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2024 HVC KYOTO スタートアップ募集案内のついでにライフサイエンス起業家が考えるべきことについて書いてみた
とは長いタイトルですが内容もそのままです(笑)。
HVC KYOTOは京都で7月に開催される、国内外の医療系スタートアップ・起業家によるピッチと、提携先となりうる大企業そして投資家とのマッチングを目的としたイベントです。英語で全て行われること、デジタルヘルス分野も含まれること、などが特色です。
詳細については長年の友人でもあり、共に色々企む仲間でもある小柳智義さんの以下の投稿をご覧ください。
今回は特に「事業計画とかよくわからない」という大学などの研究者の方の参加も増やしたいということです。
ここから先はこの「事業計画わからない」方、もっと言えば「自分の研究を製品・事業にできないか?VCなどから投資を受けられるような会社にできないか?」と思っているけどどこから手をつけて良いかわからない方に、僕のライフサイエンス分野でのスタートアップ経営・起業家との伴走経験から得たフレームワークを10項目にわたって書き出しておきます。
自分の研究成果を医薬品にしたら…。
①どの疾患(のサブ領域)に適応できそうか
②診断→治療の臨床フローのどこにはめ込み得るのか
③②を踏まえた適応可能患者数はどのくらいいるのか
④自社の製品により川下・先々の医療費は減るのか
⑤既存治療法方とバッティングするか?(しないのも考えもの)
⑥バッティングした場合の優位性は何か
⑦開発・発明したのは物質なのか適用手法なのか?
⑧自社技術だけで人体に適用できる治療薬・方法はできるのか?
⑨今のチームの有する能力、欠けている能力は何か?
⑩上記①〜⑨で不確定な要素の排除・縮小に必要な時間は?
について多少精度や確度に難あっても現時点でベストのデータと洞察・知見を持ってきてくれれば「有望そうなもの」かそうでかはある程度判別できます。少なくとも①〜⑤について研究室に留まらない臨床現場からの知見があればHVCに関わるプロとの共同作業によって知情意にわたって説得力と実行性(logically/emotionally convincing and practically plausible) の高い「ビジネスプラン」を人に見せてピッチの手前のディスカッションできる段階には到達できます。
科学も技術もそれ自体では価値なし。何かの形を取って誰かの役に立たち、役立ったことに対して報酬を得られる、すなわち事業にならなければそこに資金や時間を投資する人に取って意味なし。
ライフサイエンス・ヘルスケアの場合、ほぼすべての製品が直接受益者(患者)、処方意思決定者(医師・病院)、そして支払い手(公的・私的健康保険)という三権分立ステークホルダーのそれぞれの利益を時間軸は異なれどバランス良く満足させられるようなストーリーが無ければ投資どころか社会貢献もおぼつかず。
そしてその「満足」を異なる視点の人々に同時に説明し納得してもらえるのは通過記号のついた数字。そういう意味で好むと好まざるに関わらず「医は算術」なのです。
スタートアップの創業期の支援に必要なのは「目利き」じゃなくて「腕利き」。そしてシリーズAから先はファイナンシャルアンドポリティカルゲーム。未来の見える水晶玉の出る余地は無し、というかそんなの持っている人はいない。
取り止めもなく書くうちに最後はちょっと塩辛い話になりましたが、HVCでは「でも・しか」でないライフサイエンス・ヘルスケア起業を志す研究者の方にとっては他所では得られない体験と知見、そして過去の参加者コミュニティも含むネットワークが得られるので奮ってご応募ください。
なお、僕はHVCには直接関与していません。悪しからず(苦笑)。