5月17日はノルウェーの特別な日
5月17日はノルウェーのナショナルデー(憲法記念日)でした。
ノルウェーの特別な日と言われますが、実際に体験してみて、想像を超えた素敵なイベントでした。当日の様子とともに、ナショナルデーについて考えたことをレポートします。
1年で最も華やかで賑やかな日
この5月、我が家はこどもの日と母の日をすっかり忘れていたというのに、ノルウェーのナショナルデーはしっかりカレンダーにマークされました。
なぜなら、子供たちの学校がナショナルデー・パレードに参加するから。
学校のブラスバンド隊で長男はトロンボーンを演奏し、次男は1ヶ月以上前から縦笛の特訓です。
ナショナルデーが近づくと、多くの家々で国旗が掲げられるようになり、国旗カラーのグッズがお店に溢れます。国中がなんだかそわそわ浮かれる感じです。
当日の朝、指定されたフォーマルな服に着替えた子供たちを送り出し、私もバスで街に向かいました。たくさん歩くことになりそうだし、普段通りのカジュアルな服を着たのですが、家を出てすぐに自分の服のチョイスを後悔することに。
道行く人々も、バスの乗客も、みな目に眩しいほどの正装なのです。
小さい子からお年寄りまで、民族衣装 (Bunad ブーナッド) でばっちりきめています。
パレード会場はノルウェー国旗と人々の民族衣装で溢れかえり、圧倒されるほど華やか。マーチングバンドの音楽や「ナショナルデーおめでとう!」のかけ声が響き渡ります。
その日の朝は気温が下がり、凍えそうな強風の中でパレードがスタート。
ですが、徐々に太陽が顔を出し、周囲の盛り上がりと比例するかのように日が差してきました。行進する子供たちも、息子たちの顔にも楽しそうな笑顔が。
「ノルウェーのナショナルデーはすごいよ。絶対見た方がいいよ。」と力説していた友人の言葉に納得。
民族衣装は目に楽しく、正装した人々が放つハレの雰囲気がこちらにも伝染してきます。
息子たちのパレードにまぎれて歩いた時の道路の様子がこちら。
楽しい雰囲気が伝わるでしょうか。
ナショナルデーについて考えた
1814年、ノルウェーがデンマークとの連合から独立し、独自の憲法が調印された日を記念したのがナショナルデーです。
日本には憲法記念日がありますが、日本の国旗を家に飾ったり、国旗を手にパレードすることを想像すると違和感を感じる人は多いのではないでしょうか。現代の日本人が国旗を手に持つのは、ワールドカップやオリンピックといった国際的なイベントの時くらい。
なので、ノルウェー式のナショナルデーには驚きと新鮮さを感じます。
華やかで盛大なパレードを見ながら、なぜ日本とこんなに違うのか、ナショナルデーの意味や効果について考えてみました。
ナショナルデーの扱いが違う大きな理由はおそらく、日本は他国を侵略した歴史を持つ敗戦国だから。2つの大戦を経て、ナショナルデーやナショナリズムが許容されない空気になったというか、内外から複雑な感情が付帯することとなりました。
一方で、多くの国々がナショナルデーを盛大にお祝いするのは、そこに無視できない効果があるから。ノルウェーのパレードから感じた例でいうと、
愛国心と忠誠心: 年に一度の祝祭的なハレの日を通して、国民であることへの誇りや忠誠心が喚起され、小さい頃から愛国心が根付く。
帰属意識: パレードに参加し、国旗で盛り上げることで、国や地域コミュニティへの所属意識が高まる。
文化・伝統の継承: 民族衣装で着飾る習慣が毎年あることで、文化や伝統が継承される。
長年住んだシンガポールのナショナルデーも似ていました。国民は皆んな赤色のTシャツを着て、団地のベランダには国旗が飾られます。
スタジアムで行われるパレードのチケットは入手困難なほど人気で、国歌斉唱時は皆が起立し胸に手を当てます。戦車のパレードや、戦闘機のアクロバット、盛大な花火も行われます。
ナショナルデーを他国への政治的・軍事的アピールに利用する国々もありますが、ノルウェーのナショナルデーの主役は子供たちだと言います。なぜなら、子供は国の未来だから。
ナショナリズムをどういう目的で盛り上げたいか、が肝となりそうですが、国や子供たちの未来を祝う日として意図されるノルウェー的なナショナルデーは素敵だなと思います。
日本でナショナルデーを祝うとすれば、どのような日にしたいだろう。
単純ですが私は、 ”和” が溢れる日であってほしい、と思いました。老若男女がちょっとかしこまって着物を着て、地域のコミュニティでその土地に伝わる郷土食パーティをするような。
日本の魅力が溢れる1日があれば、インバウンドもさらに盛り上がりそう。
民族衣装を誇らしげに着るノルウェーの人々を見て私が感動したように、海外の人々にとって、和で溢れる人々や町の様子はとても新鮮なはず。
なんてことをつらつら考えた、印象に残るノルウェーのナショナルデーでした。