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雷鳥とラベンダーと土起こし

4 mai 2019 

「あっ、見て!直虎!今日はちゃんとカップル揃ってるよ!」

 ミモザのきいろが眩しかった3月には毎日のように見かけた雷鳥カップル。いつの間にかその姿は見られなくなって「さては、子どもが産まれて、社交界からは一時休暇か?」と、余計な憶測を巡らせていたのだが。

 実は先週、いつものように直虎のローギアを低音でうならせながら若いグルナッシュ=ノワールの辺りに入ってゆくと、いつも仲良く飛び出すはずのカップルのうち、1羽だけがテケテケテケテケテケー!っと行くのを目撃し、少し気になっていたのだ。

 「フランスでは、雷鳥も離婚するのかな、直虎。。。」

 という超勝手な憶測はさておき、ここ岩龍が眠る葡萄畑 Mas du Dragon de Pierres では追剪定も終わり、果てしなく続くかに思えた落ち枝拾いの作業にもやっと終止符が打たれた(ふぅ)。

畑の周辺を見回せばブリュイエールの狂宴も足速に過ぎ、濃い紫のワイルド=ラベンダーや、淡いピンクのミクロの星が集まったような愛らしいタイムの花が眼を楽しませてくれる。 

ガーッ!ガラガラッ!遠耳に聴こえるトラクターの音に、時々、キーンッと言う金属音が混じる。 

「直虎、聞いた?あれ、破砕機の音だよ。皆使ってるんだよね。。。イマドキ、落ちた枝を手で集めて燃やしてる葡萄農家なんて、ウチだけ、ウチだけ。来年は絶対買ってやる〜…。」 

今年は3月初めから例年にない陽気で、追剪定を待たずに黄緑色の芽が次々と顔を出し始め、多くの葡萄農家を慌てさせた。 4月に入り、発芽を見る頃には土の手入れが始まる。風の無い日には追肥を撒く人🤠、除草剤を撒く人😡らで村中にトラクターが行き交い、にわかに村の通りも活気づく。

雨の次の日には、土が柔らかくなったのを狙って、そこかしこの畑に耕運機の音が響く。新しい苗を植える葡萄農家も多い。 ウチはと言えば、トラクターも何も無く、ひたすら手作業。「土のサプリ」カリウムとマグネシウムも手で一株づつ撒いて歩く。

 「一株あたり50グラムづつ。だから、これを使うと良いよ。」

と、ムッシュVが、ミニツナ缶を見せてくれた。後日、テット渓谷側にドメーヌを持つ友人のエムに話したら、「そうそう!ツナ缶使うのよねー、昔から。」どうやら、この辺の「伝統」らしい。

「え〜っと、ヘクタールあたり4千本弱だから、2万5千株はあるよね、直虎。」 

株毎50グラムづつ…。協同組合の店に行き、取り敢えず1トンの「サプリ」を注文した。単位のスケールが大きくて、ちょっとドキドキ。

スーパーで、何年ぶりかにツナ缶も買う。これは、3つだけ(ほっ)。 斜面を登りおりしながら、12キロ程度の桶を持って一株ずつ白っぽい顆粒状のサプリを撒いてゆく。

この後は、ムッシュV にキャタピラ君(と私は呼んでいるが、何とイタリアはランボルギーニ社製!の耕運機)で土を起こしてもらえるよう、頼んである。 

3月、4月には客人が多くあり、直虎も大活躍。ワインを愛する、色々な輩の手が入って、50年代に植えられた葡萄の株たちも嬉しそうだ。

4月の終わりにもなると、若枝が伸びて葉も数枚広がって来る。将来の葡萄の形を彷彿とさせるまだ硬い花房が、顔を覗かせている枝も多くなってきた。そう、美しいきみどり色の葉や若枝を、この地方独特の暴風、カビやウイルス、昆虫等あらゆる病気や怪我が襲う時期。 

これから、病気との闘いが始まる。 

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