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所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定⑫

今回は、相続土地国庫帰属制度の申請権者や土地の要件について書きます。

前回は、相続等を契機に土地所有を望まない人に対し、土地を国庫に帰属させる制度を制定したと書きました。

では、具体的に申請できる人や対象となる土地についてを見ていきます。


申請権者

申請権者は、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により土地の所有権又は共有持分権を取得した者等です(新法2条1項、同条2項)。

上記のとおり、まず、取得パターンとして、単有で取得と共有で取得というパターンに分かれます。

そこから、単有で取得したパターンで2つ、共有で取得したパターン3つのそれぞれのパターンが想定されます。

単有で取得したパターン

① 相続等により所有権の全部を取得した所有者
例えば、父Xが死亡し、子Aが単独で相続した場合。

② 相続等により所有権の一部を取得した者
例えば、父Xから子Aと子Bに土地を売却し、その後、子Aが死亡し、子Bが相続した場合。

単独所有の土地を相続等により⼟地の全部⼜は⼀部を取得した者は申請権者になることができます。

共有で取得したパターン

③ 相続等により共有持分の全部を取得した共有者
例えば、父Xが死亡し、子Aと子Bが相続した場合。

④ 相続等により共有持分の⼀部を取得した共有者
例えば、単独所有の第三者Yから、父Xと子Aがそれぞれ2分の1の持分で土地を購入し、その後、父Xが亡くなり、子Aと子Bが相続した場合(子A4分の3のうち相続で取得した持分は4分の1。Bの持分は4分の1。)。

⑤ 相続等以外の原因により共有持分を取得した共有者
例えば、単独所有の第三者Yから、父Xと法人Zがそれぞれ2分の1の持分で購入し、その後、父Xが死亡し、子Aが相続した場合(子A2分の1、法人Z2分の1)。

共有に属する土地を相続等により⼟地の共有持分の全部⼜は⼀部を取得した共有者は申請権者になることができます。
ただし、⼟地の共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部⼜は⼀部を取得した者と共同して⾏うときに限り、申請権者になることができます。

数十年前に相続した土地でも相続等によって取得した土地なら、本制度の対象となります。

土地の要件

相続した土地を国庫に帰属させることができるといっても、土地の管理コストを不当に国に転嫁するようなモラルハザードの発生を防止する必要があるので、通常の管理⼜は処分をするに当たり過分の費⽤⼜は労⼒を要する⼟地に該当しないことを国庫帰属の要件に求めて法令で具体的類型化を図っている。

却下要件

下記の事由があれば直ちに通常の管理・処分をするにあたり過分の費用・労力を要する。
下記1から5のいずれかに配当する場合は申請が却下となる(新法2条3項、4条1項2号)。

① 建物の存する⼟地
② 担保権⼜は使⽤及び収益を⽬的とする権利が設定されている⼟地
③ 通路その他の他⼈による使⽤が予定される⼟地として政令で定めるものが含まれる⼟地
④ ⼟壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている⼟地
⑤ 境界が明らかでない⼟地その他の所有権の存否、帰属⼜は範囲について争いがある⼟地

却下要件に該当する土地の具体例(法務省HP)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html

不承認要件

法務⼤⾂は、承認申請に係る⼟地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その⼟地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない(新法5Ⅰ)。

次のような土地は、費用・労力の過分性について個別の判断が必要となる。

① 崖(勾配、⾼さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある⼟地のうち、その通常の管理に当たり過分の費⽤⼜は
労⼒を要するもの
② ⼟地の通常の管理⼜は処分を阻害する⼯作物、⾞両⼜は樹⽊その他の有体物が地上に存する⼟地
③ 除去しなければ⼟地の通常の管理⼜は処分をすることができない有体物が地下に存する⼟地
④ 隣接する⼟地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理⼜は処分をすることができない⼟地として政令で定めるもの
⑤ 上記のほか、通常の管理⼜は処分をするに当たり過分の費⽤⼜は労⼒を要する⼟地として政令で定めるもの

不承認要件に該当する土地の具体例(法務省HP)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html

これらのいずれかに該当する場合には、法務大臣は不承認処分をする(新法5条1項)。

却下・不承認処分のいずれについても行政不服審査・行政事件訴訟で不服申し立てをすることは可能である。

次回以降は、民法改正について書いていきます。

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