尖ってこそSIGMA
カメラ業界において「SIGMA」というブランドは、独自のコンセプトを貫くメーカーではと私は考えています。特にこの10年でのリブランディングによって、「安価なレンズメーカー」から「唯一無二の写真体験を提供するブランド」へと大きく進化しました。その象徴ともいえるのが、先日発表されたSIGMA BFです。
どのメーカーも似たようなカメラばかり
最近のカメラ業界を見ていると、「AI搭載AF」「超高速連写」「高精細EVF」など、各メーカーが技術の最先端を競い合っています。こうした進化は素晴らしいものですが、一方で「人間が撮らなくても成立するカメラ」が増えているようにも感じます。どのメーカーも似たようなコンセプトで競争し、個性的なカメラが少なくなっているのが現状ではないでしょうか。
そのような流れの中で、機能性では劣るものの、圧倒的な個性を持つLeicaやHasselbladが再評価されているのも納得できます。単なるスペック競争ではなく、撮影者の感性を刺激し、能動的な写真体験を生み出すカメラこそが求められているのではないでしょうか。そこに登場したのが、SIGMA BFです。
SIGMAはいつだって独自路線
SIGMAは、かつては「安価なレンズメーカー」という微妙な立ち位置にありました。しかし、10年以上前からリブランディングを進め、圧倒的な個性と気品を持つブランドへと進化しました。
現在のSIGMA fpも、その象徴的な存在です。私自身もfpユーザーですが、このカメラを選んだ理由は明確です。「小型軽量でありながら、拡張性が高い」というSIGMAならではの設計思想に惹かれました。特にfpは、撮影のリズムを「カメラに合わせる」のではなく、「自分自身で作り上げる」ことができるのが魅力です。他メーカーのカメラは「カメラが決めたリズム」に沿って撮影する感覚が強いですが、SIGMAのカメラはその真逆をいっています。私はLeicaを使い始めてから、マニュアルフォーカスでピントを合わせるリズムや「撮る」という行為そのものの意味を考えるようになりました。
SIGMA BFの魅力
今回発表されたSIGMA BFは、まさにSIGMAらしさを極限まで突き詰めたカメラです。スペック競争に巻き込まれることなく、「純粋な撮影体験」を提供するモデルになっています。
1. 極限までシンプルなデザイン
SIGMA BFのデザインは、従来のカメラとは一線を画しています。ボディはアルミの塊から削り出され、無駄を極限まで削ぎ落としたミニマルな設計になっています。見た目だけで、購入する人がいても全くおかしくない程、美しいデザインとなっています。
2. 余計なものを排除しすぎた操作系
SIGMA BFには、一般的なカメラにあるような大量のボタンやダイヤルはありません。なさすぎます。基本的な操作は3つのボタンとダイヤルに集約されており、最小限のインターフェースでありながら、必要十分な操作性を確保しています。設定に気を取られることなく、撮影そのものに集中できるのが魅力です。
3. オブスクラの原点に立ち返る撮影体験
SIGMAが目指したのは、「カメラ・オブスクラ（暗箱）」の原点に立ち返ることです。これは単にレトロなカメラを作るという意味ではなく、「撮影者自身が写真に能動的に関わる」ことを最優先した設計思想になっています。最近のカメラはAFやAIによって「被写体を認識し、最適な設定で撮影する」ことが当たり前になっていますが、SIGMA BFはそれをあえて追求せず（※してる可能性はある。）、撮影者自身がカメラを操作することを求めます。
SIGMA BFがもたらすもの
SIGMAは、技術的なスペック競争ではなく、「写真を撮る行為そのものを問い直す」ようなカメラを作ることで、他メーカーとは一線を画しています。その姿勢は、fpやFoveonセンサー搭載機にも共通していましたが、BFはさらにその方向性を突き詰めたモデルになっています。
このカメラは、決して万人向けではありません。一般的な良い写真といわれるものを撮るのならSONYや Canonなどのスタンダード機を買っておく方が絶対に良いです。
尖り続けるSIGMAに期待
SIGMAは、これまでも他社の流れに迎合することなく、独自のコンセプトを貫いてきました。今回のSIGMA BFも、その精神を色濃く反映したモデルです。撮影者自身が写真と向き合い、能動的に撮ることを求めるカメラとして、BFは確実に特異な存在となるでしょう。
これからのSIGMAの動向も気になるところですが、ひとつ確かなのは「尖ったSIGMAこそが、私たちに新しい写真体験を与えてくれる」ということです。このようなカメラが日本の企業から出てくるということは、これから先も楽しい体験を続けていけそうです。
それでは、また。