ノルウェーのRuss (ルス)が来た
先日、友人からノルウェーのRuss(ルス / ルッセファイリング)イベントについて初めて聞き、 ノルウェーでこんなことが本当に許されてるの??と衝撃を受けました。
Russ って何?
Russとは、ノルウェーの高校3年生が卒業前の約1ヶ月、とことん常識はずれなハメを外すこと。
ルス期間中にやってみよう、というクレイジーなお題が毎年100ほど実行委員会から出るらしいのですが、極端な飲酒と性行為、学校での悪ふざけに関するものが多いようです。
お題はたとえばこんなもの。お題を実行すると、帽子にさまざまなアクセサリー(ガラクタ)がジャラジャラと勲章のように追加されていきます。
こちらのブログは、ノルウェー在住のジャーナリスト、鐙麻樹さんがルスについてとてもわかりやすく記事にされているのでご参考に。もっと過激なお題の例がたっぷり列挙されています。
ひえー!凄すぎる!と(ある意味)感嘆していたら、友人とお茶をしたその帰り、ルスのシンボルである赤いつなぎを着た若者をさっそく見かけました。まさに今がルスのシーズンなのですね。
ルス実行中の若者たちは名刺を作って配ってまわるとのこと。そして、彼らは幼稚園児たちのヒーロー。園児は競って彼らから名詞を集めるのだとか。
怖いもの見たさというか、期間中、どんな様子か見れるといいなという興味本位な気持ちになりました。が、もし自分の子供がその歳にノルウェーにいるとしたら絶対に気が気じゃない。犯罪率やレイプ、交通事故、急性アルコール中毒がこの時期は特に増加すると言われるのだから。
問題視する意見が毎年出ていても、一向に禁止の動きにならないのも不思議。ノルウェーだけの慣習のようで、近隣の北欧の国々からは、クレイジーだ、冗談でも一緒にしないでくれ、と酷い言われようだとか。
Russ の意味を考えてみた
シャイで社会規範に従順と言われるノルウェー人なのに、この極端に触れた祝賀イベント。その背景について少し考えてみました。(断定して書いてますが、あくまで私個人の想像で裏付けは全くありません)
まずは年齢的なものがポイントです。アルコールが飲めるようになり、自動車免許をとれるようになったばかりの18歳が主役であることが重要。社会的に成人として認められる年齢なので、子供から大人になる通過儀礼的な意味合いがあるのです。
極端なまでの飲酒や運転、性行為を課すことで、自分達は大人としての自由を手に入れたのだ、今までとは違う世界に入ったのだと自分にも家族にも社会にも(ほぼ強制的に)目に見える形で認めさせているのです。
飲酒や性行為はとても原始的なものだからこそ、それが強調された形で行事として引き継がれているのは民族文化的でもあります。成人の儀式として森でバンジージャンプをする民族だって世界にはありますしね。
それと同時に、自由への限度や責任についても暗に教えています(と期待したい)。
ハメ外しの課題をあえて極端にすることで、与えられた自由を行使するかを自分で選択し、行使してもその責(恥ずかしさや怪我や事故)は自分が負うのだよ、と教えているのです。
そして、ルスの後には規律的で禁欲的な兵役がすぐに控えている現実もポイント。兵役にとどまらず、働き始めたら大人として、社会人として、長きに渡って社会規範を守っていかなくてはならない。
ヤンテの掟的な価値観を持つノルウェーは、社会を乱す行為は良しとされない。そんな文化だからこそ、どこかで思い切りガス抜きする体験が人生に必要なのです。
同じ疑問をChatGPTに聞いてみると、こんな別の視点からの回答をもらいました。愛国心と結びつける説や、若者の反抗心や自己表現の場として見る観点も説得力あります。
大人から見るとめちゃ危なっかしいRussですが、ずっと続いている慣習ということは、それを経験したノルウェーの大人たちはそれでも守っていきたいと思っているわけで。
若気のいたりがひどくならない程度に人生のクレイジーな季節を楽しんでね、と、外国人アンティー(私)はそっと見守りたいと思います。