娘 LOVE
歩いて図書館に行く途中、中学校の横を通った。
通りからは、テニスコートと校庭が見え、少しのぞき込めば校舎も見える。
私の母校で、娘もここを卒業した。
*
娘は私と同じ小学校、中学校、高校に通う。
地元では特に珍しいことではない。
自身が卒業してからプライベートで学校を訪れたことはない。
親となって再び、母校に足を踏み入れる。
自分が使っていた教室はどこだろう。
懐かしさもあって探してみるが、分からない。
校舎は古く幾度も改修されている。
何とか思い出そうとするが、記憶はおぼつかない。
そうこうしているうち
思いがけないもので過去がよみがえる。
THE 学校備品
教室の時計、各廊下に設置された生徒用ロッカー…。
当時すでに古かったものがさらに古く、なお現役だ。
いつの時代に作られたんだろう?備品シールの文字はまだ判読できるのか?
学校備品、恐るべし長寿命。
鮮明に思い出した。
時計をじっと睨んで給食の時間を待っていた小学校時代。
ロッカーに座って廊下で友達と雑談していた高校時代。
なぜだろう、中学生のときのことが思い出せない。
暗黒時代だったからかな。
*
娘が通っているときは学校の横を通ることがあれば「今、何時限目かな」と校舎を眺めながら歩いた。
校庭で体育の授業をしているクラスがあれば、娘がいないか目で探した。
今はどちらも卒業し、もういない。
娘のいない学校は、ただの学校になった。
地域の一員として
「子どもは元気だな~」とつぶやきながら通り過ぎる。
*
私にとって大切なものは
懐かしい場所でも思い出でもなく
目の前で、今を生きている娘なんだなと改めて思う。
親って、そういう生き物かも。