「起業家のためのリスク&法律入門」〜優れた仕事の教科書は知識より問いを促すもの
本年の日本滞在中に購入した読んだもう一冊の本。こちらは実用書です。七帝柔道や医薬品業界の腐敗をネタにした本ばかりではありません(笑)
日米のスタートアップを取り巻く法律や規制の違いはあれど会社を創り育てる中で陥りがちな「法に関わるリスク」は自分自身が体験したトラブルや訴訟沙汰も含め共通するものが多く、追体験しつつ時には「あるある」と頷き、時には紙一重で回避できた幸運を噛み締めつつ読むことができました。
(ちなみに僕は自称 startup jailhouse lawyer です)
それらのリスクは本書を読めば自己解決、というわけには当然いきませんが、本書を流し読み、少なくとも各章の冒頭にある「ストーリー」に目を通しておくだけでも問題が起きたらどんなプロフェッショナルリソースに相談するべきか見えてきます。そして本書はそれらリソースを効果的に活用するためにはどんなことを問うべきかを考え整理するガイドとなる一冊です。
弁護士などの法務のプロフェッショナルはそのような視点から優れた人と働き、上手に使いこなせれば単なる「遵法・コンプライアンス」を超えた「専守防衛ならぬ先取防衛」の武器になることは僕の痛い目にあいながら貴重なことを多く学び多少のしぶとさも身につけた経営修行の中で学んだことです。
スタートアップ創業者、特にCEOの立場にある人が全ての事業課題の卓越したオーソリティである必要はありません。むしろ成長の局面に合わせて自分より「優れた人」を会社の目的に沿って最大限活躍するのが経営です。本書は数多いプロフェッショナルの中から「優れた法務プロ」を見出すための「優れた問い」を経営者が考えるための学習書である、と言っても過言ではありません。
今回訪日時には残念ながら著者の尾西祥平さん、とはお会いできませんでしたが、いつかお話しする機会があることを願っております。
本文はそのための布石…ということにしておきましょう(笑)。