「さわっちゃだめ!」@1歳児のことば
登場人物
1歳女児:Qちゃん・・・大人と会話でコミュニケーションがとれる
1歳男児:Yoちゃん・・・大人と会話でコミュニケーションがとれる
1歳男児:Soちゃん・・・まだ喃語のみ。
1歳女児:Tちゃん・・・会話ができるようになりはじめた。
___
ある日の1歳児クラス、散歩からの帰り道のこと。
Qちゃんは歩き。他のYoちゃん、Soちゃん、Tちゃんは立ち乗りカートに乗って園への帰路についた。
Qちゃんは、両手に園から持ってきたレゴの車を2つ持っていた。
さ「2つ持ってると、手つなげないから、カートのる?」
Q「いや~だ~」
といって、2つの車を1つの手にまとめて持つ。
なるほどよく考えたようだ。
その状態でQちゃんは、僕がカートを押しているのを見てか、
そのちょっと前に別の子がやっているのを見てか、
カートの前の柱を手で持って引っ張りはじめた。
「わたしもカート押す~」という感じだろうか。
さて。
公園の出口では、見通しの悪い道路がある。
ここを超えないと園にはもどれない。
道路では手をつなぐ、のだが、Qちゃんはカートを押している。
「Qちゃん、このままいける?大丈夫そう?」
と聞くと、片手に持っていた2つの車をカートの中に入れた。
「あぁ、これなら大丈夫なのね」
ということで道路を渡る。
すると、YoちゃんとSoちゃんが、カートに入った車をそれぞれ手に持って遊び始めた。
Q「さわっちゃだめ!」
さ「あ、さっき使ってたから?」
Q「使ってたの!」
さ「そっかー。カート押せないから、車中に入れたの?」
Q「うん!」
さ「あ、もしかして道路渡るから入れたの?」
Q「うん!」
さ「そっかー、それはさわってほしくなかったね」
すると、Yoちゃんはそっと、カートの床に車を置いた。
Q「Yo、ありがと」
あらま、ありがと、とは!
これを見て、Soちゃんもカートの床に車を置いた。
しかしまたすぐに、YoちゃんとSoちゃんは車を手にとり遊びだした。
それもわかる。彼らもこの車が大好きだから。
Q「さわらないでー!」
すると再び車を置く二人。そして、
Q「あっ・・・・」
といって、なにか思いついた様子のQちゃん。
見ると、近くに落ちていた葉っぱをもって帰ってきた。
Q「はい、どうぞ」
So「・・・」
Soちゃんに葉っぱを渡したのだ。
さ「あ~、車は大事だから、変わりに葉っぱ渡したのね!」
さらに動くQちゃん。
Q「はい」
といって、Soちゃんにも手渡した。さらにさらに。
Q「Tも・・・」
といって、この件にまったく触れていなかったTちゃんの分まで葉っぱを広い、手渡していた!?さらにさらにー・
Q「Qも・・・」
といって、自分の分まで葉っぱを持ってきたのだ。
それからしばらくして、Qちゃんは別のルート(近道)から園に戻ることになり、二手に分かれた。
ここでまたSoちゃんとYoちゃんは車を手にしていたが、
さ「あ~、Qちゃんいないから、、、いいかなぁ?どう?」
So「・・・・いい!」
さ「そっか、いいかな!」
といって遊びだした。
そこからQちゃんは、心地よさそうに園に戻ってきた。
__
Qちゃんは割とすぐに手が出る子、だった。
が、車を置いてくれたことに「ありがと」が出るとは。
手が出る子は、もしかすると人一倍心が豊かで繊細で、
人の気持ちも分かる子なのかもしれないな~と最近思っているのだが、
今日のQちゃんを見て、やっぱりそうなのかなと感じた。
そしてびっくりしたのが、
Qちゃんが、Tちゃんにも葉っぱを渡したこと。
ノータッチだったTちゃん。
Qちゃんは、「だからって、Tちゃんだけ葉っぱあげないのは違うかな」
と感じたのか、それとも「Tちゃんだけ無かったら悲しむかな」とか、「Tちゃんも喜んでほしいな」とか、それとも気持ちを送ったのか??
車をおいて欲しいという気持ちが伝わってうれしかったのだろうか。
本当のところは分からないが、
大人はたまに、カートの中にいる子に葉っぱや草、木の実なんかを渡すことがある。でも、Qちゃんのような気持ちを毎回持っているわけではなくて、欲した子にはあげるけど、そうでない子にはあげない、とかって対応もやってしまう。
小さなことだが、その場にいるみんなのことを考えて動いたQちゃんの心、人として尊敬だ。
この一連で、褒めも然りも誘導もしていない。気持ち的にも、ほどんと期待も意図もしていなかった。それでも、1歳でもこれだけ考えて自ら動く。
もちろん、ここに至るまでの大人から教えられた”なにか”の影響だとも考えられるけれど、なんとなくだが、Qちゃん自身の心を感じた、そんな出来事だった。
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