所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定⑧
今回は、形骸化した登記の抹消⼿続の簡略化(前半)について書きます。
前半は、地上権や買戻し特約の登記の抹消登記について書きます。
所有権以外の権利の登記についても、すでに登記上の存続期間が満了した地上権等や買戻し期間が満了した買戻し特約の登記など、実体上の権利が消滅しているにもかかわらず、登記だけ抹消されることなく残置されているケースが少なからずあります。
なぜ、このような登記が残置されたままになっているかというと、登記義務者の所在が不明になっている場合において、地上権等や買戻し特約の各登記を抹消するには、負担の重い手続を経ないと抹消登記ができないからです。
そこで、簡便に地上権等や買戻し特約の登記の抹消を可能とする仕組みが必要となる。
地上権等の権利に関する登記の抹消
登記された存続期間がすでに満了している地上権等の権利に関する登記について、負担の少ない調査方法により、地上権等の抹消登記の登記義務者の所在が判明しないときは、登記権利者単独で地上権等の登記の抹消を可能とする(新法70条2項)。
手続の流れ
① 地上権等の権利の登記の存続期間が満了している。
② 公的書類等で地上権者等の所在を調査して判明しなかった(現地調査まで不要)。
③ 裁判所に公示催告の申立てを行い、除権決定を得る。
④ 単独申請で地上権等の権利の登記を抹消申請する。
現地調査が不要になった点で手続的・費用的負担が軽減される。
買戻し特約に関する登記の抹消
買戻し特約がされた売買契約日から10年を経過したときは、実体法上その期間が延長されている余地がない(民法580条1項、579条、)。
買戻しは、売買契約と同時に特約で定め、かつ、その買戻し期間は10年を超えることができない。
そうならば、売買契約日から10年経過しているなら、登記権利者(売買契約の買主)単独で買戻し特約の登記の抹消登記申請を認めても差し支えない(新法69条の2)。
手続の流れ
① 売買契約と同時に買戻し特約を定めた。
② 売買契約日から10年が経過した。
③ 登記権利者たる売買契約の買主が単独で買戻し特約の登記の抹消登記申請を行う。
なお、買戻し特約を10年未満で定めることもあり、このような場合は、上記地上権等の登記と同じ手続で抹消することもできる。
次回は、形骸化した登記の抹消⼿続の簡略化の続き(後半)、抵当権等担保権の抹消登記について書きます。