TAKRAM RADIO|Vol.150誰もが取り組む「デザイン」を考える〜祭りから料理まで
Introduction
渡邉康太郎さんがナビゲーターを務める、J-WAVE『Takram Radio』。『誰もが取り組む「デザイン」を考える〜祭りから料理まで』と題し、服飾デザイナーの廣川玉枝さんを迎えて収録された回(2週目)のメモを記載。
文化服装学院の入学式で受けた衝撃
番組内でも言及されていたPOLAのwebサイトのインタビューとは、こちらの記事だろうか。廣川さん自身が、文化服装学院の入学式で恐怖に慄いた経験から、2-3年生を経てステップアップしていく過程を語る。
美しいものを美しいと感じるためのトレーニング
デザインやものづくりを支えるインスピレーション・美的体験。いかにして、日常に転がるデザインのインスピレーションの源に気が付けるか、という視点、およびその姿勢としての重要性を再認識する。アスリートのように、美しさへの感度を養うことができるかという問題意識。
軽井沢で見た星と馬喰町のソムリエの美学
このパートは、当初のラジオでの放送ではカットされていたと思われるのだが、素敵な描写があったのでぜひ残しておきたい。
2022年の9月が終わろうとするタイミングを踏まえ、「2022年の暫定グッと来た美的体験は?」という問いを渡邉さんが投げかける。廣川さんは、小考の後、一旦、渡邉さんへとパス。
渡邉さんは、軽井沢を訪れた際に別荘の屋上に寝ころび、夜空を見上げている最中に雲が開けた瞬間を挙げ、暗い星が見える事実にグッと来たという。明るい星が、メタファーとして目立つ人・作品を表すとしたとき、それは都会でも田舎でも見えるものである。一方で、田舎でしか見えない暗い星から、「世界を美しく見せるのは、むしろ暗い星々の存在にどれだけ意識的になれるのか」だという再発見があったと語る。
2つ目に挙げられた体験は、馬喰町のnolというレストランでのこと。料理はCreation、お酒はCurationと捉えると、その組み合わせの中に美学があり、0→1に見えるCreationとリミックスに見えるCurationが交じり合う象徴であると感じた、と振り返る。そこから、良いものを良いタイミングで紹介することだけでも、クリエイティブが存在するのでは、という気づきを得たという。
時代という言葉に影響されない美しさ
廣川さんが、島根・有福温泉にて、石見神楽の「大蛇」という演目を観た際のこと。古来から伝わるものであるはずの大蛇の服装が新しいものとして目に映り、人を感動させることがある、と感じたという。人を感動させる体験は、時間に左右されないものなのでは、という気づき。
ここから、いくつかの作品の連想が始まる。
『過去はいつも美しく、未来はつねに懐かしい。』という森山大道さんのドキュメンタリー映画。観てはいないのだけど、という渡邉さんのコメント。
また、イーサン・ホーク主演の『ガタカ』では、ハイテクな未来の中に、あえてクラシックカーと黒電話が存在するらしい。過去の遺物の中に、ハイテクさと懐かしさが共に在る感覚。たしか、イーサン・ホークが好きな渡邉さんである。
「新しいものは古く、古いものは新しい」という構造は、現に歴史や考古学など分野にも当てはまるものである。
人造物の全てはデザインされている
「デザインミュージアムジャパン」と題し、三宅一生さんの意向として、国立のデザインミュージアムを設立してアーカイブとして魅せる活動の中で、廣川さんは福岡でのデザインリサーチを敢行したという。その対象は、工業製品から伝統文化まで。
TOTO本社工場への訪問の話を踏まえて繰り広げられた、
という会話が微笑ましい。
また、渡邉さんが、過去に博多人形の製作者・中村弘峰さんとイベントで一緒になったというのは、ICC FUKUOKA 2021のことだろうか。
リスナーへの「問い」
廣川さんからの問いは、「皆さんが最近デザインしたものの中で、小さな達成感を得たことは?」というもの。
この流れで渡邉さんから紹介された本は、磯崎新さんの『見立ての手法』。日本の伝統的なものを建築家が読み解き、ビジュアル化・言語化した書籍だという。
あとがき
2022年11月末から、「DESIGN MUSEUM JAPAN 展 集めてつなごう 日本のデザイン」が国立新美術館で開催されるとのこと。こちらもぜひ足を運びたい。
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