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NAMM2023にて、Neutoneの展示を行いました。

4月13日から15日にかけてアメリカ、カリフォルニア州のアナハイムで開催されたNAMMショーに、Qosmoとして初めて展示に参加してきました。NAMMショーは、楽器やレコーディング機器、音楽ソフトウェア関連の展示会として世界最大といわれる展示会で、会場となったアナハイム・コンベンションセンター(幕張メッセをさらに大きくした会場を想像してください)には、ドラムやギター、ピアノから、シンセサイザー、DJ機器、音楽ソフトウェアから、スタジオ家具、ライティング機材まで、音楽の演奏や曲作りに直接、間接的に携わる人たちのためのさまざまな道具が所狭しと並べられていました。

NAMM 2023の会場
会場内部

そんな中、Qosmoとして昨年から開発を続けているNeutoneを直接触ってもらえるブースを展示しました(Neutoneに関してはこちらの記事を参照ください)。

Neutoneのデモ
Neutoneのデモを食い入るように見つめる人たち

僕たちがブースを構えたコーナーは、GPUAudioさんを主体とするInnovation Loungeと称する部屋で、サンプルライブラリのサブスクリプション・サービスを提供するSpliceや、画像生成AIモデルのStable Diffusionで有名なStability AIの音楽部門Harmonaiの研究チームなどと僕たちとでスペースを共有しました。
ちなみに、GPUAudioは、並列処理が得意なGPUの特性を活かして畳み込み演算を高速化し、空間音響処理の最適化のためのテクノロジーを提供する会社ですが、近い将来にはオーディオ処理AIモデルの推論にGPUを役立てるというシナリオが考えられます。またSpliceはサンプルの分類や検索にAIを活用していますし、Harmonaiの研究チームはStable Diffusionでも使われるDiffusionモデルをオーディオの生成に活用する研究を進めています。そんなわけで、その名の通りInnovation Loungeには、AIやVRなどの新しいテクノロジーと音楽の接点になるような会社が集まっていました。

DALL-E2やMidjourney、Stable Diffusionときて、ChatGPTが大きな話題を呼ぶ中で開催された今年のNAMM。AIが未来の音楽をどう変えるのか、間違いなくAIが話題の中心にあるはず。初めての参加となったNAMMに対して、そんな私の期待は見事に裏切られました。フロアを色々歩いてみても、AIを使った商品はおろか、AIに対する言及は私たちの部屋を除いてはほぼ皆無といった印象でした。AIが既に当たり前になりすぎていてわざわざ言及するまでもない、といったわけでもなさそうです。会場であった知人の多くも同じ印象を共有していました。

前述の通り、NAMMが主に音楽を演奏する、作る人たち、アーティストやプレイヤーを対象としているのに対して、いわゆる音楽AIスタートアップの多くはそうした人たちをAIによる自動化によって置換しようとしている。そのため、NAMMとは相性が悪いのではないか、そうしたうがった見方もできます。

その数少ない例外が、私たちのInnovation Loungeでのセッションだったといえます。各社のブースのほかに、最新の音楽テクノロジーを紹介するトークセッションやAIと音楽に関するパネル・ディスカッションなどが開催されました。Qosmoからは、AIエンジニアでNeutoneプロジェクトをリードするAndrew Fyfeが、Neutoneについての講演を行ったほか、NYをベースに活躍するキーボーディスト、BIGYUKIと僕でNeutoneを使ったパフォーマンスを行いました(昨年末のUNIT、3月の代々木上原でのパフォーマンスを経ての三回目のコラボレーションです)。

Andrew FyfeによるNeutoneのプレゼンテーション
BIGYUKI feat Neutone

Neutoneの展示ブースにも多くの方が足を運んでくれました。その大半がNeutoneのことをそれまで知らなかった人たちで、「何か新しい音楽テクノロジーの展示はないか」と探して見つけてきてくれた人たちでした。そうした人たちにNeutoneが得意とするAIならではのリアルタイムの音響処理、音色変換などをデモンストレーションできたのは大きなプラスでした。

またHarmonaiの研究チームは、テキスト入力から音楽を生成するStabule Diffusionの音楽版とも言える研究のプロトタイプを発表しています。同じ空間を共有していたこともあって、Harmonaiのチームと情報交換が進んだ点でも展示できてよかったと考えています。(NAMMに限らず、まだまだ世界的に見てもAIによるオーディオ処理・生成に取り組むグループや研究者のコミュニティはまだまだ狭いと言えそうです。)

Uberのドライバーに聞いた感触からも少し縮小傾向にあるという印象のNAMMですが、Jose Jamesがブースに来てくれたり、ホテルに向かって歩いていてDJ Qbertとすれ違ったり.. スティーヴィー・ワンダーがふらふら歩いていたり(人だかりがすごかった!)と、音楽好きにはたまらない空間であるのは間違いありません。

Qosmoが考える音楽におけるAIは、ミュージシャンを置換するものではなく、あくまでもその創造性を拡張するものである。そうした理念をもっともっと多くの人に伝えるためにも、さらにAIが社会に浸透しているであろう来年にもまたNAMMやそれに類する展示会にQosmoとして、Neutoneとして参加してみたいと考えています。

PS. アナハイムといえば一昔前だったらディズニーランドが定番ですが、最近ではなんと言っても大谷翔平選手擁するエンジェルスの本拠地として知られています。Qosmoチームで野球観戦に赴いたものの、なんとその日は今シーズンで初めて大谷選手が出場しなかった試合に当たってしまいました。残念…

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