宇宙人R氏のムダな抵抗
※この話は前回から続いています。
ユータンに困惑する奥様集団
クリスマスパーティーの晩がやってきた。
R氏は今度こそ自分が地球外生命体ではなく、地球人であることを証明しようと、5人の女友達を自宅に招いた。
女友達というのは「小金持ちの奥様集団」といった顔ぶれだったようである。
R氏はUFO兼宇宙人探知機ユータンをテーブルに置くと、その前に一人ずつ座らせてスイッチを長押ししてみた。
しかし、5人とも何の変化も起きなかった。
ところで、ストーリーにはまったく関係ないが、この原稿を音声入力で執筆しているN氏。さっきから「ユータン」と発音しているのに「牛タン」と変換されるので、いい加減うんざりしている。
どうでもいい話はそのくらいとして、最後にとうとうR氏の番がやってきた。そして、彼女の前に置かれたユータンは、やっぱり奇妙な音を立てて点滅し始めた。
ブイ~ン、ブイ~ン、ブイ~ン、ブイ~ン……。
冗談半分に誘われてやってきたとはいえ、5人の奥様集団は困惑した。
まあ…今まで私たちが付き合ってきたのは、地球人の皮を被った宇宙人だったのかしら…。イヤだわ、彼女は都市伝説で言われているトカゲ人間かもしれないじゃない。困ったわ、これからどんな風に付き合っていけばいいのかしら…。
お仲間探しを始めた宇宙人R氏
すると、宇宙人R氏はこともあろうに、黙っているお友達に逆ギレしたのである。
「そんなはずないわ!そんなはずないわ!これが、こわれてるのよ!私はどこからどう見たって、地球人よ!ねえ、そうでしょ!?」
もはや、その場の空気は修復できず、お友達は早々に退散してしまった。N氏はその晩、R氏から取り乱したメールを受け取った。
『機械がおかしいのよ!夜インターネットでもう1個買うわ!』
その後、R氏はふたたびユータンをとりよせて、別の友人たちの宇宙人チェックを片っ端からやったのである。
すると、かろうじて「10回チェックして2回宇宙人判定が出た」という人物が出現した。
R氏はわずかだが、お仲間の可能性がある人物の出現に小躍りした。
ちなみに、これまでにR氏は3回チェックして2回宇宙人判定が出たという。やればやるほど、R氏の宇宙人疑惑は濃厚になっていく。
ちなみに、R氏はユータンを腰につけて所持していたらしいが、突然、公共の場所でユータンが作動しはじめて大きな音を立てるので、赤面することも度々だったらしい。
宇宙人なんだからUFO目撃は当たり前でしょ?
数か月後、N氏にまたメールがとどいた。
『もうイヤだから、お友達にユータンあげちゃった!あなたにもあげる!もう使うのや~めた!だって私人間だし!ユータンおかしいわよ!』
結局、何回調べたのが知らないが、おそらく高確率で宇宙人確定の烙印が押されたのだろう。
4個買って全部他人にあげてしまったR氏。そのうち2個はN氏がもらったのだが、だれかにあげてしまってとっくに手元にはない。
「ボクはRさんが宇宙人でも、これまでどおりおつきあいしますよ」
もはや、N氏のなぐさめも、ふくれっツラのR氏には届かなかった。結局のところ、周囲の彼女への評価はこんな感じにまとまった。
「R氏は本人が宇宙人なんだから、UFO目撃なんて当たり前だよ。自分が乗っているUFOとか、仲間のUFOを見てるだけなんじゃないの?」
ともあれ、宇宙人なのか、宇宙人的なエネルギーを発しているのかは知らないが、そのような人はユータンのそばにいると、ちょっとやっかいな生活を送らざるをえなくなる。
あなたの友達がもし、宇宙人と判定されてしまっても、あたたかい態度で接してあげてほしい。友達になっておけば、地球の危機が来たとき、なにかいいことがあるかもしれないのだから。
ジャンボジェットを見ていたら、あなたも宇宙人
ちなみに、R氏は東京の山手線に乗っていると、いつもある駅周辺にある駐車場が気になるという。
そこは時空の穴のような場所で、駐車場からジャンボジェット機が垂直に空へ飛び出していくのが見えるのだとか。
しかも、「この前、私もその場所でジャンボジェットを見た!という人を見つけたのよ!」と大喜びしていた。
もし、あなたが山手線に乗っていて、垂直に飛び立っていくジャンボジェット機を〇〇駅周辺で見かけたことがあるのなら、R氏のお仲間である。
いつの日か、R氏とともに不思議なジャンボジェット機の乗組員となる可能性だってあるかもしれない。
ともあれ、それまではくれぐれもユータンに探知されないでいてほしいものである。
完