Decision Making
トップ画は生成AIが作ってくれた
「Decisin Making」の画像です。
こんなゆったりしてない笑
はい。
外傷外科医って何している人なの。
日本では外傷が少ないため、
一般外科医から見ても、
普段何しているか
イメージできないかもしれません。
外傷外科医の強みは
Physiologyベースで
戦略を考えることができる、
集中治療ができる、
一般外科の緊急手術に強い、
など様々な強みがあります。
ただし強いて1つに絞るのであれば、
「Decision Making」
これが強みと言えます。
先日の手術も
Decision Makingの連続だったので、
シェアします。
10:30受傷
Motor Cycle Accident collision with Car
12時に前医搬送となる。
右下肢は変形し、
右大腿骨骨折+右脛腓骨骨折の診断。
右足背動脈を触れず、
出血性ショック+血管損傷を疑い
転院搬送となりました。
転院搬送時、心停止を3回認め、
途中他院に寄り心肺蘇生を行ったようです。
*タイでは搬送距離が長いと、このような事も起こります。
当院到着は16時30分
来院時意識ありE3VTM6も再度心停止し、
心肺蘇生→ROSC
出血性ショック及びUnder Resuscitationと判断しました。
この時点で
おかしいなと思ったことがあります。
「なぜこんなにも心停止するのか」
もちろん
現場で外出血が多い可能性はありますが、
大腿骨や下腿の出血は開放性骨折でなければ、
Tamponade effectにより
心停止をきたすまでにはならないはずです。
高齢者であれば
余力がなくあり得るかもしれませんが、
この患者さんは中年男性、
余力はあるはずです。
奇異なのは右下腹部膨隆でした。
指導医の先生も
同様に右下腹部腫脹を気にしており、
骨盤骨折からの出血ではないかと
考えていたようでした。
一方私は右下肢の損傷と絡め、
右下腹壁動脈が
根部(大腿動脈)で千切れてしまい、
血腫が頭側に連続しているのではないか
と考えました。
指導医の意見が優先され、
手術は骨盤パッキングを目的とし、
下腹部正中切開でスタートしました。
服直筋筋膜前鞘を切離し、腹直筋を露出。
この時点で骨盤からの出血であれば、
血液が服出してくるはずです。
Preperitoneal packingを行いましたが、
そこまで出血は認めず。
それよりも
出血は尾側の大腿から来るように見えました。
陰部頭側を通り大腿にまで皮切を延長。
鼠径靭帯を切離し、血腫を追うと、
大腿静脈が50%circumference損傷し結紮。
また下腹壁動脈の損傷を認め、
根部で結紮し止血を得ました。
大腿の筋から持続的に出血しており、
これはCoagulopathyの影響と判断し、
ガーゼをPackingして、創部閉鎖しました。
話はここで終わりません。
大腿静脈を結紮したため、
さらに下腿は腫脹すると予想されます。
通常であれば
大腿および下腿のFasciotomyを行います。
ただしこの患者さんに適応があるでしょうか。
CTAを撮像していないので
はっきりとは分かりませんが、
右下肢動脈損傷は高確率であると思われます。
動脈損傷のGolden Hourは6時間で、
超えると成功確率が下がっていきます。
ただし一般的に
「Save Limb」
より、
「Save Life」
を優先します。
つまりPhysiologyが改善した後、
結果的に翌日、
下肢切断する事を考えていました。
Fasciotomyは
下肢温存する可能性を高めるために行います。
しかしFasciotomyをする
(皮切を作る)ということは、
出血する部位を自ら作る事になり、
結果的に出血に対し、この患者さんに対し、
デメリットが大きい手技だと判断しました。
上記を指導医に伝え、
結果的にFasciotomyは行わない方針とした。
この症例のみならず、
外傷診療はDecision Makingの連続で、
これは人生も同じ。
外傷外科医は選択しなければならないので、
決断力が付き、
人間として最高にCool!!
と考えているのは私だけでしょうか?笑
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