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「リュックいやだ」駅構内にて。@3歳児のとった行動

《登場人物》
Aくん…3歳児男児。「リュックいやだ」の子
Yくん…3歳児男児。

Sちゃん…3歳児女児。

__

ある日の保育、えんそくでのこと。
もう3時も回り、みんな疲れ気味。

歩いて帰るには厳しく、電車に乗って園に戻ることになった。

駅構内でトイレに行くこどもたち。
トイレを済ませた子が戻ってきて、いざ出発!

と、思いきや。

Aくんが、リュックを背負っていない。
こういうとき、「Aくん、リュックリュック!」というのは簡単だが、これでは何にもならないから、いつもどう入ろうか迷う。

すると、

「すみません、リュック忘れてますよ!」
と、通りすがりの方が声をかけてくださった。

ひ「あ、ありがとうございます〜大丈夫です〜」
(なにが大丈夫なのか、このとっさの答え、いけてない(笑)

さて、ここからどうするか。

ひ「Aくん、リュックどうする?」
A「リュック、いやだ〜」

そうだよね。そりゃこれだけ疲れてるんだもの。
しかしこの時は、簡単に大人が持ってしまうのはなんか違う感じがした。感覚的に。

もちろん持ってあげてもいいとも思う。
でも、もし子どもたちにこの出来事を返したら、どうなるだろう?

ひ「どうしていやなんだっけ?」
A「だって、リュックいやなんだもん!」
ひ「そうだよね、いやだよね〜」

と、ここで
すでに歩きはじめている他の子に振ってみた。

ひ「あのさ、Aくんがリュックいやなんだって。どうしよう??」

一瞬静まり返ったが、すぐに声があがった。
「わかった!僕が持つ!」
「わたしも!!」

わたしも、は女の子だった。
一番に動いたのはこの女の子。
しかし女の子が動こうとしたら、「僕が持つ!」といって男の子の手に渡り、女の子は「(しょうがないなぁ…)」という表情でその場を譲った。

持ちたかった、
というより
持ってあげたかった。

持ってあげたかったので、
誰が持ってあげても構わなかったのか。
それとも、男の子にかっこいいとこを渡したのかも?どのへんだったのだろうか、それにしてもスムーズに決まってびっくりだった。

さらに
「僕も持つ!」
と言って、結局男子2人でリュックは運ばれていた。

金属製の水筒が入っている。
着替えも入っている。
そこそこ重いのだ。


聞いてみることにした。
ちょっとぶしつけな質問かもしれないが。

ひ「ど、どうしてもってあげるの?」
Y「えー?だって、Aがリュック持ちたくないから」

と、どストレートな答え。
そりゃそうだよね。。。
でも、そうやって『持ちたくない人』のものをさらりと持ってあげちゃうその心は、どんな感じなのですか。

2人で、よっこらよっこら運ばれていくリュック。
階段も降りねばならない。
なかなか大変だ。さらにさらに、
なんと数分後に目的の電車が到着するらしい。


焦るひがし。
しかし子どもたちは淡々と運んでいる。
諦めることもせず、
大人に頼ることもせず。

Aくんは、本心は分からないが
普段通り過ごしているように見えた。


さて、
ホームまでやってきた。

「まもなく、○番線に、…」

とアナウンスが入る最中。
リュックを運んでいたメインのYくんが、「そうだ、いいこと思いついた」と、

自分のリュックを背中から下ろし始めた。
さらに焦るひがし。
だって、もう電車がそこまできている!
間に合わなかったら、手を貸すことになる。
いつまで待つ??どうする??

ゆっくりと自分のリュックを下ろし終えたYくんは、今度はAくんのリュックを背負い始めた。これまたマイペースだ。

「(はやくはやく!!💦)」

心拍が上がるのがわかる。
YくんはAくんのリュックを背負い終え、
胸の前のカチャンを締め終わる。

さぁどうする??
自分のリュックはどうする??

なんと!
さっきと似た感じで
片手で担いでいた!

なんだったんだ!
このアイデアの狙いは!(笑)
しかし、この方が持ちやすかったのだろう。


リュックのことが終わった直後に
電車のドアが開いた。
よかった、間に合ったー
手を出さずに済んだ(汗)

まったく子どもたちはすごい。
一切焦らないのだから。
これでもし間に合っていなかったら
それはそれで良い体験になったのだろうなぁ。
考えただけで焦るけれど。


さて、
開いたドアに向かって歩くYくん。
背中にはAくんのリュック。
腕には自分のリュック。


車内に乗り込み、
YくんはAくんのリュックを床に置いた。
そして自分のリュックを背負い直す。


乗る区間は一駅分だ。
むむ。
このAくんのリュックはどうなるのだろう?
Yくんが持っておりるのだろうか?


あっという間に駅に着いた。
気がつくと、

なんとAくんが自分のリュックを腕で持っているではないか!なんだこれは!?


階段を登って改札へ向かう途中のこと。
僕はAくんの後ろから登っていた。

Aくんは階段を登りつつ、リュックをきちんと背負い直した。これを見ていた女の子が、僕に話しかけてきた。なぜか小声なのだが。


「Aくんが、自分のリュックしょってる…
 不思議だね…」


ふ、不思議とは…

でもなぜだろう、
僕も「不思議」と思っていたのだ。
これが意識が繋がるということか。

これを言いながら、
女の子の表情は少し微笑んでいてあたたかい。
さらに女の子はひとこと。


「Aくんには、ナイショだよ♪」


うわー、わかる!
小声で話す感覚。ナイショの感覚。
僕もわかるーーー


__


ようやく園に戻ってきた。

少し落ち着いて、Aくんに聞いてみた。

ひ「あのさ、YくんたちがAくんのリュック持ってくれたけど、あのときどう思ったの?」

答えは返ってこない感じ。
いけないことを聞いてしまった?
Yくんに何か言いなさいとか、誘導的な何かが僕の毛穴から出てたのかも?

ひ「Aくんさ、リュックいやだったのに、なんでリュック背負ったの?ー
A「だってさ、〇〇駅についたから」

とのことだった。

子どもたちはまっすぐだ。
大人が思ってるほど複雑ではない、のだろうか。
それとも、微細な心の動きに柔軟に対応しているのか。


「不思議だね…」
と言った子も、「リュックどうしよう?」の時に動いたわけではなかったが、

周りにいた子全てが何かを感じ、考えていたのかもしれない。少なくともあの場は、みんなのものだった。


公共の場である駅。
そこで、リュックをめぐっての色々。
たんたんと動くこどもたち。

その一方で、焦る僕。
なぜ焦ったのか。
人の目が気になった?
しかし子どもたちは、仲間に心を寄せていた。

僕は何を見ていたのか。
3歳の子たちが、仲間ができないことを代わりにやっていた。僕は子どもの心より、社会の目を気にしていたのか。

子どもたちはどこにいるんだろう。
子どもたちのように、あたたかいところにいたい。

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