おばあちゃんの補聴器の件

補聴器の話をする前に、全体を俯瞰するところから書きましょう。


2021年の日本の実質税負担率は48.1%です。


江戸時代の「四公六民」でも重税で、
国民は生きるか死ぬかのギリギリの生活だったため、
各地で百姓一揆が起こったと、中学生の時の社会科で習いました。

今の日本の税金は、江戸時代ならば、
とっくに百姓一揆が起こっていたほどのものです。


日本全体が経済的に苦しんでいる昨今ですが、
嫁の実家のある秋田県は、
平均年収が47都道府県の内の44位という地域で、
その平均年収の金額は3.791.100円です。

そこから税金を払って、
残り200万円ぐらいで、自分の生活費は元より、
子供たちの学費、家族の介護費用等々を捻出するのです。


本題の補聴器についてですが、
補聴器は安いもので片耳3万円~、
高くなると片耳41万円前後します。

当然、秋田県という地域柄、補聴器を購入できるお宅は本当に少ないです。
仮に補聴器を購入できても、予算にはかなり厳しい制約が付きます。

また補聴器が必要な当事者の「聞こえ方」は
人それぞれ、千差万別です。

ほとんどの場合は、購入して個別の調整が必要になります。
・特定の音(新聞をめくる音など)があまりに不快なので、
 その周波数帯の音はごく小さく聞こえるようにしてほしい
・おじいちゃんの声が聞こえないので、
 おじいちゃんの声はちゃんと聞こえるようにしてほしい
などなど、調整は人それぞれ様々です。

この調整がうまくできないと、
・雑音ばかりでまったく使い物にならななかった
とか、
・かえって疲れてしまって、使う気にならなかった
ということになります。


おばあちゃんの友達やご近所さんでも
補聴器を持っている方はそれなりにいます。

ほとんどの方が
・補聴器は合わなかった
と言います。

それは、機能(調整できる項目)が少ないものを購入した可能性がとても高いです。
なぜなら、予算に厳しい制約があったからです。


嫁のおばあちゃんは現在89歳。

「何かしてあげたいと思っても、いずれできない日が来る。
そうなってから後悔しても遅い!
できるうちに、何でもしてあげよう!」
と直家さんは言ってくれました。

先日、補聴器専門のメーカーのお店を訪ねました。
お店でおばあちゃんの聞こえ方を測定すると、
80代の方の平均値よりも、相当良く聞こえていることが分かりました。
それでも、家族の会話には入ってこれず、
電話もほとんどかけられない状況でした。


そのメーカーは「試聴機の貸し出し」があり、
おばあちゃんも補聴器をお借りしました。


補聴器の話をした時は、
おばあちゃんもご近所さんの補聴器事情を知っていたため、
「そんなのいらないよ~」
と言っていました。

しかし、「買うかどうかは後で決めたらいいから、
まずはお借りして試してみよう」と
お借りした補聴器は、とても快適だったようです。

電話の声が聞き取れないために、しばらく電話もできなくなっていた兄弟に
さっそく電話したそうです。
その結果、「とても良く聞けて、電話もできるようになった」と
おばあちゃんは大喜びしています。
「孫に買ってもらった!!」と話していたそうですw


おばあちゃんは、耳が聞こえていた時は、
外出するのがとても好きな性格でした。
自宅やご近所さんのお宅の縁側でお茶を飲んだり、
たまには同級生やお友達、地域の方と
どこかに出かけたりするのが大好きでした。

しかし、補聴器を付ければよいだけの事、
つまりお金で解決できることが原因で、
かなり長い期間、病院以外の外出もほとんどしていませんでした。

「明日、施設にいる兄弟に会いに行こうか。
整骨院に行くんだから、そのついでに」
と言ったら、大喜びで、
さっそく施設の場所や面会時間の確認にかかっています。
もちろん、補聴器なしでは全くできなかった電話を使って。

これだけでも、おばあちゃんの生活の質や生きがい、
といったメンタルに大いに影響が出ます。

たった一つの機械、器具ですが、
こんなに生活への満足感に差が出ます。

さぁ! ここで難問です。
おばあちゃんは、自分の年金額や、実家の生活費がどういう状況かを知っています。
もし補聴器の値段を知ったら
「高すぎるから、いらない」
と言い出すのは分かり切っています。

だからこそ、嫁と補聴器メーカーの営業さんがきちんと連絡を取って
家族や親せきには、補聴器の値段がバレないようにしなくてはいけません。
だから、ここでも値段は絶対に書きません。
ご想像にお任せします。


日本は対外純資産が黒字であることから、
インフレ率が2%を超えてくるまで、
自国通貨建て国債をバンバン刷ることができます。
日本の対外純資産が黒字になることに大きく貢献したのが
この、おばあちゃん世代です。

お金で解決できることならば、
これまでのお礼として、補聴器や眼鏡ぐらいは
お一人様各2台ぐらいまで、国債を原資として無料で配るぐらいの
太っ腹な日本政府であってほしいものです。










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