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腎臓を破壊しそうな極濃塩味 & すする手が止まらない強中毒性。病院送り級サウナ飯

屋台ラーメン とんこつ貴生@松戸神田

 2024年1月・2月は、なまら忙しく、また十数年ぶりにインフルエンザにも罹患してしまい、最低週1回通っていたサウナにも全く行けないという苦行の日々を送った。

 仕事が一段落した3月3日、桃の節句は僕には関係ない。とにかくサウナだ。今日は松戸の「湯楽の里」へと足を運ぶ。

 松戸を自転車でひた走っていたら、赤い髪で着物を着た2人組の女性が歩いている。松戸にもこういう人たちっているんだなぁと軽く考えていたら、それから黒い軍服に白いロン毛の男の子だったり、鬼太郎コスプレの女性だったりと、やたら道にコスプレした男女が溢れかえっていることに気がつく。
 調べたら河津桜を背景に写真を撮るというコスプレイベントがあるらしい。松戸神社付近の川端には確かにコスプレ男女がひしめき合っている。どうでもいいけど、ひしめく(犇く)って漢字すごいね、本当にひしめいてるわ、牛。

 そんなこんなでコスプレ人たちの交通整理に巻き込まれて、自転車で立ち往生させられながらも、なんとか目的地にたどりついた。
 あー、久しぶりのサウナ!
 何セットかやって旨いハイボールでも飲もう!

 ところが日曜だからか、午後の時間帯だからなのか、サウナも犇きあっていた。なんなら5つある湯船までかなり犇きあっている。今までで最も混んでいるのでは?
 えーうそでしょ。こっちはね、2ヶ月待ちに待ったご褒美サウナなんだよ? 君たちとは今日にかける意気込みが違うんだよ! そう思うものの、ここにいる他人には全く関係のないことだともわかっている。
 しゃあない、サウナ待ちの列に並ぶか。くっそ、ラーメンだって並びたくないのに!とブツブツ愚痴る。
 まあ高温サウナはそこそこ広く30人くらいが入れるので、そんなに待たずにサウナ内に入ることができた。

 あー…。90度以上の熱気を浴びる喜び。
 テレビでは日本アカデミー賞の事前番組が流れていた。福田村事件がアカデミー賞になったら面白いんだけど、そんなことにはならないんだろうな。

 犇めき合うサウナと水風呂のセットを3度堪能し終えて、さてハイボールでもキメるかと、食堂へと向かう。おつまみをどうしようか?と考え始めたところで、そういえば午後遅めにきてしまったので微妙なタイミングだということに気がつく。

 16時半。

 夕飯をここで食べるか?それとも「湯楽の里」の近くのお店に行くか? と悩み、まずスマホでこのあたりの店を探してみることに。

 と、すぐ近くにラーメン屋がある。しかも「とんこつ貴生」だった。

 もう30年近くも前になるが、三郷にも貴生があった。それこそ90年代でラーメンブームが起こった頃、僕は貴生へと行っていた。
 味が濃く、豚骨ラーメン屋特有の豚臭さがあり店外に透明なビニールのカーテンが下されている屋台風なラーメン屋さん。とても中毒性のある豚骨ラーメンで、浅草の「ラーメン弁慶」と閉店してしまった巣鴨「千石自慢ラーメン」が合体して独自進化した感じの一杯だった。
 東京で一人暮らしを始めてから行かなくなり、いつの間にか閉店してしまったため、その後お店に行くことはなかったのだけど、たまに食べたいなぁと思い出すラーメンの一つなのだ。それが時を超えて、こんなタイミングで僕の前に現れるとは! 神様ありがとう!

 急激に思い出したら、たまらなくあの味が食べたくなった。よし、店を出てさっそく「貴生」へと思ったら、開店は18時から。
 ぐおお!
 今すぐ食べたい気分なのに、あと1時間半我慢しろというのか? 神様は鬼か!?

 今、何か食べてしまえば、「貴生」でラーメンを食べる時に取り返しのつかない過ちを犯したと後悔するだろう。そんな愚行だけは避けたい。とりあえずハイボールだけで我慢する。

 いつもなら大満足なハイボールなのだが、逆に胃を刺激して、誘惑が襲ってくる。
 ぐおお!
 なんか食べたい!
 しかし、「貴生」までの辛抱だ! これは神が与えし試練なのだ!
 そう自制心を働かせてみるも、あの懐かしのラーメンの記憶が脳裏を埋め尽くす。これはただ店前で順番を並んでる時よりも地獄。

 気を紛らわせるため食堂の横に併設されているお休み処の漫画棚からアオアシとブルーロックの最新刊を持ってきて読み始めるが、全然頭に入ってこない。集中できないので何度もスマホの時計を確認するが、すればするほど1分がものすごく長く感じられる。これはいっそ、食べログでも見て「貴生」で何を食べるか?を考えた方がいいのでは?
 スマホで「貴生」のページを眺める。

 あれ? みんなホルモンメンってのを食べてるんだな。トリプルとかいう人もいる。あーそういえば昔もカウンター上に貼られたメニューにホルモンの文字があったな、でも僕は一度も食べたことないや。そういやダブルとかトリプルってのも確かにあったなぁ。
 あとはミソラーメンベースを頼んでいる人が多いのも初めて知った。
 当時は特にとんこつラーメン初心者だったから、普通のラーメンかチャーシューメンしか頼んだことがない。あと、そうか。今思い出したのだけど、いつもニラが大量に乗っているイメージだったが、これはいつもニラトッピングをしていたんだっけ。よし、今日もニラをトッピングしよう。
 ミソホルモンは気になるけど、やっぱり懐かしのチャーシューメン食べたいな。確かチャーシューメン頼むと最後食べきれない感じになるんだよな、と思い出したものの、やっぱり久々に食べたい。あと、ホルモンは単品でも頼めるみたいだから、チャーシューメン・ニラトッピングと単品ホルモンで決まりだな。
 うーん、早く食べたい!
 時間を確認すると15分ほどしか経っていなかった。苦行は続く…。

 もう一度湯船に戻ってみたり、髪を丁寧に乾かしてみたりとで、ようやく18時に「湯楽の里」を出る。ここから歩いて5分もかからない。「貴生」への枯渇感もMAXだ。

 黄色い看板と赤い屋根そして透明ビニールの囲い。ようやく到着だ!

 しかし、僕は大前提を忘れて大失態を犯していた。
 18時5分。既に満席でさらに5人の待ちの列ができているのだ。
 そうか、ここも並ぶのか…。食べログ見たんだから、ちゃんと確認しとけば良かった。そしたらもうちょっと早く「湯楽の里」を出て並んで…。

 極限の苦行を耐え抜いたところからのこの待ちは筆舌に尽くしがたいほど辛い。例えるならトイレ(大)を我慢して我慢して、限界ギリギリでようやく辿り着いたものの、個室が全部埋まっていた時の絶望感だ。
 ホッとして緩んだ心に突きつけられる悲壮な現実。もはや漏らすしか道はない。ここからもうひと我慢できる人間なんて、そもそも限界ではなかった人か特殊な訓練を受けた工作員くらいしかいないはずだ。と、気持ち的にはそのくらいの辛さを感じながら列に並ぶ。

 長い長い15分を耐え抜いて僕は店内に入り、店員に想定通りの注文を伝えてお金を支払う。ここは券売機ではなく直接店員へ前払いするシステム。席につき、今日は本当に長い午後を過ごしたと感じている。コスプレを見たのは遥か昔のことのようだ。

 カウンターに座ってからさらに10分ほど待ってようやく目の前にラーメンが到着した。おおー、これだ。20数年の月日を超え、2時間ほどの我慢を超えた対面にちょっと感動すらする。涙出てきそう。

 いただきます。

 スープを一口すする。うん美味しい。あれ? でも、こんなにさっぱりだったっけ? 昔の方がなんかパンチあった気がするんだけどな、もう一口すすりながら、ニンニクの入れ物に目が止まる。そうだ。そういや毎回ニンニク入れてたよなと思い出した。1スプーン生ニンニクをスープにドボンしてちょっと混ぜてもう一度スープを飲んでみる。あ、こんな感じだったかも。僕の魂は20代の頃にタイムリープした。

 ニラもやっぱりいいよね。このバラチャーシューも昔ながらの感じ! そんでもってこの中太平打ちでちぢれ麺。あまり他では見ない感じだけど、これぞ「貴生」という感じなんだなぁ。やっぱり旨い。
 今回は初のホルモンも頼んでいる。まずはスープに入れずに単品で食べてみる。結構辛いけど、なかなかいい感じ。ホルモンっていうけど、内蔵ではなくて、普通の豚肉をシチューみたいに煮込んだもの。脂身のない豚角煮というか、タンシチューというべきかの食感。辛くてホロホロの肉は結構イケる。

ホルモン単品

 今度はスープインしてみる。ほほー、まさに辛味噌ラーメンみたいになるのね。スープにつけても結構辛い。一味なのかカイエンペッパーなのか、辛味噌の汁にはつぶつぶがはっきり見てとれる。このホルモン一つで元のラーメンからものすごい急激な味変が楽しめてしまうなんて。このジャンプ率はすごい。

 半分ほど食べて、そうなんだよな!と改めて納得する。

 記憶の中でも「味が濃い」と強烈に残っているのだけど、食べ初めは、あれ?さっぱりしてる?くらいな感じなのだ。しかしそれは壮大なカムフラージュというか錯覚で、途中から突然、結構味が濃いことに気付く。結構どころか脳が痺れてくるくらいの塩気だ。今回はホルモン入れたからさらにブーストかかって塩気を感じる。

 じゃあ食べるのやめたらいいと思うかもしれないけど、なぜか「もう一口だけ」「もうひとすすりだけ」と手が止まらないのがここのラーメンだ。

 中毒性がかなりヤバい。絶対、魔法の粉とか入ってるに違いない。
 ボリュームある中毒系というと二郎系が頭に浮かぶ人が多いと思うけど、ここは全然別の進化を遂げた別路線の中毒系。ホルモンあり、トッピングもあり、中太麺なのに替え玉あり、なんでもありのボリューム背脂とんこつ破壊王なのだ。

 なんとか完食してやっぱり満腹になった。(※スープは塩分濃度高すぎて完飲してない)。もう食べれない。満足。

 チャーシューメンのチャーシューのボリュームが結構あってこれが腹を膨らます。あと、ホルモンも旨かったのだが、これもボリュームたっぷりだった(脂身なしの豚角煮3つ分くらいの肉の量がある)。とはいえ、これは僕の感想で、「貴生」に来る人は普通にダブル(チャーシューとホルモン入り)やトリプル(ダブルのミソラーメン版)の上に替え玉(中太麺!)頼んで、さらにご飯やホルモン丼などを頼んでいる人がゴロゴロいるので、二郎系や家系でガッツリ食べる人には普通なのかもしれない。

 僕の好みとしてはやっぱり普通のラーメン(orチャーシューメン)と単品でホルモン(orホルモン丼)あたりを頼んでホルモンは味変に使うのが良いかなと思う。僕はホルモン入れない方のノーマルが好き。ニラは入れるのおすすめ。ネギ増しも良さそうだなと思った。

 ただ、今度はミソラーメンにも挑戦してみたい。味噌豚骨って旨いよね。「貴生」だとどんな感じになってるのかすごく興味ある。多くの人が食べてるからかなり旨いと想像できるし。

 今まで十数回は来てる「湯楽の里」だけど、改めてここに来る理由が増えてしまった。というより「湯楽の里」&「とんこつ貴生」を新たなサウナのセットメニューにしようと決めた。

 これが24年の僕の「桃の節句」だ。


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