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…ですから、一番大切なことは、どこのデパートに入ればうまく売れるかということではなくて、デパートに入っても入らなくても、消費者が喜んで買ってくれる商品をつくり出すことです。 - 忘れがたいことば

邱永漢『東京が駄目なら上海があるさ』より引用します。
耳の痛い話ですが、”良薬は口に苦し”ということでしょう。

 ”「デパートの仕入れはきびしい。いくら頼みに行っても、なかなかいうことを聞いてくれない」とこぼす出入業者がありますが、実はデパートだって「売れる物を血眼になって探している」のです。そのデパートの仕入係がそっぽを向いてしまうということは、業者が「よく売れる商品」を提供していないからです。
 原稿を書いて雑誌や新聞に掲載してもらうのだって同じことです。世間が関心を持たない文章をだらだらと書いても、編集者との義理や人情では採用してもらえません。時流に合って皆が喜んでくれるテーマや文章なら、こちらから売り込みに行かなくとも、向こうから依頼に来ます。ですから、一番大切なことは、どこのデパートに入ればうまく売れるかということではなくて、デパートに入っても入らなくても、消費者が喜んで買ってくれる商品をつくり出すことです。”

邱先生の文章は、まさに”時流に合って皆が喜んでくれるテーマや文章”なのです。
論理的で、シャープで、クールヘッドでなおかつウォームハートで、知りたいと思ったことを教えてくれる。
経済の話、”世間”の話、グルメの話まで…

亡命先の日本で直木賞をとり、”ビジネスホテル”を創始し、それからは”株の神様”に。
文筆でも一流。
実に多彩な方なんですね。

”世間が関心を持たない文章をだらだらと書いて編集者との義理や人情では採用してもらえません。
”手厳しいけど、それはその通りなので、お金を払っても読みたいものを書くしかないんです。
もし、”物書き”で生きていこう、と思うなら…

台湾出身なので、中国文化を背景に持っておられる。
旧植民地の台湾から、東京帝国大学の経済学部に進んだ。
日本語で学問をされた。
ビジネスもやり、株もやり、文筆でも直木賞受賞。
ふつうの人にはない経験が、豊富。
なおかつ、文章もうまい。
旧制高校では、文学青年。
そういう人が知恵を絞って、”時流に合って皆が喜んでくれるテーマや文章”を書くんですから、それは売れるわけです。

消費税増税とか、介護とか、デフレとか、今日的な話題も、2000年前後に論じておられ、だいたい邱先生の予測通りになっていると感じます。
”株の先生”の頃は、「住宅ローンを組んで家を買え、インフレでローンの負担は結果的に減る」と主張されていましたが、デフレ下ではそうではありませんでした。

結局、邱先生に私が学んだことは、現下の情勢から将来を予測し、そこから手を打つことの大切さです。
時代の流れを読む、ということです。
自分の頭で考える、ということです。
次の手を打つ”根拠”を分析し手に入れ、最適なアクションを適切に実施しなければなりません。

”消費者が喜んで買ってくれる商品をつくり出すこと”。
どんな仕事でも、きっと大切なことのはずです。
”お客様に喜んでもらえる何か”を提供できればきっと、なんとか食っていけるはずです。
自分の仕事に、そういう付加価値を上乗せしなければいけません。
そう考えました。

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