【僕たちは母を介護する】-20「2回目の手術②」
13時30分。
「手術が無事始まったな」
私はそうつぶやいた。
もちろん始めますという声かけはないのだが、連絡がないのがその証拠だろう。先生から手術時間は2時間くらいと聞いている。
順調にいけば、15時30分に終わるのだろう。
15時45分。
予定時間から15分過ぎた。
時間通りに終わるわけはない。
そう思いながら、この時間で視ることのないテレビを眺めた。
芸能人が野外で料理を作っている。
内容は頭に入らないが、時間を気にしないで済んだ。
少し前は生命保険の紹介番組だった。
16時00分。
30分が過ぎた。
そろそろ終わるかなと思った。
もともと私は16時をすぎるだろうと予想していた。
しかし、次男は心配しているようだ。
「結構かかってるみたいだ」
と言うので
「良いも悪いも時間通りに終わるものではないだろう。結果が出ていない今は、心配しても仕方ない」
私はそう言ったが、それで次男の心配が拭えるものではないこともわかっている。
三男は何も言わなかった。表情からも何も窺えない。
16時25分。
扉が開いた。
担当の先生が入ってきて
「無事終わりました」
と言われたので、私たちは立ち上がり
「ありがとうございます」
と深く頭を下げ、礼を言った。
「ご説明いたしますのでこちらへ」
と言われたが、部屋が狭いとのことなので、三男にはあとから説明することを告げ、私と次男が向かった。
私たちが席に座ると先生が話し始めた。
「血圧もよく、腹部内を覆っていたシートも汚れが少なく処置することができました。」
手術が順調に進んだことを伝えら、安心した。
「初日は、生死に関わる非常に危険な状態でした。もう危機を脱したと思われます。あとは、血圧はまだ薬によって上げています。また、お腹の中や、身体中に回った菌が抜けるまで様子を見ていきます」
1日目の時に察していたが、やはり生死に関わる状態だったのだ。
しかし、今、先生からそう言われるということは、大丈夫なんだと安心した。
弟も安心しているようだ。
顔に笑みがあった。
部屋を出て、控室で待つ三男にも説明した。
「おぉ、よかった」
三男も安心していた。
明日の面会時間を話し部屋を出て三男と別れた。
病院にあるコンビニで
「何か飲むか」
と次男に言い、一緒に入った。
コーヒーだけ買おうとレジに並ぶと、弟は弁当を買っていた。
「お、旨そうだな」
そう言うと
「うん、やっと食欲が出たので食べるよ」
と弟が言った。
少しは元気がでたみたいでよかったと思い、車に乗った。