一目見たあの子に会いたい（拝啓中田幸平先生①）（ベーゴマ考111）

玩具研究家「中田幸平」先生

子どもたちの遊びに対して
各1ページで紹介するような本はあるが
深く考察した書物は少ない。

まして
悪ガキの代名詞ともいえる
ベーゴマ
メンコ
ビー玉など
賭けに遊びを深掘りしたものは皆無であり
どちらかと言うと、「昭和の遊び」をまとめたものにもあえてそれらを省いたものは多い。

そんな中玩具研究家の中田幸平氏の著城
1970年の『日本の児童遊戯』は
かなりベーゴマのことを網羅している書物であり、
歴史や昭和の加工の様子など
子どもたちの遊びの歴史的背景を伝える上で重要な内容が多く含まれている。
この本がないと、ベーゴマの歴史に空白時代が生まれたことは間違いない。

この本で取り上げている遊びは
14種
…なんとみごとなラインナップ！
ビー玉
メンコ
ベーゴマ
根っ木
独楽
石投げ•石合戦
石蹴り
将棋遊び
竹馬
拳玉
扮装
タガまわし
凧
じゃんけん
今回は中田幸平氏の名著の中にある
ベーゴマについて見ていきたい。

玩具研究家…なんて素敵な響きや!

魅惑の見開き写真

この本の巻頭ページには
ベーゴマがならんだ写真がある。
いまみると
ほとんど持っている自分にビビるが
持ってないうえに
目を見開いたものがある！

3 空バイゴマ（江戸）江戸時代

中に彩色がしてあるのだ。
なんやこれ
東京側は「空バイ」とよばれる中が詰まっていないものだったため、
その後「おちょこベー」が生まれた

これは周知の事実だが
実際に空バイはみたことがない
これが見てみたい！

平塚市博物館

調べていくうちに
中田先生は神奈川県平塚市博物館に
先生の研究で集めた玩具コレクションを
寄贈されていることがわかった。

中田先生のことを調べても、ご存命でいらっしゃるかどうかもわからない。
それを川口市郷土資料館の井出先生にお伝えしたところ、速攻で閲覧申請して速攻で見に行ってきはった。

こう言うところが東西2人で調べている強みだ！

例のブツ①（赤）

で…ででーん！

なんと言う美しさだ。これは見たことがない。
どうも「鉛」が下に入っているようで、その上部を粘土か蝋で埋め、その上に彩色を施している。

私が持っている、「貝独楽」と比べても
凹んでいるのがわかる。

率直に、この彩色がいつの時代のものなのかは不明である、中田先生は江戸期と記しているが、もっと後の時代のものなのかは確証がなくわからない。
少なくとも「日本の児童遊戯」が刊行された1970年よりはだいぶ前ということが想像できる。

中の彩色は成分分析しないと年代はわからないが
その他の角度の写真をみると
率直に申し上げて…

こんなこと言うのはなんだが…

なんていうか…

加工が下手だ！！！

正直。これではかなりの長時間回るわけがないと言う加工をしている。

これは作った人しかわからないが、
切断面が高すぎ、加工が甘いのだ

この状態で果たしてバランスが取れるのだろうか。
逆にこれでまわったら
「参りました」としか言いようがないw

しかし、「空バイ」と言う概念は理解できた。
下に鉛がはいると、一番上部は鉛が水平になるのではなく空に触れたところから冷えるので螺旋状に鉛が入りなんと言うか先端は丸っこく冷えて固まる。そこに蝋か粘土で凹凸を塞ぐように平に塗り、その上で彩色を施したと思われる。
イメージとしては、鉛の上を塞ぐ蓋上の蝋や粘土の盛り方により重心をずらし、そのつどまわしてちょうど良いバランスを調整していたのではないだろうか。

私は真鍮バイも蝋を入れる部分があったのは
それによりバランスの調整をしようとしたのではないかと推測する。

例のブツ②（青）

続きましてもう一つ

こちらの方もカットする位置が上すぎると感じる。いままでの常識を覆すくらい「上」でカットしている。

ここでの注目はこの写真
蝋が富嶽三十六景の白波のようにうねっている。
そして、よくみると

赤と同じように、花柄のような雪の結晶のような柄がみえる。
同じ作者が作ったのであろう。

彩色のハゲぐあいからみると、歴戦の勇者のような顔はしている。中心部に青い彩色が残っているので、表面を研いだとはおもえない。
また、土のようなものが蝋の上についていることから埋まっていたものでない限り、鉛⇨蝋⇨粘土（土）と充填しその上に彩色を施していたと思われる。

今一度この作者に憑依してみよう。
この波打つ蝋は、上から土を被せるのであれば
機能的に波にしておく必要があったと思われる。
目を閉じてわたしがこの作者であると考えると、
あえて翼のように波打つ形で蝋を取り付けることで、平な面を穿つよりも、あえて作った翼の先端を少しづつ欠けさせて（削っていく感じ）いくことで、簡単に重心をかえてよりまわるように、調整がし易いと思われる。

とりあえず…
これはつくってみなわからんやつやなぁ。

またやらないといけないことリストが増えましたw