【追悼記事】日本理化学工業 大山会長を偲んで(個人的思い出含む)
2019年2月7日に日本理化学工業の大山会長がお亡くなりになり、3月29日に川崎市にてしのぶ会がとり行われたというニュースが、飛び込んできました。平成の終わりにまた偉人がこの世を去られるニュースで、時代の移り変わりを強く感じています。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
個人的に少しばかりの想い出もあり、追悼の意を込めてこうやって記事にさせて頂いております。このことで大山会長や日本理化学工業という素晴らしい存在を知る方が一人でも増えましたら幸いです。(十分に有名なので不要かもしれませんが、個人的な感情整理も含めて書かせて頂きます)
大山会長と日本理化学工業さんを始めて知ったのは、もう10年以上前のことだと思いますのでいつどんなきっかけで知ったのか実は覚えていません。
この本を読んで知ったのが先だったか、それともWeb記事か何かで知って本を読んだのか前後関係がはっきりしませんが、とにかくとても衝撃を受けたのを覚えています。
もしご存じない方のために少し補足しますと日本理化学工業さんは、学校などで使用するチョークの国内シェア30%ほどを占める企業でありながら、全社員の70%の方が知的障害の方であるという、とても素敵ですごい会社です。そして日本理化学工業を一代でそういう企業に育てられたのが大山会長なのです。
日本理化学工業さんを知った私はどうしても現場をこの目で見たい衝動にかられ、何の縁もゆかりもない中でほぼ飛び込みに近い形で会社に訪問させて頂きました。今から10年ほど前のことです。そこで忘れられない体験をすることになります。
事前に見学希望の電話の一本くらいはしたでしょうか。そういったことさえ忘れてしまいましたが、会社に到着した見ず知らずの私たちは驚くほど丁寧なご対応をして頂きました。
まず待合室の通して頂き、にこやかにほほ笑む柔らかな空気をまとった女性にお茶を出していただきました。この時点で、私たちはとても恐縮していたのですが次の言葉でさらに驚くべき展開となります。
「すこしお待ちくださいね。後で大山が来ますので。」
!!!!!!!!!
そうなのです。この日の見学のアテンダントを大山会長自らにして頂いたのです。聞けば私たちだけでなく、時間の余裕のある時はかなり積極的に見学者の受け入れをされていると確か聞いたように記憶しています。
当時からすでに、大山会長のお名前や日本理化学工業さんの取り組みは障害者雇用に少しでも関わったことのある人間なら知らない人がいないくらい有名でしたが、そのさなかにどこの者ともわからない若輩者の私たちに時間を割いてご案内頂いたのです。
大山会長自らの解説付きとうこの上なく贅沢な環境で、理化学工業さんのチョーク工場を見学させて頂きました。その時見た光景が、支援者としての私の価値観や考え方に今でもとても大きく影響を与えています。その場にいる授業員のかたのほとんどが知的障害の方でしたが、全員がみずからの能力をフルに発揮してやりがいと誇りをもって働かれていました。
「こうやって見学の方がしょっちゅう来られることも実はここの職員にとってのモチベーションにもなっているんですよ」
確かこんなことをおっしゃっておられたように思います。
能力の発揮という意味で覚えているのは、「チョークのまがりや欠けを検知して省く名人」や「素早くチョークを仕分ける名人」などがおられ、それぞれの認知特性や集中力にあった業務が振り分けれられていました。
また、難しい部分に関しては使う道具を徹底的に改良し、だれがやっても同じように出来るような環境を作られている工夫(環境調整)についても見せて頂きました。
私は今「ニューロダイバーシティ(脳神経の多様性の尊重と活用)」というテーマを支援者としての自分の中核テーマとしているのですが、日本理化学工業さんを見学させて頂いた体験は間違いなく大きく私に影響を与えています。
見学後に大山会長さんが
「チョークもいつまで使うものかわかりませんがからね。新しい商品開発にも力をいれています。彼らの職を守らないといけませんからね。」とおっしゃっておられたことがとても印象に残っています。
そしてその言葉の通り、チョーク以外のユニークな商品も次々生み出されています。お子さんおられるかたなどにとてもお勧めですよ。宣伝のためにリンク張っておきますね。
【ガラスにも書けて後で消せる新しい筆記具 キットパス きっず】
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帰り際に、大山会長にこんなことを教えて頂きました。
「最初にお茶をお出しした女性を覚えていますか?実は彼女がうちで一番最初に働いた知的障害のある従業員なのです。彼女たちから今の理化学工業につながったすべての始まりの人です。彼女のように長く働いてくれる人がたくさんいることがうちの自慢なんですよ。」
この言葉を聞いて、大山会長のお人柄やお考えがすべて凝縮されている気がして、こころから感動したことを覚えています。伝説の1シーンを目の前で目撃させて頂いたような不思議な高揚感を感じていました。
訃報を聞き、半ば勢いに任せて書かせて頂きました。読みにくいところや不適切な表現もあるかと思いますが、そのまま公開させて頂きたいと思います。
本当に本当に心からご冥福をお祈り申し上げます。ありがとうございました。