「音楽視点から見たD.LEAGUE 23-24」 ROUND.1:新たな戦いの始まり
プロダンスリーグ『D.LEAGUE 23-24 ROUND.1』が10月30日に開催された。行われた試合は全部で6ゲーム。このなかで勝利を収めたのはCyberAgent Legit、KADOKAWA DREAMS、SEPTENI RAPTURES、avex ROYALBRATS、FULLCAST RAISERZだった。
世界でも類を見ない本リーグは2021年、コロナ禍の真っただ中で開幕した。2週間に1試合という過酷なスケジュールを戦い抜き、試行錯誤のなかで3シーズンを既に終了。特に昨シーズンは念願となるフルキャパシティの観客とともに開催され、レギュラーシーズンはCyberAgent Legit、CHAMPIONSHIPはKADOKAWA DREAMSが優勝を収めている。
レギュラーシーズンは開幕後、半年間・14ラウンドに及ぶ。参加するのは、昨季に引き続きavex ROYALBRATS、KADOKAWA DREAMS、KOSÉ 8ROCKS、CyberAgent Legit、SEGA SAMMY LUX、SEPTENI RAPTURES、FULLCAST RAISERZ、Benefit one MONOLIZ、Medical Concierge I'moon、dip BATTLES、LIFULL ALT-RHYTHM、Valuence INFINITIES、さらに新チームのDYM MESSENGERSを加えた計13団体。
記念すべき3季目の開幕戦はKoji、KETZ、SHINICHI、KAORIalive、Ruuがジャッジを担当。この5名が「スキル」、「クリエイション」、「コレオグラフ」、「スタイル」、「完成度」という観点で各ショウケースを審査していく。
第1試合:
Valuence INFINITIES vs CyberAgent Legit
INFINITIESはバウンシーなブーンバップの楽曲に乗せたルーズな魅力のある作品。Legitは3部で構成されたユニゾン重視の緻密な内容で、楽曲的には前半が素晴らしい一方で、後半に出てくるブラスのメロディが若干唐突なのと、音色と旋律的にブラッシュアップの余地があると感じた。
結果は1-5(AUDIENCE:赤/Koji:赤/KETZ:赤/SHINICHI:赤/KAORIalive:青/Ruu:赤)でCyberAgentの勝利。
勝者コメント:
TAKUMI「昨シーズンは最後の最後で負けてしまって、今年はその雪辱をという気持ちで初戦は絶対に取りたかった」
第2試合:
Benefit one MONOLIZ vs LIFULL ALT-RHYTHM
MONOLIZはストリングスと中盤からの抑制されたシンセがクールな映画音楽風の楽曲に、白い衣装に赤い手袋のフィンガータットが映えた。対するALT-RHYTHMは渋谷系を連想させる、おしゃれ4ビートにようるミュージカル調なショウケース。個性的な作品の激突だった。
結果は3-3(AUDIENCE:赤/Koji:青/KETZ:青/SHINICHI:赤/KAORIalive:赤/Ruu:青)でドロー。
(※コメントなし)
第3試合:
SEGA SAMMY LUX vs avex ROYALBRATS
チャンピオンシップ進出チーム同士のカード。ニュースクールなヒップホップビートとダンスの内容が合っているLUX、そして酒場での喧噪をコンセプトにしたエンタメ寄りなROYALBRATSの対比が興味深かった。
しかし後者の音楽について、スウィングな展開に入る部分のブラスやサキソフォンは難しさを覚える。リーグ全体を通して思うことではあるが、こういうフィーリングをやってもチープになっては勿体ない。ちなみに個人的に過去曲でブラスを使って強烈によかったのはKOSÉ 8ROCKS「Mind Blowing」。
結果は2-4(AUDIENCE:青/Koji:赤/KETZ:青/SHINICHI:赤/KAORIalive:赤/Ruu:赤)でavex。
勝者コメント:
JUMPEI「過去一小道具が多かったです。それが大変で。ぎりぎりまで変更したり、詰めてもぎ取った勝利」
第4試合:
Medical Concierge I'moon vs SEPTENI RAPTURES
I'moonはリーグの立ち上げからずっと点数にならない「カワイイ」を美学としてきたチームだが、今シーズンはこういうモードなのかと感じさせられた。最初期の2年間で監督を務めたのが審査員席のRuu。
個人的には彼女がFabulouos Sistersを率い世界的な番組「World of Dance」で「これはヒップホップじゃないからいい/悪い」論争を巻き起こしたことを思い出す。その流れで生まれたI'moonだったが、今後リーグの生態系のなかでどう変身していくのか。そして、それをRuuはどう見たか。気になるところだ。
なお音楽はチーム専属のクリエイティブチーム・SAAGMUSICによるものということで、こちらも注目となる。
対するKADOKAWA DREAMSは、イギリスで行われたストリートダンスの世界大会「UDO STREET DANCE WORLD CHAMPIONSHIP」でのパフォーマンスを見たダンサーの友人が衝撃を受けていた。それに触発されたことは私が今シーズンのレポートを決めた原動力のひとつだ。
彼らのショウケースは音やユニゾンのシンクロ率が高く素晴らしかったが、音楽的にはリリックの内容がほぼ3年間に渡り変わっていないことを敢えて指摘したい。
結果は1-5(AUDIENCE:赤/Koji:赤/KETZ:青/SHINICHI:赤/KAORIalive:赤/Ruu:赤)でKADOKAWAの勝利。
勝者コメント:
MINAMI「海外にも挑戦してきましたが、やはりこのステージが一番ダンサーをアーティストとして見てもらえるので幸せです。違う作品をやる予定でしたが、6日前に曲「GIFT」に変わりました。KEITAさんが自分たちのやりたいヒップホップを信じてやらせてくれた『GIFT』かなと思います。今年も2冠目指して頑張ります。
第5試合:
SEPTENI RAPTURES vs dip BATTLES
それぞれテーマが強い作品だった。RAPTURESは雰囲気をしっかり出しながら、白衣による細かい動きもしっかり合わせていて、トレーニングの成果が出たと感じる。 BATTLESは最初のポエトリーリーディング的な語りが長いという声もありそうだが、世界観の提示に効果的だった。
結果は5-1(AUDIENCE:青/Koji:青/KETZ:青/SHINICH:赤/KAORIalive:青/Ruu:青)でRAPTURESが勝利。
勝者コメント:
MiYU「昨シーズンは地獄を見ました。オフシーズンからダメなところを全員が向き合って、今シーズンは優勝するためにトレーニングをひたすらに頑張ってきます。勝ち続けていくために頑張っていきたい」
第6試合
KOSÉ 8ROCKS vs FULLCAST RAISERZ
技の応酬で攻めていくのは変わらずな8ROCKS、しなやかなKRUMPスタイルで持ち味を見せるRAISERZ。それぞれのスタイルをストレートに提示した試合だった。楽曲的にいえば、両チームともにドリルっぽいビートを使用。ドリルといえばKADOKAWA DREAMSがよく使う印象があるが、流行的に被りやすい曲調ではあるのかもしれない。
結果は4-2(AUDIENCE:青/Koji:赤/KETZ:赤/SHINICH:赤/KAORIalive:青/Ruu:赤)でRAISERSに軍配。
勝者コメント:
INFINIY TWIGGS「どうやったらみんなで勝てるかを考えました。ラウンド2もっとヤバくなります。これからも応援をよろしくお願いします」
ノーマッチ枠:DYM MESSENGERS
今シーズンから1チームは試合なしのノーマッチ枠が用意されている。開幕戦はDYM MESSENGERSが本枠に。Valuence INFINITIESを彷彿とさせるルーズなヒップホップスタイルで踊り切った。さらに光るのはNAGAN SERVER and DANCEMBLEの音楽。本ラウンド全体を通して、音楽とダンスのアーティスト性が最も拮抗していたのは彼らだったと思う。
コメント:
FOOL「全チーム魂を感じました。僕らにはできない表現がそれぞれのチームにあって、負けてられないと気が引き締まりました。ROUND.2がファーストマッチなので応援のほど、よろしくお願いします」
総合ランキング
1位.CyberAgent Legit(3)
2位.KADOKAWA DREAMS(3)
3位.SEPTENI RAPTURES(3)
4位.avex ROYALBRATS(3)
5位.FULLCAST RAISERZ(3)
6位.LIFULL ALT-RHYTHM(1)
7位.Benefit one MONOLIZ(1)
8位.KOSÉ 8ROCKS(0)
9位.SEGA SAMMY LUX(0)
10位.dip BATTLES(0)
11位.Medical Concierge I'moon(0)
12位.Valuence INFINITIES(0)
13位.DYM MESSENGERS(0)
(カッコ内はCSP=チャンピオンシップポイント)
MVD(Most Valuable Dancer):MiYU(SEPTENI RAPTURES)
私的楽曲賞:DYM MESSENGERS「THE MESSAGE」
『D.LEAGUE 23-24』、開幕戦からなかなか熱かった。2週間に1度準備するダンサーたちも大変だが、審査する側や観る側も体力を必要とする内容である。しかし、個人的には日本で一番面白いエンタメ企画だと思っているので、何とか食らいついて各ラウンドをレポートしていきたいと思う。ROUND.2は11月13日。次にどんな作品が出てくるのか楽しみだ。
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