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スキーマ療法について①

読んでくださってありがとうございます。

自分は機能不全家族のもとで育ち
精神疾患(うつ病、AC、DESNOSなど)で苦しみそこから回復した経験があります。

今回はスキーマ療法のさわりを紹介します。
自分はスキーマ療法をやってはいませんが
回復過程において、スキーマ療法と似たことを
様々な知識を組み合わせて行いました。

スキーマ療法は役に立つ人が多いのでは?
と思っているのでさわりだけ紹介します。

とはいえ、
スキーマ療法を扱える心理士は少ないです。
また、セッション数を多く重ねる
必要があるのでコスパが悪く
開発されたアメリカでも保険の兼ね合いで、
あまり流行っていないのが現状です。

日本でも扱える心理士が増えてくれたらなあ
エビデンスベーストの心理療法だし、
保険適応にならないかなあと願うばかりです。

こんな記事も書いてます。
良ければ読んでください。

トラウマついて思ってたこと

自分は10年以上前の大学時代に
認知行動療法を主に学んでいたのですが
授業の中で『治る人』しか扱っていない
という印象を受けていました。

例を挙げると
うつ病、強迫性障害、パニック障害、単回性のPTSDなどです。
授業では、
境界性パーソナリティ障害(BPD)
解離性同一性障害(DID)など
「虐待」などに代表される
家庭に病理を持つケースには
殆ど触れていなかったです。

このトラウマを軽視する状況は
世界的に使われている精神障害の診断基準の
DSMが「操作的診断基準」を採用しているのが
一因だと自分は感じていました。

「操作的診断基準」とは簡単にいうと
表面上で観察できることから
病気を診断しようとする試みです。
どのような症状が現れて、
いつから始まり、どの程度継続しているのか
ということによって診断するというものです。

操作的診断基準は「原因」を考慮しなくとも
病気を診断できるということです。
「病因論」のトラウマとは
非常に相性が悪いものでした。

この頃、アダルトチルドレン、愛着障害、
DESNOS、複雑性PTSD、発達性トラウマ性障害などのトラウマ起因の数々の概念が提唱されていましたが、まだ病名ではありませんでした。

機能不全家族やマルトリートメントが
精神疾患の問題の一つだと認識されながらも
『家庭にすべての原因があるわけではない。』
(それは確かにそうなのですが)
といったように、
家庭に病理を持つケースは軽視され、
臭いものには蓋をするような扱いを受けており
苦しんでいた人たちが「異常者」とみなされ
その苦しみは見過ごされてきたのでした。
(自分が苦しんでいた時の主観です)

こうした状況が徐々に変化したのは
WHOが作成した診断基準のICDに
『複雑性PTSD』が2018年に
診断項目として採用されてからです。
(1992年にハーマンが提唱した複雑性PTSDと
ICDの複雑性PTSDは少し異なるんですけど)

心理療法について思ってたこと

臨床心理学を学んでいた頃(10年以上前)はカウンセリングの流派は主に3つあるとされていました。

①精神分析
②来談者中心療法(ロジャース派)
③認知行動療法

今でこそ、
認知行動療法は広く知れ渡っていますが
当時、認知行動療法を受けられるクリニックは殆どありませんでした。
カウンセリングといえば、
来談者中心療法ばかりでした。

授業ではそれぞれの流派の特徴について
下記のように述べていました。

①精神分析
心の構成要素のひとつ「無意識」下に
抑圧されていた感情や記憶を意識化
し、
受け入れる事で気づきや症状の軽減を目指す。

②来談者中心療法
相談者の考え方や感じ方に対して
カウンセラーが無条件の肯定的関心をよせて
共感的に理解していくことで、
相談者自身の気付きや成長を促し
問題解決を目指していく。

③認知行動療法
現在困っていること(主訴)
に焦点を当て
アセスメントで自身のストレス状況を把握し
認知再構成法や問題解決療法等の技法を
組み合わせて悪循環から抜け出すことを目指す。

自分は「現在」に焦点を当てすぎる
認知行動療法を昔は非常に軽視していました。

『歪んだ認知(非機能的認知)』は育った環境が歪んでいて、その環境を生き抜くために歪まざるを得なかったという認識があった為、「過去」も見る必要もあるのではと常々感じていました。

自分としては、
これらの心理療法で大事にしている要素は
どれも大事なものだと感じており、
何で心理療法は統合されないのかと
大学生の頃から非常に疑問に思っていました。

これらの要素を全て含んでいるのが
スキーマ療法です。
すみません、前置きが長くなりました。

スキーマ療法とは

スキーマ療法はアメリカのヤング博士が考案し
認知行動療法を発展させたものです。

かなり若い心理療法で1990年に開発され
まだ発展途中の心理療法です。
色んな心理療法から影響を受けており、
統合的な治療法です。
(精神分析、対象関係論、アタッチメント理論、ゲシュタルト療法の体験的技法、感情焦点化療法、Selfは単体ではないという考え方等)

近年では、第三世代の認知行動療法のACTや芸術療法、マインドフルネス、EMDRとの統合も検討されています。
ボトムアップ系の身体志向系心理療法
ともいつか統合される気がします。

認知行動療法を応急処置だとすると
スキーマ療法は根本処置になります。

認知行動療法のみでは困難だとされていた
家庭環境や生育歴に病理を持った疾患にまで対象を広げている治療法です。
境界性パーソナリティ障害などがメインですが
慢性うつや複雑性PTSDの治療法としても期待されています。
(慢性うつや複雑性PTSDに対するスキーマ療法による効果のエビデンスは現在臨床研究中です)

スキーマ療法では、
無意識の領域を「スキーマ」という概念を用いて、クライアント自身が自分を理解することを促します。

どのような早期不適応スキーマを持っているか
どのような場面になるとそれが賦活するのか
そのとき、どのような行動を取るのか
といったことをアセスメントしたりします。

早期不適応スキーマの一例
「見捨てられスキーマ」

「人は自分を見捨てていく存在だ」
「自分はいつも人に見捨てられる」
というスキーマ。

自分が他人と安定した関わりを
継続して持つことがイメージできない。
自分にとって大切な人をいつか
失ってしまうのではないかと常に考えている。
「今一緒にいたとしても、何かあったら
大切な人は私の元を去っていくだろう」
「人はみんな、私を見捨てていく」

「見捨てられスキーマ」を持つ人に
共通してみられる感情は
大切な人を失うのではないかという不安(恐怖)
失ったと思いこんだ時に生じる悲しみや抑うつ
自分のもとを去った人に対して怒りなどがある。

このスキーマを持つ人の特徴
・見捨てられるのが怖くて、相手にしがみつく
・見捨てられる前に、
  自分から相手との関係を切ってしまう。
・「見捨てられて傷つくなら、
 人と関係を持たない」と考え
 はじめから人と関わらないようにして、
 大切な人を作らない。

(早期不適応スキーマの詳細は次の記事で紹介)

また、なぜそのスキーマを持ったのかを探る為に
自分の養育者はどのように自分を育てたかを
過去に立ち戻って理解し体感します。

これがスキーマ療法が
「痛み」を伴う治療法だとされる所以です。
その「痛み」を体感することを支える為
治療者との関係が非常に重要となってきます。

また、認知行動療法で使用される
認知再構成法などの認知的技法や
SSTやアサーション、エクスポージャーなどの
行動的技法に加えて
イメージワークなどの体験的技法も使います。

空の椅子と対面になって座り
その空の椅子に自分の親がいることを想定し、
子どもの頃の悲しみや怒りといった感情を
親に伝えるようなイメージワークを行ったり、
過去の辛い経験に遡って、
大人になった自分またはセラピストが
小さい自分を守るロールプレイを行ったりします。(これらはアダルトチルドレンの自助本にも似たようなものがありますね)

これは認知的技法だけだと、感情レベルの変化が起きず、根付いた価値観(スキーマ)を変えることが難しいからです。

とはいえ、感情が強く揺さぶられることになるので治療者との関係が非常に重要です。(2回目)

認知行動療法は過去の問題の要因を問わないです。主に「今ここ」に注目します。

しかし実際には,過去の要因を問わなければ
治療が進まないケースが多いこともわかってきてます。

研究でも小児逆境体験(ACEs)で傷つき、
パーソナリティーの部分に
影を落とすことが明らかになっています。
その点でも、過去を扱う必要があるのは
至極まっとうなことだともいえます。

また、その他の技法では
スキーマモードという治療戦略があります。

少し例をあげると
「ヘルシーアダルトモード」の自分が
他のモードの自分と対話するというものです。
「こんな自分じゃだめだ!」と自身を批判する
「懲罰的批判モード」の自分をなだめ、
心の奥底で悲しんでいる「脆弱的チャイルドモード」の自分を癒したりします。
この技法はIFSや自我状態療法と似ているとも思います。

スキーマ療法の柱となる考え

治療的再養育法(Limited re-parenting)

スキーマ療法では、
治療者との関係を非常に重要視します。
セラピストが『良い養育者 』としての役割をし
治療の場という決められた枠組みの中で
クライエントの心を育てなおしていきます。
そして、治療関係の中で癒されることを通して
クライアントの中にも
『良い養育者(ヘルシーアダルトモード)』を
内在化させ、育てていくことを試みます。

クライアントのことを「○○ちゃん」と
子どもの頃に呼ばれていた呼び方で声掛けしたりします。
これはアタッチメント(愛着)理論に基づいた考えで従来の心理療法とはかなり異なります。

従来の心理療法では
『心地よさを感じ、満たされたいという
クライアントの願望を直接的に満たすことは、
自己鎮静の発達を妨げ、弱体化させる』
と解釈しています。
しかし、スキーマ療法は
『依存欲求を他者によって満たされることを通じて、自己鎮静の力が自然と育まれる』
と解釈しています。

ここが非常にユニークなポイントで
クライアント自身に自分を癒す方法を身に着けさせるというよりも、
他者から癒される経験を通して
自分を癒す方法を学んでいくということです。

つまり、スキーマ療法において
セラピストは「中立的」立場ではなく
クライアントの「味方」の立場になります。

クライアント自身が過去の経験から
人を信じることが難しいからこそ
治療者自身が「安全基地」として機能することを目指します。

ただ、この考えは患者を依存関係に
陥らせることと全く異なります。
それがもう一つの考え、共感的直面化です。

共感的直面化

クライエントの「いま・ここ」で起こっている体験に関して十分な共感を示しつつ、
治療モデルを通じてクライエント自身に
客観視を促すことを指しています。

例えば、治療場面において
治療の時間の終わりが近づくにつれて
クライアントが不機嫌になり、
カウンセラーに時間をもっと伸ばすように
怒って要求したとします。

カウンセラーはそのことを
問題行動とみなすのではなく
クライアントの持つ「見捨てられスキーマ」が賦活したと仮定します。
そこでクライアントに
『今「見捨てられスキーマ」が賦活したのではないか?』ということを伝え、
クライアントに外在化したシート等を見せて
認識が合っているかを確かめます。
もし認識があっていた場合、治療時間の終わりは見捨てることとは違うことを説明します。

ただその際に、怒られてしまうとカウンセラー自身も悲しくなるし、良好な関係を築くのが難しくなると率直に伝えたりします。

共感的直面化とは、
治療関係の場をうまく利用し
スキーマを保持している理由に共感を示す一方でスキーマを変化させる必要性に直面させるというものです。

なので、治療的養育法の中で満たすのは
表面的欲求にそのまま沿うこととは異なります。

依存的なクライアントには、
あなた自身にも力があると
励ますかもしれないですし
完璧主義なクライアントには
そこまで完璧なあなたじゃなくても大丈夫だよ
と伝えることにもなるかもしれません。

スキーマ療法は受容と変容のバランスを
重要視した治療法だと言えます。

スキーマとは

スキーマ療法では、
認知行動療法ではあまり扱うことがなかった
無意識の領域を「スキーマ」という概念を用いて説明しています。

すぱ部様作成の画像から引用


スキーマは本来であれば
私たちを生きやすくさせてくれるために形成されたものです。

例えば、
「信号スキーマ」
「青信号は進め、赤信号はとまれ」というスキーマ。
「信号が青になった!進めと止まれどっちだったかなあ?…そうだ進めだった!」のように考えることは不便です。

スキーマがあるから、私たちはなめらかに生活することができます。

早期不適応スキーマとは

虐待され、いじめられた経験のある人の例をあげます。この人は以下のようなスキーマを持つと考えられます。

「人は信用できないスキーマ」

そのいじめの最中にいる時
周囲の人間は本当に信用できない人ばかりなので、そう思っていることは自分を守ることになります。
「人は信用できないスキーマ」は適応的に働きます。

しかし、大人になってその環境を抜け出した時
「人は信用できないスキーマ」は不適応的に働きます。

周囲の人間は「信用しない方がいい」人もいますが、人間は、自分にとって信じられる人、互いに信じあえる人と繋がって共に助け合いながら生きる存在です。

「人は信用できないスキーマ」を持っている人はそのスキーマを持つことによって、
人と関わることが難しくなっています。

早期不適応スキーマの
成り立ちやその種類に関しては長くなるので、今回の記事はここまでとします。

長い文章を読んでいただき
誠にありがとうございました。

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