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【連載小説】 真実なお隣さん①-引継-
目の前に回覧板と役員セットがある。
これをどうやって次の人に引き継ぐのか、そのことが史江を悩ませていた。
約1年もの間、地域の役員として動き回ってきた。
役員といっても名ばかりで、それはいわば地域住民のためにこまごま動く”お世話係”を意味する。
もちろん、好き好んで引き受けたわけではない。
ただ、順番が回ってきただけだ。
順番は、町内会長を起点として左廻り、任期1年という条件で廻ってくる。
報酬は微々たるもので、ボランティアといっても過言ではない。
役員になると、回覧板のとりまとめからゴミ出し当番のシフト決め、年に2回の総会の準備まで、なにかとあわただしく動かねばならない。
みんな目を通しているのか疑わしい回覧板を準備して、他人の顔色を伺いながらゴミ当番をお願いして、文句を言われることだってざらである。
何が楽しいのか、誰がこんなルールを決めたのか。
文句を言いたいのは史江だって同じである。
しかし、ようやくこの苦役から解放されるときが来たのだ。
昔から不器用で、人づきあいの苦手な自分が、よくもまあ1年間勤め上げられたものだ。
あとは、この忌々しい一式を次の役員に引き継ぐだけなんだけど。。。
そんなことを考えながら、史江はそっと窓の外に目をやった。