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拉麺ポテチ都知事15「白髪とOA30の終着地」

「小池さん、若白髪っすねえ」

先日髪を切ったのだが、そう告げられた。いや、それは大げさで私自身もそれは知っていたので告げられたというよりも追認だ。これは個人的な体験だが、白髪化は鼻毛や髭から始まる。そしてサイドやトップにも段々と色素のない毛髪が生えてくるという順番だ。

祖父と父から推測するに、私も生え際の前線が北上するとは思うが、髪がすべて抜け落ちることはないだろう。そして当面は白髪染めをすることもないだろう。どういう風に白くなっていくかに興味があるのだ。そんなことを思いながら、鎮座ドープネス氏の髪色を最新動画で逐一チェックしている。

昨年の緊急事態宣言以降、私が一番見たであろう動画はジャズサックスのチュートリアルと世界中の理美容師のインスタグラムだ。ロックダウンで髪を切れないためか動画をリリースする度にロン毛になっていくサキソフォン奏者のチャド・LB氏と、防護服で髪を切ったりセルフカットを披露するインスタ勢のコントラストはなかなか興味深かった。

今の私の髪型は「フレンチ・クロップ」というもので、単に「クロップ」とも呼ばれる。サイドはバリカンの設定を変えながら「スキン・フェード」という技法で刈り上げの長さを下から上にかけて長くする。つまり下から上に向かって髪がフェードインしていくという訳である。

これはバーバー(理容院)スタイルで、昨今は定番になりつつあるものだ。しかし普段の私は美容院で散髪している。しかも、ひいきにしているのはスタイリストのための研修サロンでバリカン使用禁止、つまり手動のクシとハサミのみでフェードを作らなければいけない。このルールでは至難というか、さすがに無理なので私もそれを承知でお願いしている。

すっかり書くのを忘れていたが、約1カ月前に34歳になった。遂にオーヴァー・アラウンド30枠の終着地点。対する研修生たちは20歳前後ということで、彼らの切磋琢磨をする姿や指導を受ける場面を見ながら私も初心を思い出せるから楽しい。

というのも、私も高校時代は美容師になりたかったのである。ファッションや外側を装うということを自覚できたのは『CHOKI CHOKI』のおかけだ。木村拓哉氏の『ビューティフル・ライフ』以来のカリスマ美容師ブームの牽引主にして、読者モデル文化の走りになった雑誌である。推しは奈良裕也氏だった。今や押しも押されぬインフルエンサーである彼も、最初の「おしゃれキング」の人気投票で2位だったことは忘れない。SNSもない頃に山梨から可能な限りフォローしたが、ある号を境に古着系だった彼がモード系に転換してしまい真似できなくなった。少し寂しかったなあ。

結局、母の反対と音楽に開眼したことで、美容師への熱は冷めてしまったが、当時『CHOKI CHOKI』で学んだバランス感覚やハズし、毎月の勢いで登場する新しい髪型の数々は私の音楽的な美学として今も生きている。

20歳の頃に自分が34歳になる頃は、とっくに音楽家として大成していると思っていた。結局は何者でもないことに笑いを禁じ得ないが、これも人生。楽観的なことに未だ自分が消費されていないことに安心を覚える。それにヴィダル・サスーンが自身の名を冠した「サスーン・カット」を考案したのが、35歳の時だから、まだ私には時間があるはずだ。恐らく。

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小池直也
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