わかばや史(20) 入学早々、星つきレストラン研修で絶望
入学して2週間ぐらい経ったある日。
鳥羽シェフの講義があった。
一流の人と会えること。
そして、直接教えてもらえることにワクワクした。
講義中に一言。
「うちに研修きたほうがいいよ」
僕は、授業後すぐ連絡を取って研修させてもらえることに決まった。
研修先は1つ星のレストランの『sio』だ。
包丁の持ち方を教えてもらったぐらいのただの素人が一流の現場に飛び込んだ。
仕込みをやらせてもらったけど、スピードも遅ければ同じ大きさに切ることもできない。
営業中は端っこで見ることしかできなかった。
何もできない。
絶望した。
スピード、技術、知識、経験値、全てが違いすぎる。
「ヤバい世界に飛び込んでしまった」
絶望と共に胸の高鳴りが聴こえた。
おそらく、僕はぶっ飛んでいる。
生粋の負けず嫌い。
「自分もやれるようになる」
何の根拠もないけど、一流の現場でもやれると思った。
「なるべく早い段階で、一流に触れろ」
まさにその通りだった。
料理の世界に飛び込んですぐ、一流に触れられたことが何よりの財産だ。
自分の足りていな部分が明確になり、その部分を少しでも早く埋めるためにもがく日々がはじまった。