけでおそらく没入感はものすごく跳ね上がったんだろうな、とひしひしと感じている。
モーション収録もメインステージとセンターステージで別撮りし、合わせるだけだ。
あの16人曲の映像を作れている製作チームであれば作れるはずだろう。
ムビナナの技術力を見せつけられてしまった今、「技術的に不可能だった」という免罪符が消滅してしまい、あの演出に本当に納得できなくなってしまった。
ムビナナはできる子なんです…!!
暗転する度に冷静になり、リアルでは起こりえないフェード暗転が行われ、ここはライブ会場ではないと酔いから醒めてしまうような、そんな感覚が襲ってくる。
もちろん、「ファンサービスが好き」「圧倒的パフォーマンスの後の人間らしい部分のギャップが好き」など、あのお手振りに需要があるのはわかる。
また、大規模なフェス、特にロックフェスだと転換に時間がかかるためアーティスト退場後に数十分の転換時間=アーティストがステージにいない時間を設けて次アーティストに変わることがほとんどで「時間経過を示唆する暗転処理がリアルに即している」という意見も分からなくはない。
ただ「ライブ体験」として必要だっただろうか?
ノンストップで楽曲で殴るのではなく、その描写を入れることで没入感は上がるのだろうか?
丁寧すぎる退場描写ではなくそれを削ってもう1曲ねじ込んでほしいと思うし、転換が想像できる場面を見に来ている人間はおそらくいないと想像する。少し需要を考えてセットリスト・描写内容を検討してほしかった。
没入感という点でも観客の満足度としても、どうしても受け入れがたいセットリストだった。
②ステージングが死んでいる
<ステージの使い方に関して>
上記でも書いたが、センターステージの使い方がすごく薄い。
またメインステージにはあんなに立派な階段があるのに生かし切れていないのももったいなく感じる。
センターステージに関してはステージという名称で呼ぶのが困るくらいに使われていない。あそこはステージではなく花道の終点といったほうが適切かもしれない。
場面転換の時に効果的に使ってほしいという気持ちが一番強いが、
それ以外にも何故やらない!?と思う部分が多々あった。
特にもったいないな、と思ったのがRe-raiseの演出だ。
シンプルにメインステージに椅子をせりあがらせておしまい、そんな出し方がこの世に存在するのか…?
この曲でセンターステージを使うとあの景色が見れるのに何故しない!?と悪い意味でとても驚いた。
想像してみてほしい、センターステージに椅子を生やした場合の景色を。
落ちサビで歌いながらRe:valeが花道を通る姿はまさに王者感。
それをセンターのメインカメラでアップ画面に収め、画角外でスタンバイする椅子。
あまりにも収まりが良い。
何度も言うけどムビナナ君の技術力であれば絶対できるしとてもかっこよくできるはず…!どうして…
他にも
円形ステージならではの振り付けが映えるクレライ
親の顔よりみたリスポ階段
すでにナナライでやっていると言ってしまえばそうだが、ナナライでやっているのであれば別の演出を模索して新しい景色を観客に見せてほしい。
それが難しければ、ムビナナに逆輸入だってしたっていい。
アイドリッシュセブンは逆輸入が比較的好意的に受け取られる土壌が作れているんだから。
「私達があのドームで見た景色はアイドリッシュセブンの世界にもある」とより解像度の高い夢を見せてほしい。
その場で踊る一辺倒なステージングが多様され、何のための舞台セットなのかという疑問を残す出来になってしまったのが本当にもったいないなと、心の底から感じた。
<照明やモニター演出に関して>
あんなに面白そうな舞台装置があるのに…!!どうして…!!
一番ありえないのは定点のディスカバリーチャンネルのような映像と微動だにしない背景画をただドデカスクリーンに流す演出だ。
だれがどういう意図であのような始末に…?
森羅万象がモチーフなので、旅がコンセプトなのでとどれだけ言われても絶対にGOサインなんか出せない舞台演出。
またあのキャパに対してタレントの顔を抜いているモニターがないのも気になる。
リアリティーを追求するならバストアップを抜くモニターが欲しい。
あのセットは、こう…リアルライブだった場合、学級会を生みそうでとてもハラハラする。
個人的にこういった画角の絵を見ると自然と箱のキャパや奥行きを感じてしまう人間なのでリアルサイズとモニターサイズのカットが欲しかったのもある。
ただ、この顔を抜くモニターに関しては技術的に難しいのは納得できる。
おそらく表情調整は最後に行う工程の為、その表情を待っていては5月に公開できなかったと思う。
せっかくの劇場版、3Dアニメーションですべてを完結できる環境。
舞台セットは概要だけ見ればシンプルそうだが、現実でやろうとするとえげつないお金がかかりそうなものばかり設置されている。
リアルライブだった場合の諸々の費用を考えると、超絶ざっくり換算で
2日間フルキャパで赤字、配信で会場キャパ5~8つ分のチケットをハケさせてグッズもかなり売ってようやくペイできなさそうな、そんなリッチな舞台装置を盛り込んでいる。夢のような会場だ。
それなのに使用用途がアレなのは機材が泣いているし、私も泣いた。
機材はしょぼくない、使い方がしょぼすぎる。
少なくともディスカバリーチャンネルをやるためにあの移動式LEDモニターは設置されたわけじゃない。
またライティングも一部の楽曲を除いてめちゃくちゃ単調だった印象だ。
上記で書いた背景定点の楽曲とモンジェネが特に単調だった印象がある。
おそらく狙いとしては「その場所にいるような、自然なライティング」ということなのだろうが、観客としてシンプルに飽きる。
これは「エンタメビジネス」の作品なので、演出サイドの意図があっても観客がつまらないと思ってしまったら意味はない。
観客を楽しませた前提でしか演出サイドの自我は意味をなさない。
それ以外の演出の面だとカメラワークも痒い所に手が届かない感がずっとある。
リアルライブの円盤・ライビュでよく見る、「絶対にライブ映像でほしい絵」が少ないのだ。
例えば
↓ペンライトの中を走る構図や、
(劇中でもあるにはあるが、横移動が遅すぎてぬべっとした印象のものしかない)
↓客席をなめて演者にアップしていく構図など
(指定秒数の木村昴さんのカット)
特に後者に関しては『TOMORROW EViDENCE』の落ちサビの七瀬陸で見たいカメラワークだった。
俺たちのセンター『七瀬陸』ほど引きからのアップが似合う落ちサビ担当はいないだろ…!
七瀬陸の圧倒的センター力が『TOMORROW EViDENCE』に詰まりまくっているので本当に悔しい。カメラワークが良ければ全人類七瀬陸に落ちる瞬間が作れたというのに…。
他にもいくつか「そこは外してほしくなかった…!」という所がいくつかある。
美プレ落ちサビ前の天くんの『Ready?』は絶対にセンターのカメラでがっつりアップで抜いてほしかったし、センターカメラで行くとPoTWの陸・天の落ちサビもセンターカメラ案件だった。
(今思えばセンターのカメラのアップ絵が全然ないなと感じる)
上記で上げた「絶対にライブ映像でほしい絵」のほかにも、
現実ではまだ挑戦とされるドローンカメラや物理的になかなか実現できない超大型クレーンカメラで夢みたいな映像をとってほしかったと思っている。
2次元コンテンツであるうま味をもっと出してほしかった。
新しい技術の「ジャンヌ・ダルク」の撮影は3D映像としては比較的新鮮かつリアリティーがあるからか、今回の映画でそのカットが多用されている。
確かに近距離で撮影されているカットは揺れなどとてもリアリティーがあってムビナナにマッチしている。
だけど、そうじゃない。
ライブではスタンドに設置されている超望遠カメラ、客席の中に設置されているレールカメラ、ステージ前・花道横のカメラなど、いろいろなカメラを使用して静と動を切り取る。メリハリのある映像が求められているのだ。
セットリスト・ステージング総括すると「ライブのうま味が出し切れていない」「1つのライブ映像ではなく、複数のライブ風MVをつなげた動画」という印象が出てしまうような映像だった。
パズルのピースをはめていくような「ここはこういう絵を絶対に見せたいから」という演出意図を感じる部分がなく「そこにあったから使った」というような安直な演出が多い。
ここはライブを作るのに「アニメ制作」の座組を用いてしまったのが大きな要因なんだろうなと思っている。
ライブの演出はライブを作っている人じゃないとそれっぽくならないのだろうな、と感じた。
本当にキャラクターが素敵なのに、ステージ回りの演出が生かし切れていないせいで超もったいない。
③コンセプトの昇華がへたっぴ
『奇跡の星って知ってる?』
おぉ…そうか……。
まずコンセプトがコンセプトとなっていない。
『森羅万象』という大きすぎる概念を掲げるのは良くないが、一旦良しとして、
MCやアートワークを考慮するのであればもう一歩細分化した指標が欲しい。
現場でどういうコミュニケーションが行われていたのかがわからないが、『森羅万象』はあまりにもクリエイター任せ、投げやりすぎる。
ライブというチーム制作物に対して十人十色の解釈を持ててしまうコンセプトはコンセプトにはならない。
大テーマとして『森羅万象』を掲げたのであれば、それが「宇宙」なのか「季節」なのか「歴史」なのか「人の一生」なのか、輪郭をはっきりさせないと指標にはならない。
結果、『森羅万象』を掲げ、それぞれの解釈でクリエイティビティーが進行し混ぜてみたら大混乱の内容ができた。
こういう交通事故みたいなぐちゃり方をムビナナはしていると感じる。
1本のライブ風MVとして映像を見るとキャラクター描写と相まって最高にテンションが上がるできなのだが、ライブとしてみたときはガチ萎えしてしまう、こんな映像は後にも先にも「ムビナナ」だけだと思う。
余談:モーションアクターのMC挙動に関して
ダンス周りに関しては良いのだが、MCの挙動がオーバーアクションすぎるのが個人的に気になった。
アイドリッシュセブンが2次元と3次元の垣根をなくそうとしているコンテンツであるからこそ、MCの挙動に関してはリアルよりにしてくれると個人的に没入感を感じる。
現状の演技はどこかアニメちっく(舞台の動きよりもよりオーバー)に感じてしまい男性向け2次元コンテンツを摂取した時のような胃もたれがすごい。
特にムビナナでは三月くん、また7周年イベント・EXPO再演された3Dライブ内の百くんの挙動が本当に胃もたれする演技だ。
もちろん、そういった演技はとても需要がある。
ただ、アイドリッシュセブンというコンテンツ、そのなかでもリアル志向を追求しているムビナナのMCの演技はそれでいいわけがないと思っている。
モーションアクターという新しい職業だから、それぞれのコンテンツの温度感に合わせてディレクションする人材の育成も追いついていなさそうだ。
また、推測にはなるが収録順序がモーション収録→アフレコの順番で行われていそうで、それもアニメ的な動きを助長させていそうだとも思う。
演技という点においても、アイナナのキャラクター解釈においても、シンプルに声優とアクターさんでは仕事歴が違う。
アクターさんはダンスが現状メインのお仕事の為、適材適所という使い方ができるとMCパートもより自然に演出できるんだろうなと感じた。
環境が引き起こしている部分もあるのでこの観点に関しては業界全体でブラッシュアップされるとうれしいな~~~と一視聴者ながらに思った。(誰?)
◆ナナライと比較してみようのコーナー
残念な点で度々比較対象として引用していた「ナナライ」。
「ナナライ」をリアルタイム(←超重要)で浴びたか浴びてないかで「ムビナナ」の評価は大きく分かれると個人的に思っている。
それほどまでに「アイドリッシュセブン」の「ライブコンテンツ」に対する価値観・期待値が大きく変わる。変わってしまうのだ。
とにかく神ライブなのでまだ見れていない新任マネージャーのみなさんは絶対に履修してほしい。現在の「アイドリッシュセブン」はここから「アイドリッシュセブン」になったと言っても過言ではないです。
ムビナナ新規で即見ても良いが、最高に楽しむのであればそれぞれ下記を1回視聴してからをお勧めする。
1st LIVE「Road To Infinity」
アプリ:1部・2部読了 or TVアニメ:無印+Second beat視聴
MV:モンジェネ・レオパ・リスポ・デイブレ・DF・ナナリア・ノーダウト・ウィシュボ
2nd LIVE「REUNION」
アプリ:3部まで読了 or TVアニメ:Third beatまで視聴
MV:特になし
どちらのライブにも言えることだが、とくに1stに関してはとにかく「文脈」を理解した上で見るかどうかで評価が大きく変わるかと思う。ぜひ文脈に対して大正解の回答をたたき出しまくる気持ちよさを体感してほしい。
前置きが長くなったがナナライとムビナナの比較をしていかに期待値からそれてしまったかを再確認していく。
ナナライ・ムビナナ構成比較
円盤の合計の再生時間を上記で記載したように楽曲動or静、MCの3つに大きく分類し集計した。
下記がその結果だ。
見てもらえればわかる通り、ナナライはそのほとんどが"動"の曲で構成されている。
また集計シートの詳細を見てもらえればわかるが、MCの回数とそれぞれの尺は下記の通り。
ライブ名/楽曲数/MC回数/平均MC尺
ナナライ/29曲/16回/5:29
ムビナナ/16曲/12回/2:47
つまり、皆さんに、君に、何が伝えたいかというと、
ムビナナは短いMCが曲の合間にちょこまか入り込んでくるってこと。
MCを聞いてくれてありがとう。手を振り返してくれてありがとう。
そんな構成になっているのだ。
せっかく体力無尽蔵の現役アイドル達が踊ってくれるムビナナ。
ひたすら歌と踊りでこちらを殴ってほしかった。
かっこいい声が出る最高に愛おしいおじさん達のほうがノンストップで歌っている事実。どうして。
少しわかってもらえたかと思うが、アイナナ初期勢の私はこの「ナナライ」をムビナナに期待してしまっていたのだ。
あの最高の文脈、最高のセットリストで殴られる快楽をずっと心の中に持ち続けて早数年。最高に期待値が高まった中、ムビナナを鑑賞してしまった。
ムビナナには死ぬほど感謝しているが、死ぬほど裏切られてもいる。(勝手に期待しただけだが)
結果からみればムビナナは大成功していると言える。
この成功を足掛かりに今後も3Dコンテンツ・ライブコンテンツを提供していただけるのであれば、ナナライのように走馬灯に出てくるような最高のライブ体験を観客にもたらしてほしいと願う。
がんばれムビナナ、かっこいい声の出る最高に愛おしいおじさん達に負けるな。
◆最後に
ムビナナって本当に良いチャレンジで、良いコンテンツであることは確かだ。こんだけ書いてはいるが少なくとも30回程度は見てしまっている。
ファン界隈全体を通しても、外部から評判でもそれなりの評価を得ているのもありおそらく「素晴らしい作品」なのかもしれない。
こんなに愛憎混じってしまっているのも私が「ナナライ」を経験してしまっている為、アイドリッシュセブンのライブ体験に対してものすごく期待値が上がってしまっているのと、VTuberコンテンツにドはまりしてしまっている為、3D映像に対して舌が肥えてしまっている私の価値観のせいだとも思う。
アイナナミリしらの人を連れていくたびに「MCは微妙かも」「顔が良いが没入感が皆無」と予防線を張って連れていきたくはなかった。
手放しにお勧めできる作品であれと消費者ながらに期待を押し付けている。
最後に予防線を張るがあくまでこれはムビナナに対する私の感情備忘録だ。
文句を言っているのも自分の感情の発散だし、いろいろ仮説を立てたりしているのも「しょうがないよね」というアイドリッシュセブンのコンテンツに対する負の感情のコントロールだ。
ぜ~~~~~~んぶ主観。
私って書くようにしてはいるが、私達って書いているのも共感・同情で自分を慰めようとしているだけ。
1消費者の感情の発散なので読んでいただけた場合は全部話半分で読み取ってほしい。
長くなったが改めて、
愛憎ふくめて全力でオタ活させてくれてありがとうムビナナ。
次のG4Yでお会いするときに手放しで盛り上がれると嬉しいです。
(もう完パケしてると思うけど)
最後に私がいつも浴びてしまっているライブクオリティーが分かる映像を置いておきます。
↓いつも現地で浴びてしまっているクオリティー
↓踊りは素人だが3D映像はここまで行ける
↓ライブ映像ってこういうことだよね
ハ~~~~~~~~~~~早くナナライにいきてぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~