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サンフランシスコ・リサーチ
去年、サンフランシスコに身を置いて、リテールを中心に米国のスタートアップへの投資目的で調査していました。今回、約1年ぶりにサンフランシスコを訪れて、街の変化など、感じたことを4テーマnoteしています。
1.返品カウンター化する「amazonGO」
去年、シカゴに1店舗、シアトルに3店舗の計4店舗だったamazonGOが、「2021年には、全米に3000店舗出店する」と発表した後、店舗拡大第1号としてサンフランシスコに出店しました。
当時の話題は、「レジレスの顧客体験がどんなものか」と「1店舗100億円以上かかると言われる設備投資がある中で、どうやって3000店舗まで増やすのか」というものでした。
そして1年経ち、今は全米に22店舗、サンフランシスコにも3店舗(さらに1店舗建設中)を展開しています。3000店舗までの道のりはまだまだですが、増加傾向にあります。
この中で、サンフランシスコ市内に最近できたのが「575 Market」なので、そこをチェックしました。
サンフランシスコでは一番最近にできたMarketStのamazonGO
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 8, 2020
最新店舗ながら、カメラとセンサーの数は従来と変わっていないように見受けられます。
すぐ近くに2店舗もあるためか、集客は厳しそう。
ただ、amazonの返品をここで受付ていて、返品の顧客が絶えないのが驚き。もはや返品店舗化してる。 pic.twitter.com/0Rai2quf3V
ポイントは、
・店舗拡大に向けて設備に変化はあるか
・1年経って、集客はどうか の2点です。
結果として、設備面は、「カメラの台数やセンサーの質」はほとんど変化は見られませんでした。
店舗も増大しているので、既存店舗での検証を経て、効率化されているのかと思いましたが、天井のセンサーカメラも、棚についてる重量センサーも変化が無く、さすがに100億円以上とも言われる設備投資は効率化されてるとは思いますが、店舗単店のユニットエコノミーが黒字化しているとは思えません。
また、集客もかなり厳しそうです。レジレスのコンセプト自体に新しさが無くなった今、「なぜamazonGOを使うのか」という命題にぶつかっているようです。
店舗近くにはWalgreanやCVSなど、レジに人のいる既存のコンビニがあります。そこと比較した時に、「レジレス顧客体験<レジあり顧客体験」となって、結局、同じ価格なら人がいた方が便利。となっているような印象です。
ただ、amazonGO自体の利用は少ないものの、次々と人が訪れるサービスがありました。それが「amazon購入商品の返品」です。
日本ではあまり返品文化はありませんが、米国で返品は当たり前。通常であればUPS(米国の郵便局)に持って行って手配しますが、各種amazon店舗でも返品対応が可能です。郵送手配がいらない分、かなり簡素なやりとりで返品できるので、重宝されているようです。
とにかく、amazonの商品を持った人が絶えず訪れて、店員もつきっきり、という状態。amazonGOの集客は厳しいようですが、amazonのリアル店舗の価値として「返品できる場所」というのはあるようです。
返品にきたついでにamazonGOに立ち寄る。という流れができると良いのですが、今のところ、返品したらすぐ帰る。というのが目立ちます。
2.変わらないD2C
ニューヨークほどではありませんが、サンフランシスコにもD2Cのリアル店舗が多数出店しています。allbirdsやeverlaneのようにサンフランシスコ発のユニコーンブランドもあり、リテールも盛んな街です。1年経って、どのように変化してるかをチェックしました。
サンフランシスコの中心街の外れにある「allbirds」
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 7, 2020
1年前からはあまり変わりばえしないコレクションで、ちょっと色柄が増えた程度。
$95のスニーカーはお土産に最適でしたが、1/10原宿にオープンすることで、お土産価値が微妙に。
日本での販売価格をいくらに設定するのか楽しみ。 pic.twitter.com/isH68A3AAa
FillmoreにあるD2Cパンプスの「Rothy’s」
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 8, 2020
シンプルな内装で、壁掛けのコレクションが数点と試着スペースがあるだけ。
プラスチックのリサイクル素材を使用して、サステナブルを標榜するあたり、allbirdsと比較されることも多い。
去年は朝から行列ができてましたが、ちょっと勢い落ちてきてる感じ。 pic.twitter.com/tb1oUuCwVB
キャリーケースD2Cの「AWAY」
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 8, 2020
旅雑誌「HERE」を自社発刊するほどに、「旅」をテーマにブランドストーリーを作っていますが、店舗の作りはキャリーケースプランドです。
持ち手のところにUSBチャージャーが付いていて、ここから充電できるのが特徴。旅=充電不足、を解決できるアイテムです。 pic.twitter.com/BafxLS6asY
結果として、大手D2Cの商品や店舗体験にほとんど変化が無く、リアル店舗への集客は減っているような印象です。
Rothy'sも、去年は外に列ができて入場制限してましたが、集客は落ちついてきているようです。
D2Cの思想として、「店舗で体験→ECで販売→ECでリピート」でLTVを高めていければ良いので、一概に、リアル店舗の集客が減ってるから成長が止まっているとは言えませんが、店舗ごとの新規顧客の獲得は限界に来ているのではないでしょうか。
そのため、今後、allbirdsのように中国や日本などグローバルな市場に進出する企業が増えると思います。
3.ファッションレンタルの店舗体験
米国のファッションレンタルの最大手と言えば「Rent the Runway」です。すでに評価額が1000億を超えるユニコーン企業ですが、サンフランシスコ内にリアル店舗を出店しているのでチェックしました。
ファッションレンタルのRent The Runwayのリアル店舗
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 8, 2020
アイテムが2フロアに大量集積されていて、試着して気に入ったらレンタルOKというワクワク感がたまらない。
試着体験価値の向上を重視してるので、試着室も広く、優雅。
レンタル需要なんてあるのかと懐疑的でしたが、好きに選べる体験は楽しい。 pic.twitter.com/YIi4UFu9zN
実は、Rent the Runwayの店舗はこの1年間で「Neiman Marcus内」→「ユニオンスクエア西の路面店舗」→「ユニオンスクエア東の多層階フロア」と移転を繰り返しています。
ただ、移転するごとに確実に店舗面積は広くなっています。リアル店舗を利用する顧客特性は、「レンタルするという目的がある既存顧客」なので、新規顧客を獲得するためのトラフィックは必要ありません。そのため、既存顧客の満足度を高めるために、広くて安いところにどんどん移転する。という戦略と推察します。
まず、今回チェックして、「Rent the Runway」のリアル店舗はめちゃくちゃ面白い。というのが感想です。
ポイントは、
・レンタル可能なアイテムが大量
・優雅な試着室と休憩スペース の2点です。
入口も分かりにくい雑居ビルの2階と3階に店舗があり、その2フロアにカジュアルからドレスまで、大量の服が陳列されています。去年、Neiman Marcus内に店舗があったときの10倍近くはSKUが増えているのではないでしょうか。
その中から、好きなだけ試着して、気に入ったものだけをレンタルできる仕組みですが、まず、あれだけの点数から好きなものを選べるのが楽しい。サブスクリプションモデルのため、1点ずつの値段を気にせずに、また、「ブランドの枠」を超えて試着を楽しむことが可能です。
大量の服の中からお気に入りの1着を見つけるために「試着回数」が増えるので、試着体験の満足度を高めるために、試着室は広くストレスがかかりにくい作りになっています。
また、試着を重ねると滞在時間も長くなり「疲れ」が出てきます。その疲れを緩和するために、コーヒーを無料提供したり、自由に使える休憩スペースがあります。
自由に寛げるラウンジもあり、コーヒーを飲みながら服を探したり、PCを広げて仕事をしてる女性もいる。
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 8, 2020
週5日来てる女性もいるらしく、レンタル服を選ぶ場所ではなく、「自分の居場所」として認知されて、ブランドと顧客の間に深い結びつきができてる。 pic.twitter.com/EeK6RszcmG
中には休憩スペースで仕事をしている女性もいて、レンタルしに来ているだけでなく、ゆっくりと自分の時間を過ごす場所としても認知されているようです。店員さんの話しによると、週5で来てる方もいるとか。
いずれも「自分だけの一着」を見つけるための施策となっていて、この連動性が楽しい。
ファッションレンタルビジネスに対しては懐疑的でしたが、リアル店舗を見て、視点が180℃変わりました。効率を求めて、WEBサービスだけでファッションレンタルを追求するのではなく、リアル店舗も組み合わせると、高い顧客満足を得ることができそうです。
4.不安定な電動スクータービジネス
サンフランシスコ市民の足として長年親しまれてるのが「シェア電動スクーター」ですが、法が未整備だったこともあり、一時期、大量の企業が参入し、街にスクーターが溢れて苦情が殺到する事態に。
そのため去年、スクーターのサービス提供はサンフランシスコ市の認可制となり、「skip」と「scoot」の2社だけが認可されて、大手のLyftが排除されるなど話題になりました。(認可期間は2019年10月14日まで)
1年経って、そのあたりに変化があるのかをチェックしました。
まず、2019年の10月14日までだった認可が更新時期となり、その際に、街のスクーターを牛耳っていたskipが認可取り消しとなり、サンフランシスコ内での営業を停止していました。
11社が認可申請をして、下記の評価の結果、JUMP, Lime, Scoot, Spinの4社が認可されましたが、skipは安全性の評価が低く、認可を受けられなかったようです。
地味に、Lyftが去年に引き続き落選してるのもポイントです。Lyftは去年、シェアサイクルの独占契約をサンフランシスコ市に反故にされたことがあり、サンフランシスコ市と訴訟中です。市から目をつけられてる企業ですし、なかなかロビー活動が難しいのかもしれません。
そして、街の変化として、明らかに変わったのが、「駐車方法」です。
サンフランシスコ市民の足となってるシェア電動スクーター
— Naoya Murata (@NaoyaTech) January 8, 2020
前はどこにでも乗り捨てできましたが、交通確保や盗難防止のため、歩道のポール等にコードを巻きつけるよう指導を受けてる。
一番利用されてたskipが認可取り消しになり、町に1台も無い。市の認可次第でビジネスが吹き飛ぶ怖さを感じます。 pic.twitter.com/195iMXdFrj
これまでは、店の前でも歩道のど真ん中でも、どこにでも好きに放置して良かったのですが、今回の認可の際に、歩道のポールなどにコードを巻きつけて、ロックするよう徹底されているようです。これにより、倒れて歩行の邪魔になることを避けることができます。
ビジターの立場としては、無法地帯のカオスのような感じも良かったのですが、市民からすると、秩序があった方が良いのは間違いありません。
今回のskipの排除で感じることは、電動スクーターのビジネスの不安定さです。米国は州や市の権限が強いので、企業側も慣れているのかもしれませんが、市の認可性かつ、更新周期が1年のため、外部環境の影響が強過ぎます。
今回の認可も2020年10月14日までなので、次の認可を取れるかどうかで大きくビジネスが変化します。今後、参入に対して慎重になる企業もあるかもしれません。
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